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秘匿機関『SIA』  作者: yumigawa
第一章 それは始まりでは無かった。
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第七話 生徒会の闇

 目が覚めた日の翌日に、俺は退院した。

 元々、怪我や病気では無かったからだろう。

 だから今日も学校へ登校した。

 と言っても病院から直接なので、神嵜さんと怜那も一緒だが。


「響!? もう登校して平気なの?」


 俺達が教室に入ると、みんなの視線がこっちにむいた。

 不審者の件は学園側が一部を伏せて公表していた。

 そして俺が倒れたという事も、クラスには伝わっていた。

 まあ、神嵜さんが学園を休んでいた事も原因であるが。

 しかし、倒れた理由は公表されていなかった。

 恐らく学園側が、俺に研究関係で注目を浴びないように手を打ってくれたのだろう。

 実際、あの後に説教された。

 だったらもっと早く来てください、と心の底から思った。


「二人揃って登校とは、仲がよろしいですね〜」


 長月が、からかってきた。

 コイツ……何かニヤニヤしてやがる。

 何を考えているんだ?!

 すると、笑顔で神嵜さんが……


「えへへ、まあ、ね?」


 言い方ぁ!

 何? その意味深な言い方は!

 それはでは堂ヶ崎の思うつぼ……あれ?

 堂ヶ崎がポカンとしているだと?


「え? ちょっ……しょれって、どうゆう意味!?」


 あ、長月が噛んだ。

 ちょっと可愛いな。

 ……もしかして以外と耐性が無いのか?

 自分からからかってそれかよ。


「私達……友達になりました!」


「ブフゥー」


 翔が噴き出した。

 汚いなー


「……へ?」


 堂ヶ崎が目を点にしている。

 うん、気持ちは分かるよ。

 俺だって逆の立場だったら、そうなると思う。


「ユイ? どうしたの?」


 神嵜さんは相変わらずキョトンとしている。

 意外と鈍感なのかな?


「はぁー。そりゃそうか。如月は妹が大好きだからなー」


「「え?!」」


 堂ヶ崎が腹いせとばかりに、大声でとんでもないでっち上げをくださいした。


「ちょっ、テキトーな事を言うな! 長月!」


 急いで俺は抗議する。

 しかしその抵抗は無意味だと、すぐに悟る事になる。


「HAHAHA! では問おう。転入初日に妹と抱き合っていたそうだが、これについては何と説明するおつもりで?」


 そう言って長月はスマホに写真を表示させた。

 あの時、撮られていたのかよ!

 しかも角度的に抱き合っている様に見える写真だった。

 くっ……と長月をみた。

 長月の顔は邪悪な笑みで染まっていた。

 くそ、謀ったな! 長月!!


「ややっ、如月殿も拙者の仲間でしたか! そうならそうと、もっと早く言ってくれれば良かったのに」


 グルグルメガネの男子が湧いてきた。

 って、お前どっから湧いた!


「ようこそ! 我々、妹同好会へ! 如月君、君の入部を歓迎しようではないかっ!」


 もう一人、図体のでかいヤツが湧いて出てきた。

 お前らテンション高いなオイ!

 あと俺はシスコンじゃない!


「あ、それ私も見た! あれ如月君だったんだ」


「うらやま……じゃなくて、けしからんぞ!」


 うわー、どうやって収拾をつけるんだ?

 これは困った。

 その時、神嵜さんが声を張り上げた。


「如月君はそんな事しません! みんな惑わされないで下さい。それとユイ。貴女も大声で言っていい事と悪いことがあるでしょう?」


 クラスが静まり返った。

 え? どうして?

 思わず俺は神嵜さんの方も見た。

 すると神嵜さんが俺に向けて微笑んだ。

 うん、ありがと。でもね、貴女も前科一犯ですよ?

 そんな野暮な事は決して口には出さないが。

 冗談でも流石にクラスで、シスコンとからかわれる事が嫌だと思ってるのがバレた?

 でも俺、言ったっけ?


「あー如月、悪かったよ。ちょっと調子に乗り過ぎた」


「拙者も調子に乗ったでござる」


「悪かったよ。如月」


 長月が謝罪してから、それに続く様に謝られた。


「いいよ。シスコン呼ばわりされる事自体は、そこまで嫌じゃなかったし」


 シスコン呼ばわり自体は何とも思わない。

 いや、俺はシスコンじゃないよ?

 クラスでみんなから言われるのが嫌なだけで……


「え? もしかして……ドM?!」


「違うわ!! クラスで大勢から言われるのが嫌なだけで、個人的に揶揄う分には何とも思わないってことだよ!」


 何で、こうなるかなぁ……


「ハハハッ、ごめんごめん」


 まあ、冗談で済んだ見たいだから良いけどさ。

 とりあえず神嵜さんのおかげで収拾がついた。

 俺は神嵜さんに礼を言おうと思ったその時、神嵜から先に話しかけてきた。


「如月君、悪いけど今日の放課後に、生徒会室に来てもらえる?」


 今日の放課後か……何も予定は無いから大丈夫だな。

 だから俺はOKと言って自分の席に戻った。




_______________





 放課後、約束通り神嵜さんと一緒に生徒会室に来ていた。

 生徒会のメンバーは五人いるが、一人はまだ来ていない。

 4つの机が向かい合う様になっており、そこに会長用の机が少し、離れたところに置いてあった。

 俺は、その会長用の席と向かい合う感じで、パイプ椅子に座っている。


「木村君以外は全員揃いましたね。それでは、会議を始めます。副会長、よろしくお願いします」


 会議である神嵜さんが会議の開始を宣言し、司会を副会長に委ねた。

 副会長は三年生の男子生徒だった。


「今回の議題は、セキュリティ強化が完了するまでの処置についてです」


 セキュリティ強化完了までの処置……ん? 何で俺、呼ばれたの?

 一人、疑問を浮かべている俺を放置し、話は進もうとする。


「まず、現状の確認をします。阿賀野(アガノ)君、お願いします」


 阿賀野と呼ばれた人は、書記の席から返事して立った。

 ……服の上からでもマッチョだと分かるくらい筋肉がある人だ。

 阿賀野……ネクタイの色が青だから、この人も三年生だから先輩か。

 この学園はネクタイの色が、学年ごとに違う。

 今年は一年が黄色、二年が赤、三年が青だ。


「一昨日の事件を受け、生徒会は緊急処置として全部活動、及び一部委員会の活動を強制停止させました。しかし、僅か一日で殆どの運動部が抗議の意思を示しています。また、野球部、サッカー部、男子バスケットボール部、柔道部は顧問に黙って活動をした為、風紀委員に取り締まりを受けました」


 夏だし、大会が近いのかな?

 なら抗議も当然かもしれない。特に三年生にとっては。

 その考えを肯定するかのように、阿賀野先輩の報告はまだ終わっていなかった。


「風紀委員会は早急に対策を取ってほしいと今朝、要望を出してきました」


 今更だけどさ、一日で進み過ぎじゃない?

 それとも似たような事が、以前からあったのかな?

 

「阿賀野君、ありがとうございます。さて、現状はこのとおり、放置してはおけません。そk」


「失礼します!」


 突然扉が開かれ、二年の男子生徒が入ってきた。

 

「木村君。ノックをしてから入りなさい」


 会計の席に座った、メガネをかけた銀髪の三年の女子がきつく注意した。

 何もそんなに睨まなくても良いだろうに。


「まあまあ、それより木村君。代議員会から話を聞いてきたのだろう?」


 古賀野先輩が木村君を庇いつつ、話を本題へ戻しな。

 この人上手いな。

 

「そうでした。代議員会が、一部の運動部の部活動連合(ぶかつどうれんごう)形成活動を承認したそうです」


「なんだと!」


 神嵜さんと古賀野先輩は驚き、さらには苦虫を噛み潰したような顔をした。

 その後一方、副会長と会計は涼しい顔をしていた。

 ……部活動連合ってなんだっけ?

 学園の説明を受けた時、チラッと聞いた気がするけど……だめだ、思い出せない。

 俺が頭をひねっていると、木村君は俺の存在に今気づいたのか、ほかのメンバーに誰かと聞いてきた。


「彼はこの件の参考人として、私が呼びました」


 紹介され、俺は軽くお辞儀をした。

 木村君はそれにお辞儀をし返すと、庶務の席についた。

 これで全員が揃ったのかな?


「部活動連合が結成されると、絶対に生徒総会を開いて討論しないといけないな」


 そんな事を言った阿賀野先輩は、少し怖い雰囲気を出しているように感じた。

 というか、なんか生徒会室全体がピリピリしていた。

 主に、会長VS会計な感じで。

 何これ? 政権争いか何かか?

 

「起きてしまった事は仕方ないですね。で、どうしますか? 生徒会長?」


 会計の人が嫌味を込めて、神嵜さんへ言った。

 やっぱりこの人達は争ってるの?


「執行部以外の生徒がこの場にいる事をお忘れですか? 北上(キタカミ)先輩?」


 ヒィッ!! 神嵜さんと北上先輩、やっぱり争っているし!

 てか何で争ってんのさ!

 神嵜さんに指摘された北上先輩は舌打ちし、引き下がった。


「すまないね。見苦しいところをみせて」


 阿賀野先輩がコソッと囁いてきた。

 俺は、そんな事ないと言ったが、お世辞は良いと返されてしまっていた。

 ついでに部活動連合についても詳しく聞いておいた。


 部活動連合とは部活動関係で、生徒会の方針に異議がある場合に代議員会に内容の審議を受け、承認されて初めて結成活動が許される組織だ。

 部活動連合が結成された場合、連合が解散しない限り、生徒会は必ず1週間後には生徒総会を開いて討論をしなければならない。

 そして意外な事に、部活動連合の形成が承認されたのは八年ぶりらしい。


 阿賀野先輩の説明が終わった頃、ちょうど睨み合いの方も沈静化し始めていた。

 さて、あとどの位かかるんだろう……

 


________________





「ごめんね、こんな遅くまで付き合わせちゃって」


 帰り道、神嵜さんに謝られた。

 結局、生徒会室に俺が呼ばれたのは、不審者対策の案で問題点を見つける参考だった。

 と言っても、殆ど北上先輩の意見を論破する為だけに呼んだらしいが。

 そして生徒会の打つ対策は、部活動の停止を解除。代わりに活動時間の短縮、及び集団下校の徹底をする方で話を進めて行くようだ。


「生徒のためを思って呼んだんでしょ? なら気にしてないよ。友達の頼みでもあるし。それよりも、どうして北上先輩とあんなに仲悪いの?」


 都美先輩は事あるごとに、神嵜さんに難癖をつけて非難していた。

 それが気になって仕方がなかった。


「都美先輩が、不正をしていたからだよ。そして、まだ証拠は掴めていないとはいえ、その事実を私が知っている事を北上先輩は知っている」


 予想外の事実!

 でも不正って……あ、もしかして……


「お金?」


 生徒会で会計が不正をするってそれしか無いと思った。

 それは神嵜さんも同感なのか、苦笑いしていた。


「そう、都美先輩は部活動予算で自分の部活にほんの少し、多めの金額を入れている」


 確かに不正かもしれない。

 けど、それだけでああなるのか?


「それだけでも問題だけど、本当の問題はここから」


 まだ何かあるのか。

 俺は続きを静かに待つ。


「私が会長に就いてすぐの頃、私宛てに化学部が予算を誤魔化しているとの情報が入ったの。それで化学部部長の北上先輩を抜きで、秘密裏に調査したの。でも、副会長から情報が漏れていた。だから調査で出てきたのは、少し前に倒産して連絡が取れなくなった企業との不審な価格の取り引きの履歴だけ」


 なるほど、物的証拠を揉み消されわけか。

 そして、北上先輩は真実を知っている神嵜さんには念の為、消えてもらいたい訳か。

 なるほど……めっちゃ黒いな! 生徒がやって良い争いじゃないだろコレ!

 この学園に来てから、驚くほど事ばかりだな。

 俺って思ったより視野が狭かったんだな……


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