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キャロル・マーカス 05 御父様への説得

 今年の夏休みには迷宮で特訓をすると聞いてもちろん私も申し出たわ!

アンジュ御姉様だけでなく、ミルキィさんやポリーナさんまで参加するというのに私だけ置いていかれてたまるものですか!

でもホウジョウ先輩やグリーンリーフ先生に困られてしまったわ。

他の人々はもう15歳を過ぎているから構わないけど、私はまだ未成年だから迷宮に何日も連れて行くのには親の許可がないと受けられないと。

そんな!

私、今までだって、アンジュ御姉様やミルキィさんたちとあちこちの迷宮や魔物退治にだって散々行っているのに今更?

盗賊だって退治して魔法協会に引き渡した事だって何度もあるのよ!

でもホウジョウ先輩たちが言うには今回の迷宮はどれ位の日数になるかわからないし、そんな簡単な事ではないと言われてしまったわ。

言うなればアムダール帝国を出て、どこか別の国に行くに等しいからと。

むむ・・・確かに私も領域迷宮って、未知の場所や極地探検のような感じだと聞いた事があるわ。

でも私はどうしても行ってみたいわ!

こうなったら御父様を説得するしかないわね!

御父様さえ納得すれば、御母様も渋々納得するはずだわ!

私は家へ帰ると二人に説明をして懇願したわ!


「御父様!御母様!

そんな訳でホウジョウ先輩たちと一緒に迷宮へ行かせてください!」


私の懇願に御父様は考えているようだけど、御母様は反対だわ。


「そんな無茶な!キャロル?

あなたはまだ中等魔法学校の生徒なのよ?」

「それはポリーナさんやミルキィさんだって一緒よ」

「あの方々とは状況だってレベルだって違いすぎます!

そんな無茶な事は許せません!」

「でも私はどうしても一緒に行きたいんです!

どうか許可をお願いします!

御父様!御母様!」

「でも未知の迷宮と、あのマジェストン迷宮の最下層までなんて・・・

最下層なんて言ったら、当然領域迷宮ですよ!」

「だからこそよ!

こんな機会は次はいつあるのかわからないのよ!」


私の必死の懇願に、とうとう御父様が落ちたわ!


「わかった、キャロル。

お前がそこまで言うのならば許可しよう。

但し条件がある。

子爵とアンジュさんを一回うちに呼んで話をさせてくれ」

「はい!ありがとうございます!」


落ちた!

御父様は私の説得で落ちたわ!

これで私も晴れて御姉様たちと一緒に迷宮へ行けるわ!

ホウジョウ先輩に事情を話すと、快く御姉様と一緒に我が家に来てくれる事になったわ。


「こんにちわ、マーカス男爵、お久しぶりです!」

「ええ、いつも娘がお世話になっております。

こちらは妻のカイヤと息子のジョミーです」

「こんにちわ、カイヤ夫人、ジョミー君」

「初めまして、ホウジョウ子爵様」

「ははっ、君がジョミー君か?

話はアンジュやキャロルから聞いているよ。

中々優秀なんだってね」

「とんでもありません!

でも尊敬するホウジョウ子爵にそう言われるのは嬉しいです!」

「え?何でボクを尊敬しているの?」

「実はボク、魔法学園祭でキャロル姉様に連れられて、窮理部に行ったんです!

そこで紙飛行機やゴム車に感動して!」

「なるほど!それは嬉しいね!

ところで、これは大した物ではありませんが、ほんの手土産です」


そう言ってホウジョウ先輩はいくつかの物を出した。

御父様には望遠鏡を、御母様にはサクラ魔法食堂の特製調合粉を、そしてジョミーにはなにやらマギアグラーノを一ついただいたわ。


「これはわざわざありがとうございます」

「ええ、返って御気を使わせて申し訳ございません」

「いいえ、本当に大した物ではありませんので、お気遣いなく」


そしてホウジョウ先輩からマギアグラーノをいただいたジョミーは不思議そうに聞いた。


「これは何のグラーノなのですか?

ホウジョウ子爵様?」

「ああ、それはね、ちょっとしたジャベックのマギアグラーノなんだ。

それを持って魔力を込めながら、起動、ハムハム3号と言ってごらん」

「はい、起動!ハムハム3号!」


そうジョミーが言うと、そこにはハムハムやムサビーと同じ位の大きさで、何やら耳が少々大きなネズミのような灰色の小動物が出現した。

それを見たジョミーは驚いて尋ねる。


「わあ!これは何ですか?」

「はは、それはハムハム3号試作型と言ってね。

今度売り出す予定のジャベックの試作品なんだ」


なるほど!これはそういう物だったのね?

先輩から試作品のジャベックをいただいたジョミーはずいぶんと嬉しそうだわ。


「うわあ!ホウジョウ子爵様!ありがとうございます!

本当にこのような素敵な物をいただいて構わないのですか?」

「ああ、これは売り出すつもりのハムハム型ジャベックの試作型なんでね。

その代わり、今度会った時に感想を聞かせて欲しいな。

一応低位の電撃呪文と回復呪文、それに解毒呪文を使えるよ。

レベルは30だからそこそこ役に立つよ。

名前でもつけてかわいがってあげてくれ」

「はい、わかりました!

僕はこれをキースってなづけて大切にします!

キース、僕はジョミーだよ、これからよろしくね!」


ジョミーがそう言うと、そのジャベックはコクリとうなずいて挨拶をした。


「はい、ジョミー様、こちらこそよろしくお願いいたします」

「うわっ!しゃべった!」

「ああ、難しい話は無理だが、多少の日常会話なら出来るよ」

「凄い!本当にありがとうございます!ホウジョウ子爵様!」


見ていると可愛くて中々面白いジャベックね?

ちょっとジョミーを羨ましくも思うけど、私は御姉さまからアルジェントをいただいて散々ジョミーに自慢していたのだから文句は言えないわね?

ホウジョウ先輩やアンジュ御姉様と一緒に食事をしながら今回の訓練のあらましを話していただいたわ。

御母様が心配そうに尋ねる。


「でも・・・本当に大丈夫でしょうか?

確かにうちの娘は中等魔法学校の生徒としては高いレベルですが、まさかあのマジェストンの迷宮の最下層まで行く予定なんて・・・」

「その点は大丈夫です。

私やこのアンジュ、それに何と言ってもうちのグリーンリーフ先生がついてますからね」

「カイヤ、確かに心配する気持ちはわかるが、こんな機会は滅多にないんだ。

ホウジョウ子爵やアンジュさんを信じて送り出してあげようじゃないか」

「ええ、わかりましたわ」


でもここでジョミーが飛んでもない事を言い出した。


「いいなあ・・・キャロル姉様は・・・

ねえ、父上、ボクも行ってはダメですか?」


それを聞いた御父様は笑って答える。


「はは、流石にジョミーではまだ無理だな」

「そうですよ!

あなたはまだレベルだって30程度じゃありませんか!」

「うん、そうだな、ジョミーは今度父さんがマジェストンの迷宮へ連れて行ってあげるからな」

「え?本当ですか!父上!」

「ああ、キャロルも今のお前くらいの時に初めて連れて行ったからな。

そろそろ良いだろう」

「わーい!ありがとうございます!父上!」


二人に諭されてジョミーも納得したみたい。

まあ、言ってみただけでしょうからね。

でもこれで両親の許可も出たわ!

さあ!いよいよアンジュ御姉様と未知の迷宮へ挑戦よ!


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