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トム・サテナ 04 故郷へ

 俺は3年ぶりに故郷へと帰った。

この3年の間、何回か帰ろうとも思ったが、考え直してマジェストンで過ごしていた。

学生の間に少しでも迷宮でのレベル上げや、様々な経験をしておこうと考えたからだ。

それに学校での生活を村の人たちに話しても信じてもらえそうにないと思ったからだ。

だから3年分を全部まとめて説明しようと思って帰らなかったのだ。

但し、卒業式の時点で無事に卒業はしたが、今月いっぱいまでは少々自分を迷宮で鍛える予定で、その後に帰る旨の手紙は出していたので、俺の帰郷が遅れている点はわかっているはずだ。

それにしても行きは徒歩で1日、馬車に揺られて3日もかかったというのに、帰りは航空魔法でたったの数時間だ!

やがて懐かしい我が故郷の村が見えてきた。

俺はホウジョウ先生からもらった二人のジャベックと共に村へと帰った。

もちろん他のジャベックもマギアグラーノにして大切に持っている。

俺の育ての親でもあり、最初の魔法の師匠でもあるロバート師匠は温かく出迎えてくれた。


「ただいま帰りました!師匠!」

「おお、帰ったか!トム!」

「はい、3年もの間、ありがとうございました!」

「うむ、実は少々心配しておったのだ。

最初の一ヶ月ほどは手紙を寄こしていたのに、その後は全く便りも寄こさなかったからな。

長期休みの時もこちらに帰って来なかったのでどうしたのかとな。

よほど様子を見に行ってみようかとも思ったのじゃが、わしもこちらで忙しくてな。

だが先日無事に卒業できたと手紙をもらって安心したわい」

「はい、ご心配をおかけして申し訳ございませんでした。

しかしその分、しっかりと勉学をしておりましたので・・・」

「ほほう・・・それは感心だ!

しかしそちらの二人はどなたかな?」


師匠は俺の両脇にいるマイクとナンシーを見て訝しげに尋ねる。


「ああ、この二人は魔法ジャベックです。

卒業と別れの餞別に友人の貴族にもらったのです」


俺の説明に師匠が驚く。


「なにっ!

これがジャベックじゃと!

人間にしか見えないぞ!

しかも貴族の友人にもらったじゃと!

お前、貴族の方と友人になどなったのか!」

「はい、そうです。

このジャベックにはマイクとナンシーと名づけました。

話せば長い話になりますが・・・」

「ふむ、なるほど、お前の両親の名前をつけたのか?」

「はい、その通りです。

何しろマジェストンではこれ以上はない、実に良い師、良い友に恵まれまして・・・」


俺はシンドラー先生の事は手紙で知らせていたが、グリーンリーフ先生やホウジョウ先生の事は何も知らせていなかった。

もはやどう書いて良いかわからなかったからだ。


「そうか?

 確か最初に教わったのは、かのユーリウス賢者の直弟子だったと手紙に書いてあったが・・・?」

「ええ、その通りです。

大変優秀で良い先生でした。

その後も中等魔法学校でも良い師、良い友に恵まれました。

それで魔道士の資格だけでなく、先生と同じく鑑定魔法などの検定にも受かり、レベルも大幅に上がりました」

「ほほう?そんなにレベルが上がったのか?」

「はい、お陰様で驚くほどに」

「一体、いくつになったのかね?」

「はい、162です」


その俺の答えに師匠はキョトンとなる。


「は?トムよ?今何と言った?」

「はい、ですからレベルが162になったと」


その俺の言葉に師匠は慌てふためく。


「待て待て!

お前はこの村を出てマジェストンへ行った時のレベルは確か25だろう。

それがたったの3年でレベルが162になどなる訳はないだろう?

それではわしよりもはるかに上ではないか?

一体どういう事だ?」

「いえ、本当です」

「何だと?ちょっと待て!ニベロ・タクソ!」


師匠は実際に俺を魔法で鑑定すると信じがたい表情になった。


「こ、これは・・・本当にレベルが162になっておる!

一体、どうしたらこんな事に?

今のわしのレベルは88じゃぞ?

それがたった3年で・・・」


確かにロバート師匠は齢120を超えている。

それがまだ20歳そこそこの若造である俺にたったの3年ではるか上にレベルを超されては理解不能だろう。


「はい、それも良い師と友人のおかげです」

「良い師?そのユーリウス賢者の直弟子の方か?」

「はい、それもそうですが、大変運の良い事に、その後で学校の他に個人的に知り合って鍛えていただいた方が想像を超えた方でしたので。

これ以上の師はまずありえないという素晴らしい方でした」


俺の説明に師匠は不思議そうに尋ねる。


「想像を超えた方?

これ以上の師はあり得ない?

一体どういう方なのだ?」

「はい、その方は、かのユーリウス賢者やメディシナー侯爵、それどころかあのガンダルフ賢者の御師匠様でもございまして・・・」


その俺の説明に師匠はこれ以上ないほどに驚く。


「なにぃっ!ユーリウス賢者やメディシナー侯爵、そしてガンダルフ賢者の御師匠様だと?

そのような方とお前が知り合いに?」

「はい、さすがにその方の正式な弟子にはなれませんでしたが、幸運な事に他の方々と一緒にその方に何回か鍛えていただく機会がございまして・・・」

「何と!その方は何とおっしゃる方なのだ?」

「はい、天賢者エレノア・グリーンリーフ様です」


その俺の説明に師匠はさらに仰天する!


「なっ!天賢者だと?

お前、天賢者様にお会いしたのか?」

「はい、その通りです」

「むむむ・・・天賢者と言う御方が実際に存在していたとは・・・」


ホウジョウ先生から聞いた話では天賢者の存在は秘匿されているし、俺は師匠がその存在を疑っていたのも知っていた。

しかし状況からしてそれも無理は無い。

俺だってこんな偶然がなかったら師匠と同じ結論に達していただろう。

唸る師匠に俺はさらに説明をする。


「師匠!それどころではありません。

天賢者は現在全部で8人いらっしゃるそうですが、私はそのうちの天賢者4人と知り合いになりました。

しかもそのうちの二人は同級生だったのです!」


その俺の説明にまたもや師匠は驚く。


「なにぃ~?

天賢者と4人も知り合って、しかもそのうちの二人が同級生だと?

一体、どういう事だ?説明せい!」

「はい、その天賢者エレノア・グリーンリーフ様の御弟子様方の数人が、短期初等魔法学校の時に偶然私と同じ組にいたのです。

そして私はその方たちと友人となり、卒業したその後もお付き合いがございました。

おかげで私は恐ろしく鍛えられる事になったのです」

「むむむ・・・それでレベルが162にもなったという事か?」

「はい、その通りです。

お手紙を書かなかったのは何を書いても奇想天外な事ばかりで信じていただけそうになかったので、あきらめて書くのをやめてしまったのです」


俺の説明に師匠はうなずきながら答える。


「確かにな・・・お前がレベル162になっただの、天賢者の半分と知り合いになっただのと手紙で書かれても、わしはお前の気がおかしくなったのかと思ったであろうな」

「ええ、その他にもとにかくこの3年間は信じられない事ばかりで、私は手紙を書く代わりにこの3年間の事を日記に書いてまとめておきました。

それを読んでいただければ、いかにこの私の3年間が普通の生活でなかったかをお分かりになっていただけるでしょう」

「そうなのか?

それほど普通でない生活だったのか?」

「はい、これほど普通でない経験をした中等魔法学校の学生は過去にもいなかったでしょうし、今後も極めて可能性は低いと思います。

ゼロと言っても良いでしょう」

「それほどなのか?」


師匠の疑問に俺は実際にいくつかの例を言ってみた。


「ええ、例えばマジェストンの迷宮を最後まで制覇したり、帝都を襲った悪魔の大群と戦ったりと・・・」


俺の話にまたしても師匠は驚きの声を上げる。


「なにぃ!マジェストンの迷宮を制覇したじゃと!

あそこは世界でもっとも大きく深い迷宮じゃぞ!

確か最下層までは30階もあるはずじゃ!

わしとて正規の魔道士になった若い頃に仲間と挑戦した事はあるが、それでも8階層が限界じゃったぞ!

それを中等魔法学校の学生にも関わらずか?」

「はい、その通りです。

もちろん私の力ではなく、天賢者であるグリーンリーフ先生やその友人たちのおかげですが」

「むむむ、なるほどな、それは興味深い。

後でゆっくりと読ませてもらうとしよう」

「はい、それに師匠も大アンジュの話は聞いておいででしょう?」

「うむ、昨年アジャスタの魔法協会分所に行った時にその話は聞いた。

驚いて魔法協会新聞も買ったよ。

何でもあの金剛杉の大森林に魔法一発で大穴を空け、あろう事かそこに町まで作って子爵に任じられた方がいたとか・・・確かホウジョウ子爵と言ったかのう」


やはりアレは世間的にも大きな出来事だけあって、師匠はその事を知っていた。

師匠がホウジョウ先生の名前まで知っているなら話は早い。


「ええ、その魔法を使った者が私の友人の一人、アンジュ・サフィールで名前の通りサフィール族の魔人です。

そこに町を作ったのが、そのアンジュの主人で私のもう一人の友人でもある、シノブ・ホウジョウ子爵です。

大変運の良い事に、その二人と私は短期初等魔法学校で同級生となりました。

そこで友人になったのです。

私が友人になった貴族というのは、そのホウジョウ子爵なのです。

もっとも友人になった時はまだ彼は平民でした。

そしてその二人は今や共に天賢者なのです」


その俺の説明を聞いて師匠が驚く。

もはや驚きすぎて、どうかなりそうなほどだ。


「何!その二人が天賢者!?

そしてお前の友人じゃと?

サフィール族の魔人と帝国子爵様が?」

「はい、信じられないのも無理はありませんが、これをご覧ください」


そう言って俺はホウジョウ先生からもらったサイン本を見せる。

それを見た師匠がうなりながら呟く。


「ううむ、本当じゃ。

親愛なる友人トム・サテナへ、シノブ・ホウジョウ子爵よりと書いてある。

むむむ・・・」


もはや師匠は何をどう驚いてよいかわからなくなったほどだ。

当然だろう。

俺がこの3年間にあれほど驚いた事を、たったの数分で聞かされては訳がわからないのも無理は無い。


「はい、私はこの3年間の事を後日まとめて書籍として出版しようと考えております」

「ううむ、確かにそれが本当であれば、その本は将来恐ろしく貴重な本になるやも知れぬぞ?」

「はい、私もそう思います」

「まあ、よい。

では早速村長様に御報告に参ろう。

村長様もお前の帰りを待ちわびておるぞ」

「はい、あ、その前に御師匠様に御土産を買ってまいりました。

これをどうぞ」


そう言って俺は魔道士の杖と望遠鏡をマギアサッコから取り出して師匠に渡した。


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