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トム・サテナ 03 波乱の学校生活

 帝都の悪魔退治に驚いていたら、今度はアムダルン校の生徒がトリプルスターに試合を申し込んできたそうだ。

それをホウジョウ先生たちが受けて、何でも最初はアンジュだけで戦うらしかったのだが、直前になってキャロルも一緒に戦う事になったようだ。

そして何だか大きな催し物になったみたいだ。

俺にもその手伝いをするために話が来て、色々と手伝う事になった。

その代わり手伝い料は弾むと言われたよ。

 

 その催し物は驚いた事にマジェストンの魔法闘技場を貸しきって、屋台や賭け屋まで出ている!

町の人たちも屋台や賭け屋に群がってこの見世物は大盛況だ!

試合のオッズはかなりアムダルン校の方に傾いているようだ。

もっとも普通に考えればそれは当然だろう。

何しろたったの二人対アムダルン校の6年生全員の戦いなんだからな!

しかし一見たったの二人で戦うアンジュとキャロルが不利なように見えるが、もちろん二人の実力を知っている俺にはどちらが勝つかはわかっている。

しかも呆れた事に二人はこの試合のためにホウジョウ先生たちと一緒に領域迷宮まで行って、さらに訓練してレベルを上げてきたそうだ。

俺も最近やっと覚えた鑑定魔法で戻って来たキャロルを鑑定してみたら、何とレベルは210だ!

おいおい!ついこの間までは俺と大して変わらないレベルだったのに、こりゃまた凄い差をつけられたもんだなあ!

同じ中等魔法学校の生徒とは思えないほどだ!

さすがは魔人の娘といった所か?

こりゃもう少しレベルが上がったら、きっともう俺の鑑定魔法が効かなくなるな。


 そして俺もアンジュとキャロルに賭けてみた!

田舎の村で育った俺は、賭けなんてするのも人生初めてだ!

しかも俺がこの2年以上で貯めた貯金の半分、金貨10枚を賭けてみた!

場合によってはこの金がパアになってしまうかと思うと、賭けって物は本当に心臓に悪い。

アンジュたちが勝つとわかっていなければ、とてもじゃないがやれるもんじゃない!

そしてもちろんアンジュたちが勝って俺は大儲けだ!

金貨10枚が何と38枚に化けたのだ!

俺があまりの事にボーッとしていると、ホウジョウ先生に声をかけられた。


「どうしたんだい、トム?

君も勝ったんだろう?」

「ああ、ホウジョウ先生。

そうだな、確かにずいぶんと儲けさせてもらったよ」

「良かったじゃないか?」

「ああ、だがあまりにもあっさりと勝って大金を手にしたんで呆然としてね」

「そうか」

「ああ、実は俺はこの3年近く、迷宮へ行ったり、短期のバイトをしたりして、やっとの事で金貨を20枚ほど貯めたんだ。

そのうちの半分、思い切って10枚を賭けてみたんだ。

そうしたらいきなりそれが金貨38枚にもなった。

今まで2年以上で儲けた金よりも多いんだぜ?

そりゃ呆然ともなるよな」

「そうだな、だが気をつけろよ!

これで調子に乗ってまた別の賭けをしようだなんて思わない方が良いぞ?」

「ああ、もちろんわかっているよ。

今回は特別さ。

これは村のために使うつもりだ」

「村のため?」

「ああ、以前にも話したと思うけど、俺は村の師匠と村長さんのおかげで中等魔法学校に入学できたんだ。

だから卒業して魔道士になったら村に帰って働くんだ。

これはそのために買うジャベックの資金にするつもりなんだ」

「ジャベックの?」

「ああ、俺の村はまだ未開発の土地がたくさんあるんでね。

そこを開墾するためにも優秀なジャベックがあった方が良いんだ。

そのためにこれを使うつもりだ」

「なるほど、頑張れよ」

「ああ、また今回もホウジョウ先生の世話になったな。

ありがとう」

「気にするな」


まったく、この人と一緒にいると、とにかく予想外の事しか起こらない!

こっちの心臓が持たない位だよ!


 その後で修学旅行とかいう旅行に行って来た時も驚きだ!

何しろ地震だの火山の噴火だのを目の当たりにして体験したのなんか初めてだ!

人生こんな事があるのかと俺は驚いたよ!

しかもその天変地異の大災害に対して、ホウジョウ先生は手馴れたように俺たち全員にテキパキと指示を出して、被害を最小限に抑えてしまった!

あのグリーンリーフ先生ですらそんな事は出来ないのに本当に驚きだ!

後で聞いてみたら子供の頃からそういう訓練をしていたからとか言っていたが、一体どこで生まれたらそんな訓練を子供の頃からするんだ?

本当にあの人は謎だ!


 そしていよいよ俺も卒業だ!

これでついに正規の魔道士だ!

しかも卒業が決まった後で、ホウジョウ先生との試合まであるとは思わなかった!

俺も含めて総勢300人以上の正規の魔道士が相手だというのに、ホウジョウ先生の圧勝だ!

ま、わかっていたけどね。

俺はモーゼスのじいさんと一緒で、天賢者と戦うなんて二度とない事を経験できて良かったよ。


 卒業式の後で同級生たちとも卒業祝いの馬鹿騒ぎをしたが、トリプルスターとの面々とも最後の宴会をした。

これで「トリプルスター」も解散だ。

おそらくもうこの面々で何かをする事はないだろうと考えると少々悲しくもある。

俺がそんな事を考えていると、ホウジョウ先生が話しかけてきた。

 

「トムは故郷へ帰ったら何をするの?」

「ああ、俺は以前話した通り、親兄弟はいないし、村に帰ったら世話になった師匠や村のために働くよ。

それに俺の村はまだ遊んでいる土地があるから開墾のしがいもあるからな」

「そうか、トムも大変だな」

「なあに、ホウジョウ先生の苦労に比べれば大した事はないさ。

何しろあんな魔物の棲む大森林をこれから開発するんだからな」

「そう言えば村へ持ち帰るジャベックは買ったの?」

「いや、まだだ。

学生寮には今月一杯は居ても良いそうなんでな。

その間は食事も出るし、せっかくだから残った日数で迷宮にでも行って、もう少し稼いでからなるべく良いジャベックを買おうと思っているからまだ買ってないんだ」

「そうか、どういうジャベックを買うつもりなの?」


そのホウジョウ先生の質問に俺も以前から考えていた事を答える。


「そうだなあ・・・やっぱり色々と使いたいから汎用ジャベックになるだろうな。

それと以前話した通り、出来れば村の開墾もしたいから、農業ジャベックも出来れば欲しいんだが、やっぱり性能の良いのは結構値段が張るからなあ。

一応、目星をつけている奴はあるんだけど難しいな」


良いジャベックは値段も高い。

俺はこの3年間迷宮へ行ったり、ちょっとした魔法の仕事もしたりして、そこそこ稼いでいた。

特にこの間のアムダルン校との賭けで大きな儲けを得ていたので、金貨を50枚以上も貯める事が出来た。

これだけあればそこそこ性能が高いジャベックを買う事も出来るだろう。

しかしそれを聞いたホウジョウ先生は何やら自分の腰をゴソゴソと探ると、そこに結わえてあった袋を俺に差し出してきた。


「それじゃこれを僕からトムに餞別としてあげるよ」

「なんだい?こりゃ?」


俺はキョトンとしながらも、その袋をホウジョウ先生から受け取る。

そんな俺にホウジョウ先生は笑って説明をする。


「ジャベックのマギアグラーノだよ」

「えっ?」

「その中にはオリオンとヒミコが一体ずつに、ボーイとメイドが2体ずつ、それに僕がバッカンさんのジャベックを真似て試しに作ってみた開墾用農業ジャベックが入っているんだ。

それを全部トムに上げるよ」

「なんだって!」


その説明を聞いた俺は慌てて袋の中身を確認する。


「本当だ、グラーノが7つも入っている!

しかもオリオンとヒミコって、アレだろ!

俺も何回か一緒に迷宮に行った事がある、グリーンリーフ先生が作った魔法も使えるレベル160もある万能ジャベックだろ!」

「そうだよ、魔道士級の魔法が使えるからトムと同じ位の魔法は使えるよ。

エレノアは内弟子にそのジャベックを2体ずつ上げているんだ。

トムは正式なエレノアの弟子って訳じゃないけど、一緒に色々とやっていたからね。

まあ、弟子みたいなものさ。

だからそれを上げるよ。

エレノアに許可ももらっているから安心して」

「いいのかい?

こいつはあのノーザンシティの最新汎用ジャベックよりも性能がいいんだろう?

普通に買ったら金貨400枚以上はするんじゃないか?」

「ああ、これからトムも自分の村で大変だろうからね。

その2体とボーイとメイドが四体あれば、トムもかなり助かるんじゃないかな?

それに試作品ですまないけど、僕の作った開墾農業ジャベックもそれなりに役に立つと思うよ」


それを聞いた俺はあきれ返って話した。


「おいおい!役に立つどころじゃないだろう!

こんな高価なジャベックをこんなにたくさん!

ボーイやメイドだって、そこらのジャベック屋で買えば、金貨数十枚はするだろう!

しかも開墾用ジャベックまでだって!?」


実際これだけのジャベックを買ったら、金貨1千枚近くしてしまうだろう!

しかしホウジョウ先生は笑って答える。


「ああ、以前からトムの話は聞いていたからね。

これから村に帰ったら大変だろうと思うし、そのための餞別さ」

「そりゃこっちとしちゃ大いに助かるが本当に良いのかい?」

「ああ、村に帰ったらせいぜい役に立ててくれよ。

ここにいる間もオリオンやヒミコと一緒に迷宮へ行けばそこそこ稼げるだろうしね。

それでジャベックを買う予定だったお金は村に何か御土産でも買ってあげなよ」

「恩に着る!

全くホウジョウ先生様々だ!

一生感謝するよ!

今の俺は何も恩返しも出来ないが、もし将来何か俺に出来る事があれば何でも言ってくれ!

力になるぜ!」

「はは、そんな事はいいよ。

まあ、村のために頑張ってくれよ。

僕も応援しているからさ」

「ああ、ありがとう!頑張るぜ!」

「そうそう、そのジャベックたちには君が主人である事は言ってあるけど、念のために魔法協会に登録をしておいた方が良いよ。

結構貴重なジャベックだから誰かに盗られないようにね」

「もっともだ、早速この後で登録に行っておくよ」


俺はホウジョウ先生に心から感謝してジャベックの袋をもらった。

そして俺は学生生活の最後にホウジョウ先生にもらった本を出して頼み込んだ。


「なあ、ホウジョウ先生?

それと最後の記念に俺にサインを書いてくれないか?」

「サイン?別に構わないけど?」

「じゃあ、これに頼むよ」

「何て書けば良いのかな?」

「そうだなあ・・・

まあ、出来れば君と親しい事がわかる事を書いておいてくれよ。

あ、あと、名前の後にちゃんと子爵って書いて欲しいな」

「わかった」


そういうとホウジョウ先生は、俺の渡した本に「我が親愛なる友人、トム・サテナへ シノブ・ホウジョウ子爵より」と書いてくれた。


「これでいいかい?」

「ああ、ありがとう!

これで村に帰ったら自慢出来るさ」

「村に帰って自慢か・・・」

「ああ、君と友人ってだけで自慢が出来るからな!」

「そうなのか?」


少々驚いて話すホウジョウ先生に俺は笑って話す。


「そりゃそうさ。

何たって今やホウジョウ先生は帝国貴族様なんだからな!」

「はは、その本人にはあまり貴族の自覚なんぞないけどね」

「そこがホウジョウ先生の良い所なんじゃないのか?」

「そうかな?

うちのシルビアなんかにはもっと貴族の自覚を持てって言われるよ」

「ははっ!あの人はホウジョウ先生に厳しいからな。

ああ、それと実は俺はこの3年間のマジェストンでの生活を日記で書いてあるんだ。

機会があったらそれをちゃんとまとめて出版しようと考えているんだ。

その中にはホウジョウ先生の話がずいぶん出てくるんだぜ」

「へえ?それはいい事なんじゃないか?

中々、面白そうだ」

「ああ、ポリーナのゴブリン本みたいに世の中の役に立つってほどじゃないけどな」

「いや、それはそれで魔法学校の生徒の学生生活を一般の人に知らしめる面白い本になると思うよ。

ひょっとしたら将来にはポリーナの本よりも貴重な本になるかも知れないよ?

出来上がったら是非ボクにも見せてほしいな」

「うん、その時はホウジョウ先生に一番に進呈させてもらうよ」

「あはは、それは楽しみにしているよ」


 俺はその後、まずはホウジョウ先生からもらったオリオンとヒミコを連れて魔法協会へと行って登録した。

名前は「マイク」と「ナンシー」にした。

これは亡くなった俺の父親と母親の名前だ。

そして俺は二人を連れて迷宮へと行った。

俺のレベルは153だったので、二人と迷宮で訓練した結果、グングンと上がり、寮にいた残りの日数でレベル162にまでなった。

 おかげで迷宮での稼ぎも今までとは比較にならないほど多くなり、俺はそれで故郷に色々と土産を買った。

御師匠様には高価な魔道士の杖と望遠鏡を、村長様には銀の食器セットと燭台と蝋燭、それに望遠鏡もだ。

望遠鏡は珍しいし、最新の道具なので、魔法学園祭の時にホウジョウ先生から5個ほど安くしてもらって買っておいた。

それとついでにサクラ魔法食堂の特製調合粉も10袋ほど安く譲ってもらった。

これでパンを焼いて村のみんなに食べさせたらみんな驚くだろうな。

何しろ俺も初めて食べさせてもらった時は、あまりの柔らかさと美味しさで驚いたもんな。

それ以外に村のみんなには酒を10樽ほどと、フェイアリンを5樽、鋼鉄製の鍬を百本買った。

うちの村は田舎なので、まだ大半の者が使っているのは木や鉄製の鍬だ。

鋼鉄製の鍬などを土産にもらったら驚いて大喜びするだろう。

うちの村の人数は50戸で200人ほどなのでこれで十分だろう。

まさか村のみんなも俺が全員分の土産を買って帰るなんて思ってないだろうな。

それでもまだ金貨は30枚以上残っていた。

何しろホウジョウ先生にジャベックをもらったので、貯金は丸々残っていた。

本当にありがたい。

しかし村に帰ってからも何かに使う可能性も高いので、無駄使いはせずに残しておこうと思った。

そしてそのたくさんの土産物を俺は自分とマイクとナンシーのマギアサッコにしまっていよいよ里帰りだ。


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