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星の海で会いましょう  作者: 慧桜 史一
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月面大戦編11

《アポロ作戦を開始する。》

 チャールズ少佐の厳かな宣言でアポロ作戦の第二段階と言うべき人民軍月面基地への侵攻が始まった。

 US軍の航宙母艦である『ウィリアム・タフト』と『ジェームズ・ガーフィールド』から次々とスペース・トルーパーが吐き出されている。その中に俺たちも居た。

 護衛の『クロウ』部隊が先行し、スヴェン隊は真ん中での出撃だ。スヴェン隊の隊列は『ヘーニル』が先頭でその後ろを『アスク』5機が追従している。『アスク』はスペース・トルーパーが持つには不釣合いな大きな武器を携行していた。

 それはスペース・トルーパーでも拠点や基地と言った大型施設に打撃を与えられる携行型のミサイルポッドだ。2発しか撃てないがミサイルであるので基地にも有効だ。通常スペース・トルーパーはスペース・トルーパーと戦う必要があるため、極力身軽である方がよい。ミサイルポッドは艦船などにも有効であるが、なかなか装備する機会がないのだ。俺の所属するスヴェン隊5機は両手にそれを装備していた。1機で合計4発撃てる計算だ。

 しばらくすると前方で戦闘が開始された。敵の防御拠点の護衛部隊と護衛の『クロウ』部隊が戦闘に入ったようだ。戦闘宙域で最初に見えた敵影は『ジャール・プチーツァ』だった。鳥を連想させるシルエットはUS軍の『クロウ』にも通じるデザインで、後発である『クロウ』は『ジャール・プチーツァ』を模倣したのではとまで言われた。

 しかしその性能差は歴然で『ジャール・プチーツァ』はそこまで大した性能ではない。世代的にもUS軍の『マウス』と同世代であり旧式もいいところなのだ。

 それが出てきたと言う事はUS軍の司令の読みどおり『スルト』はもうなく、旧式の防衛部隊しか編成できなかったと言う事だ。人民軍はかなり台所事情が厳しいらしい。

 俺は『クロウ』部隊を突破し、こちらにやってくる敵を順に潰していく。正直弾を使うことすら躊躇するほどの戦力差がある。敵の攻撃を避けつつ近づいてはプラズマ・ブレードで切り裂いていった。

 推進剤を節約するため、最短距離で相手に近づくので動きは直線的になりがちだ。敵はそれを見て反撃してくるのだが、その弾も最小限の動きで避ける。

《すごい…。》

 スヴェン隊の誰かの感想が漏れてきた。

「『アスク』に乗っていれば同じことができるようになりますよ。」

《っ…。》

 俺が何の気なしに答えると息を呑む音が聞こえた。

《グレン君。絶好調だね。》

 そんな空気を見かねてかクリストフから通信が入る。

「そうでもないさ。敵は旧式だし。」

 俺は背後からの敵の弾を避けてまた1機を切り捨てながらクリストフに答えた。

《そうかい?今もまるで後ろに目があるかのように避けていたけど、僕もそうなれるのかな?》

 最初何を言っているのかわからなかったが、少し考えて合点がいった。そう言えば俺も昔は後ろからの弾など見えなかった。いつの間にか敵の弾道が全て見えるようになっており、それが当たり前になっていたのだ。一体いつからだっただろうか。クリストフと居た頃はできて居なかったように思う。ならば『バルバロッサ』に居た頃か。そしてクリストフはまだ全ての敵の弾道が見える状態の世界には居ないのだ。他の『アスク』に乗っているパイロットたちも同様だろう。

「俺ができるんだから、できるようになりますよ。」

《戦闘中の私語は慎め。》

 スヴェン隊長からお叱りを受けてしまった。いつもの調子でクリストフと軽口を叩いてしまったな。隊長のお叱りはごもっともだ。

「申し訳ありません。」

 俺は下方からの弾を避けると、肉薄していた敵を切り裂いた。


 『クロウ』部隊の活躍で順調に、防御拠点の防衛隊である『ジャール・プチーツァ』を排除することができた。そして防衛拠点からの滞空砲火が始まった。防衛拠点との距離が近づいたことを意味する。

《スヴェン隊出るぞ。》

 スヴェン中尉の号令の元、防衛隊の排除に参加していなかった『アスク』が前面に出て行く。制空権はUS軍が把握した。スペース・トルーパー部隊に取り囲まれた防衛拠点は、むなしく対空砲火を続けるだけだ。いずれ弾切れになるだろうが、この後は月面基地の攻略もあるため悠長に待っても居られない。

 スヴェン隊は軽やかに対空砲火を避けながら、その手に持った携行型ミサイルポッドで攻撃を始めた。5機があらかじめ決められているであろう場所に的確に弾を撃ち込んでいく。

 基地攻撃用の武器の威力はすさまじく、5機の攻撃で相手の対空砲火は完全に沈黙した。恐らくミサイル発射口や対艦用の砲塔も破壊されているのだろう。これでこの防衛拠点は用を成さなくなった。

 US軍の侵攻方向から人民軍の月面基地までに艦船を攻撃でできる防衛拠点はあと4つある。スヴェン隊とカルロ隊に2つづつ割り当てられており、1つは現在カルロ隊とその護衛部隊によって攻略が進められている。

《防衛拠点の沈黙を確認。次の目標へ向かう。》

 スヴェン隊長から次の指示が下る。俺たちはスヴェン隊が割り当てられたもう1つの防衛拠点へ移動を開始した。

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