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秘匿機関『SIA』  作者: yumigawa
第一章 それは始まりでは無かった。
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第六話 心の壁

 病室がノックされた。

 多分看護師さんかな?

 とりあえず返事をしよう。


「どうぞー」


 扉が開かれた。

 そこにいたのは、スーツ姿の金髪の男性だった。

 そしてそれを見みて、目を丸くした神嵜さんが驚くべき事を口にした。


「パ……お父さん!?」


 神嵜さんの父だった。

 えっと……どう言う事?

 なんで神嵜さんのお父さんがここに?

 神嵜さんのお父さんは、嬉しそうにこちらへ向かって来た。


「Hay! 君がMr.ヒビキ! 会えて良かったデス」


 突然現れたかと思うと、今度は急に軽くハグされた。

 俺はそれに驚いてしまい、ついオドオドしてしまった。


「おっと、驚かせてすまないネ。そういえば日本では挨拶でハグはしないのだったネ。HAHAHA」


 うん。元気な人だ。流石、外国人って感じだ。

 髪は神嵜さんに似ているな。目の色は違うけど。

 神嵜さんの目は紫色なのに対して、そのお父さんは青色だった。

 実の親子だから当たり前か。

 ……実の親子、か。

 って何落ち込んでんだ俺! シャキッとするぞ!

 俺は気合を入れ直した。


「それで、えっと……神嵜さんのお父さん?」


 とりあえず名前がわからないから神嵜さんのお父さんと呼ぼう。

 

「oh…… 自己紹介が遅れていたネ! ワタシの名はジェームズ・C・レヴェリだ! ジェームズと呼んでクダサイ!」


 なるほど、ジェームズさんか。

 あれ? 神嵜は何処へいった?

 ……レヴェリ?


「あれ? 二人は親子なんだよね? 神嵜は何処に行ったの?」


 怜那が俺の疑問を代弁するように言った。


「神嵜は通称名だからね。私も正式な名前は、Alice・Kanzaki・Reverie だからね。でも日本だと、レヴェリは発音しにくそうだったからお母さんの旧姓でもある、神嵜を使わせてもらってるの」


 神嵜さんが説明するついでに、正式な名前も教えてくれた。

 なるほど、それでか。

 で結局、ジェームズさんは何でここにいるだ?

 俺が質問する前にジェームズさんが話し出した。


「アリスから話は聞きマシタ! 娘を守ってくれたそうデスネ。アリガトウゴザイマス! 流石リアル・サムライ! デス!」


 サムライ? 何? ドユコト?


「えっと、サムライ……?」


 確かに武道は一応やってはいたが、実力はあまり自身が無い。

 怜那ならサムライと呼ばれいても不思議は無いが。


「如月君、不審者を倒した時に背負投げをしたでしょ? その事を教えたら、テンションが上がっちゃって……」


 神嵜さんが何かごめんと謝ってきた。

 ジェームズさんは相変わらずだが。


「YES! JUDOで倒したと聞いて感動シマシタ!」


 もしかして日本の文化が大好きな人なのかな?

 だとしたら日本人としても嬉しい。

 せっかくだし、生けるサムライが此処にいる事を教えてやろう。


「ジェームズさん。俺よりも怜那の方が凄いですよ。刀を使えますからね」


 それを聞いたジェームズさんは目を輝かせ、病室を見渡した。


「ちょっとお兄ちゃん! 恥ずかしいから……」


 怜那が珍しく照れている。

 けど、隠している訳では無い。


「怜那は居合の達人なんですよ」


 そう、怜那はこの歳で居合の無我影心流(むがえいしんりゅう)の免許皆伝を受けた達人だ。

 非常にマイナーな流派とはいえ、その実力は凄まじい早さと鋭さだ。

 俺が能力で脳を強化してやっと、認識できるかどうか、というレベルだ。

 刀はかさ張るから任務では使用してないが……

 だが、刀を持った怜那の間合いに入れば、恐らく誰も逃れられない。

 そのくらい凄いのだ。


「なんと! Ms.レイナ! それは本当デスカ!?」


 ジェームズさんの目の輝かせ様に諦めたのか、ため息をついて認めた。


「はい。機会があれば披露します……」


 そう言って怜那はこっちをジト目で見てきた。

 うん。なんかごめん。

 というか、ジェームズさんはこのために来たのか?


「お父さん……そんな事話しにわざわざ来たの?」


 神嵜さんが呆れた様な目でジェームズさんを見つめていた。

 それに気づいたジェームズさんは忘れてた、という感じをしていた。


「oh、ソウデシタ。Mr.ヒビキ、八月のジョウジュンは空いていますか?」


 ジョウジュン? 上旬のことか。

 確か……お盆前だっけ?


「空いてますけど……」


 それを聞いたジェームズさんは笑顔になった。

 なんなんだ一体?

 わけがわからないよ!


「なら是非、マイホームへお邪魔シマセンカ?!」


 え? 外国?! パスポート取らなきゃ……


「あ、マイホームって言っているけど日本にある別荘だからね?」


 神嵜さんが補足してくれた。

 よかった。なら大丈夫か。

 それに、護衛任務の件もあるから都合も良い。


「じゃあお言葉に甘えて……」


「OK! Ms.レイナはドウシマスカ?」


 あ、怜那に聞くの忘れてた。

 怜那は少し考えた素振りを見せると、怪しげな笑みを一瞬だけ浮かべ断った。


「私は用事があるので行けません。すいません」


 用事? 珍しい事もあるな……ってもしかして任務かな?

 目線で問いかけると、怜那はうなづいた。

 なるほど、頑張れ! とサインを送ると、怜那はガクリと肩を落とした。

 あれ?何か間違えたか?


「デワ、詳しい事はレティシアから伝えさせマス!」


 そう言ってジェームズさんは立ち上がり、出る時に別れの挨拶をして帰って行った。


「あ、お父さん、忘れ物してる。ちょっと届けに行ってくるね」


 忘れ物に気づいた神嵜さんはそう言い残して病室を一旦出た。

 それを見た怜那が真剣な顔で、俺に話しかけてきた。


「お兄ちゃん。()()()の事だけど、」


 ()()()の事……

 そうだ、今回は一般人として介入したが組織に報告をした方が良いだろう。

 目が覚めてから、ずっと気になっていた。


「報告は私が代わりにしておいた。って言っても神嵜先輩から聞いた事を報告しただけだけど」


 それでも有難い。

 任務に関係する事はなるべく早い方が良い。

 けど一応、俺からも報告はしておこう。今後の事も含めて。

 それと、


「いつも悪いな。ありがとう、怜那」


 頭をクシャクシャっと撫でる。

 それを怜那は気持ち良さそうに目を細めた。

 そういえば、さっき一昨日なんて言ってたな。

 言い間違いか?なんて考えていると、視界の端に時計が、目に入った。

 午前0時?

 ついさっき日が跨いだのか。

 あれ? この時間って面会できるのか?

 怜那は兄妹だけど、神嵜さんは当時者とは言え、血の繋がりとかがある訳じゃない。

 何で神嵜さんもこんな遅くまで居られるんだ?

 謎だ……



__________


side.アリスR神嵜




 パパに忘れ物を届け、病室に帰る途中、私は昨日……一昨日からの出来事を思い出していた。

 如月君は私が襲われていたところを、自分の危険を顧みずに、私を守ってくれた。

 それも、ただ戦っただけじゃ無い。私が動けないのを理解した上で、それ以上近づかせないように戦っていた。

 そんな事できる人なんて、中々いないだろう。

 如月君は私にとって、尊敬できる人だ。

 その如月君が倒れた時、私は何すれば良いのかわからなかった。

 幸い、搬送先の病院がパパの経営している病院だったので、話をして特別に個室にしてもらい、面会時間を過ぎても、病室に居ても良いことにしてもらった。

 目を覚ました後も、彼は私に恩を着せようともしなかった。それどころか、気にしないで、と言ってくれた。

 それでも、何か返したいと思ってつい、何でもすると言ってしまった。

 内心、ちょっと怖かった。何でもは言い過ぎたと反省している。

 信用していない訳じゃ無いけど、えっちな事を言われると思った。

 でも彼から出たのは、友達になろう、だった。

 今思えば、あんな友達のなりかたは無いと思う。

 でも、その言葉を聞いたとき、私は、自分の事が恥ずかしくなった。

 彼なら信用できる。

 それに秘密があると知った上で、友達になろうと言ってくれた。

 私はとても嬉しかった。

 結衣以外にも友達が出来る事も含めて。

 だから、つい握手まで求めてしまったが、彼はそれに応じてくれた。

 本当に優しい人だ。

 もっと仲良くなりたい。

 でも……


「何か、壁がある気がする」


 ついさっき友達になったからかも知れないが、何が違う。

 まるで私の様に、何か大きな事を隠している様な気がする。

 思い返せば、如月君は妹の怜那さん以外の人と話しているとき、例え相手が友人であっても、心の底から笑っているようには見えなかった気がする。

 気のせいかな……?

 考えても仕方ない。とりあえず病室に戻ろう。

 

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