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トム・サテナ 07 新居と開墾

 俺がジャベックやタロスを使って作った家は2週間ほどで完成した。

煉瓦作りの立派な家だ。

村長様をはじめ村人たちは大きな屋敷が出来ていく様を驚いて見に来ていた。

ホウジョウ先生だったらこの程度の家は三日もあれば作っただろうが、俺の実力から言って2週間で出来れば上出来だ!

風呂やトイレ、台所などはホウジョウ先生の教えの通り、水回りを考えて作ったので、我ながら使い勝手は良い。

ホウジョウ先生がくれたマイクとナンシーは、領域迷宮でホウジョウ小屋を作ったジャベックだった事もあって、大抵の事は経験済みで、命令をするのが楽だった事も大きい。

これならホウジョウ先生が見ても合格点をもらえるだろう。

実際、俺の家の中を案内して初めて見た村長様と御師匠様は驚いた。


「ではこれから家の中を案内します。

あ、玄関で靴は脱いでください」

「靴を?家の中で靴を脱ぐのか?」

「ええ、これもホウジョウ子爵様の教えで色々とその方が都合が良いのです」

「ふむ、わかった」


村長様と師匠が靴を脱ぐと俺は家の中を案内し始める。

まずは台所からだ。


「これは・・・この栓を捻るといつでも水が出るのか?」

「はい、そうです」

「しかも湯までこんなに簡単に使えるとは・・・」


俺はホウジョウ先生のように魔法ジャベックを造る事は出来ないので、蛇口から湯を出すような事は出来なかったが、温熱タロスを生成する事は出来たので、湯を沸かす事はそれで簡単に出来た。

その温熱タロスをグラーノにして大量に作っておけば、いつでも湯は使い放題だ。

おかげで暖かい風呂にも不自由は無い。


「むむむ・・・トイレもこのように水で流し、風呂もこんなに広く便利とは・・」

「しかも男女別にあるとはの・・・」


その言葉を聞いて俺は苦笑した。

風呂が広いのはホウジョウ先生の趣味を俺がまねたからだ。

何しろあの人は迷宮の中で休憩所を作る時でも熱心に風呂を作る事は忘れなかった。

いかに広い風呂が楽しく気持ち良いかを俺だけでなく、他の友人たちにも散々熱意を込めて説明していた。

そのあまりの熱の入れように俺たちは少々苦笑したくらいだ。

しかし確かに広い風呂が気持ちが良いのは、あの人のおかげでよくわかった。

さすがにホウジョウ先生のように各部屋に風呂を備え付ける気にはならなかったが、一応風呂は家に宿泊客が来た時のために、俺の部屋と、男女各一つずつ、3つの風呂を作ったので、その点も驚かれたようだ。


「はい、これも全て友人のホウジョウ子爵様の教えの賜物です」

「ううむ、御主はマジェストンで魔法以外の事もずいぶんと学んできたようだのう」

「ええ、何しろそのホウジョウ子爵様と言う方は、どこにでもこのような家を作ってしまう方でして、私も3年間御一緒させていただいたおかげでこのような物を作る事が出来るようになりました」

「ほほう、このような家をどこにでものう?」

「ええ、何しろ、例の御自分の領地である大アンジュはもちろんの事、マジェストンの迷宮の中にまでこれよりも立派な家を作ってしまったほどですからね」


その俺の説明を聞いて師匠はさすがに驚いたようだ。


「何と!迷宮の中にまで!」

「ええ、私もその時はお手伝いしましたが、本当に驚きましたよ。

迷宮の中でレベル200を超える魔物に襲われながら、ほんの数日でこれより立派な建物を作ってしまうのですからね」


その俺の説明で師匠は半ば呆れ、半ば感心して言った。


「ううむ・・聞けば聞くほど、そのホウジョウ子爵とグリーンリーフ先生という方は凄まじい方々じゃのう」

「ええ、何しろ御二人とも天賢者ですからね。

私などとは比較になりませんよ」

「いや、お前とてこのような立派な家を2週間で作るとは大した物よ」

「全くじゃ」

「ありがとうございます。

これからはここを私の住処として頑張りたいと思います」

「うむ、よろしく頼むぞ」

「はい」


さらに俺は家の周囲に倉庫もいくつか作っておいた。

その倉庫もホウジョウ先生に教えてもらった最新式だ。


「ここでも靴を脱ぐのか?」


村長様の言葉に俺はうなずいて答える。


「ええ、靴を脱いで上がる事によって様々な虫や余計な物の混入が防げるのです。

それを「衛生」と言うのですが」

「ほほう、エイセイのう」

「ええ、それによって倉庫の中に収納してある物は害虫にやられにくくなり、カビなども生えにくくなるのです」

「それは大したものだのう」


二人は俺の作った倉庫にも感心したようだ。


 そして家を完成させた俺はその周囲の村の荒地を次々と開墾していった。

ホウジョウ先生の造った開墾ジャベックは優秀で、100体以上ものタロスを出して、そのタロス群で木を切り倒し、大岩を砕き、土地を耕して大活躍だった!

これで試作品とは本当に驚きだ!

そしてそれをマイクやナンシーたちが手伝う。

それぞれがタロスを300体以上出して作業をするので、まさに文字通り100人力だ!

俺も自分で指示を出しながら驚いていた。

何しろ見る見るうちに荒地が開墾されていくのだ!

俺は自分も鍬を奮ってジャベックたちと一緒に開墾作業をしようと考えていたのだが、あまりにもその作業が速いために、ジャベックやタロスたちに指示を出すのが精いっぱいでそれどころではなかった!

1週間も経たない内に相当な面積が畑に早変わりをした!

それを見た村長様たちも驚いていた。


「まさかこれほど早く農地が出来てしまうとは・・・」

「まさに驚きですな」

「ああ、これでは村人総出で5年かかるより早いぞ!」


驚く村長様と師匠に俺が説明をする。


「ええ、何しろホウジョウ子爵様からいただいたこの開拓ジャベックはタロスを200体も出して木の根を掘り起こしたり、大岩を砕けますからね。

そして1日半は持つタロスをマイクは600体、ナンシーは1000体も出せて、しかもそれが昼夜兼行で作業をする訳ですから。

それに私もタロスを1200体ほど出せますからね」

「ううむ、つまり総勢3000人以上で24時間休みなしに開墾をしているような物な訳か?」

「そうですね、しかもタロスのレベルは全て100です」

「全てのタロスがレベル100じゃと!

それでは村人総出よりも早くできるはずです、村長」

「まったくですな!ロバート先生。

うちの村人の15倍以上の人数で昼夜休みなしに開墾をすれば確かにこの有様も納得です!

実質は村の60倍、いやおそらくは100倍以上の人数で開墾作業をしているのも同然ですからな!

つまりは本来であれば村人総出で3ヶ月以上はかかる開墾作業を、トムはジャベックとタロスを使って1日で終わってしまう計算になるのですからな!

これは驚きです!」

「ええ、本当にトムは私の想像以上の魔道士になって帰って来ましたよ」

「ああ、私も出資した甲斐があった!

いや、本当に期待以上だぞ、トム」

「いえ、これも全てホウジョウ先生とグリーンリーフ先生のおかげです」

「何を言うか!

そのお二人にそこまで信用をしていただいて、このようなジャベックをいただく事も出来た、お前の手柄だよ」

「まさにその通りですな」

「ありがとうございます」


 俺は早速ジャベックたちが開拓した農地に種を蒔き、作物を育ててみる事にした。

主作物はもちろん小麦だが、まだその時期には早い。

俺は取り合えず新しい農地の実験を兼ねて、赤茄子あかなす馬鈴薯ばれいしょ甘薯かんしょ玉蜀黍とうもろこしを育ててみる事にした。

全てホウジョウ先生からもらった物だ。

俺はホウジョウ先生から種まきも雑然と蒔くよりも整然と規則的に蒔いた方が収穫が良くなると聞いていたのでそれに従って種まきをした。

それにマイクやナンシーにある程度ホウジョウ式農業を教えていてくれたので非常に助かった。

この二人は作物に必要な「堆肥たいひ」などの作り方も知っていたので、俺は逆にそれを二人から教わった。

これで収穫に大きな差が出るらしい。

特に玉蜀黍にはこれが必要と聞いた。

そして俺もファーマー1号2号やタロスたちと共に農作業をしていく。

その間も開墾ジャベックは一人で荒地の開墾を続けていたので、来年はこの何倍もの農地で作物を作れそうだ。


 そして夏が過ぎて、秋が来て無事に収穫が終わった。

俺の開墾した農地は予想以上の収穫で俺も満足だった。

赤茄子あかなす馬鈴薯ばれいしょ甘薯かんしょ玉蜀黍とうもろこしも無事に実った。

その収穫量を見た村長様が驚いて俺に言った。


「凄いな!トムよ!

これほどの面積を農地にした上で、収穫も他の田畑をはるかに上回る量とは!

一体、どんな魔法を使ったのじゃ?

何しろお前の農地だけで今年の村の収穫の3割近くをいったのだからのう!

これでは来年の収穫はお前一人で村の収穫を超えてしまうのではないか?」

「いえ、私はホウジョウ式農業を忠実に行っただけです」

「ふ~む、またもやそのホウジョウ子爵か!

まったく大した御方よのう」

「まったくじゃ!一度そのホウジョウ子爵様にはお会いしてみたいものだ!」

「そうですな、そう言えば今まで聞いた事がなかったが、そのホウジョウ子爵様とグリーンリーフ先生とはどんな感じのお方なのだ?」


村長様に聞かれて俺は二人の事を思い出しながら答えた。


「そうですね、ホウジョウ先生は今年で年は18歳の男性ですが、見た目は12歳かそこらの少年、いや少女のように見えますね。

それもかなりの美少年というか、美少女です。

そしてグリーンリーフ先生は年齢500歳以上のエルフですが、これ以上はあり得ないというほどの美女です。

実際、私はマジェストンで他の美女もたくさん見ましたが、あの方以上の美女を見た事がありません」

「何と!ホウジョウ子爵様やグリーンリーフ先生はそのような方だったのか?」

「ええ、そうです。

特にホウジョウ先生はよく町を歩いていても女の子と間違えられると言ってましたね。

実際ちょっと見には確かに13歳ほどの少女にしか見えませんから。

大抵は護衛のアイザックや白狼族の少女と一緒に行動をしていましたが、もし女の格好をして一人でその辺を歩いていたら、さぞかし男どもから声をかけられるでしょうね。

実際、魔法学園祭で七色靴の姫の劇をやってホウジョウ先生は主役の姫を演じたのですが、それがあまりにも王女然としていたので、一部の人たちに本物の女学生だと思われて学園中を探された時期がありましたね。

グリーンリーフ先生も貴族などに絡まれて困った事が何回もあると聞いた事があります」

「なるほどのう・・・」


 最初の収穫が終わった所でいよいよ本命である小麦の出番だ!

今年は初めての年なので、俺もドキドキだが、赤茄子や馬鈴薯の収穫で、俺もある程度は安心している。

基本的には普通の麦だが、一部はホウジョウ先生にもらった麦もある。

この麦は普通の麦よりも実りが良いと聞いているので、俺も期待をしている。

無事に麦の種蒔き作業を終えたところで、何とモーゼスさんから手紙が来た。

それには少々自分の所に遊びに来いという内容が書かれていた。


「ふむ・・無事に種蒔きも終わったし、ちょっと行ってみるか?」


俺は師匠にその話をしてみた。


「おう、無事に種蒔きも終わったし、今はそれほど急ぎの用はないじゃろ?

少々友人の所に行って来ても良かろう」

「ええ、では護衛と雑用にマイクは連れて行きますが、残りの連中は置いていきますから何かあったらナンシーたちを使ってください」

「うむ、わかった」


俺は師匠にナンシーたちを託すと、モーゼスさんの町へと向かった。


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