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星の海で会いましょう  作者: 慧桜 史一
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宙賊達の楽園編18

 長いようで短かった『トルトゥーガ』の滞在も最終日を迎えた。正直色々と事件があり過ぎたのだが、『バルバロッサ』としては無事今回の任務を終えた。

 まずは略奪品の資産化だ。これは想定通り完了した。資産については俺がカジノで当てたジャックポットと『トルトゥーガ』防衛戦でのフリードリヒ大尉の活躍により、大幅に増えている。

 2つ目は『アスク』の設計データをUS軍本部に届けることだ。アリサ大尉はフリードリヒ大尉との仲が良好になったことで、『アスク』の改良を頑張りすぎてしまい、初期の設計から到底比べ物にならない代物になってしまった。『コンスタンツ』からは一切外部との通信を行わないことで場所の秘匿化を行っている。軍本部との連絡は定期的に物品の補充を行う定期襲撃でしか行えず、即時性を欠いたやりとりしかできない。その為『トルトゥーガ』から通信を行い、即時性が高いやり取りを行っていたのだ。

 その結果アリサ大尉の改良案は採用され、改良を施した状態での量産が進むことになった。俺も本来はお役御免ではあるのだが、アリサ大尉がどうしても『ヘーニル』に手を入れたいらしく、3つ目は『ヘーニル』改造計画の承認とその改造に必要な資材の購入であった。計画は無事承認されたようで、工作室だけでは賄えない物品の購入をアリサ大尉から依頼されていた。

 これで『コンスタンツ』に戻った暁には『ヘーニル』の改造に着手する予定だ。

 これらの作業が完了し、『トルトゥーガ』防衛戦のおかげで少し滞在期間は延びたが、『コンスタンツ』へ帰る運びとなったのだ。


 『ロンバルディア』はリースマン商会の専用港を出発し、『トルトゥーガ』の資源衛星部分に設置されているカタパルトへ向かった。『トルトゥーガ』は<シリンダー>1本のみが回転しているため、その運動により本体は自転している。<サークル>は8本の<シリンダー>が回転しているが、対角線上に存在する<シリンダー>は逆回転しているため、それぞれの回転力を相殺し自転することはない。

 『トルトゥーガ』はそれを逆手に取り、自転することを最大限利用し行きたい航路に向いた瞬間にカタパルトを使うことで、大回りすることなく予定航路に乗ることができると言うメリットがある。


 『ロンバルディア』はカタパルトにより無事予定の航路に乗った。帰りも6日の旅程を予定している。そして襲撃は出発後1日が過ぎた頃に起こった。儲かった宙賊を別の宙賊が襲う。これは割りとありふれた光景らしい。

《さておいでなすったぞ。グレン準備はいいか?》

「はい。こっちも準備万端ですよ。」

 俺は『へーニル』にフリードリヒ大尉は『マウス』に搭乗している。俺たちは『ロンバルディア』を襲うと言う情報を『トルトゥーガ』で察知していた。諜報部が情報を提供してくれたのだ。相手はなんと3組織合同だそうだ。理由はスペース・トルーパーの数だ。各組織1機ずつ持っており、3機で俺たち2機を迎え撃つ計画だそうだ。


《じゃあ出るぞ。》

「了解。」

 『へーニル』と『マウス』は『ロンバルディア』の上部ハッチから飛び出した。

《どうだ?》

「良好です。」

 フリードリヒ大尉は俺の体調を尋ねてきた。俺は左腕を挙げて答える。特に動きに遅延はない。


 敵は前と左右から『ロンバルディア』を挟み込む作戦のようだ。俺たちは前方をクリアにすべく前を抑える船とスペース・トルーパーの排除に動いた。前を抑える船には3機のスペース・トルーパーが載っていた。こちらも相手も想定通りの動きをしている。

 敵スペース・トルーパーからの射撃が始まった。かなり遠い距離なので正直当たる気がしない。

 俺は距離を徐々に詰めて行く。一方敵も距離が近い俺を集中的に狙ってくる。俺を撃墜すれば3対1となり、より優位に立てるからだ。だが俺に弾は当たらない。前方の追われる側と言う圧倒的有利なポジションに居ながら俺を撃墜することができないことで相手にも焦りが見え始めた。

 そしてその焦りを見逃さず、相手の撃ち終わりの隙を狙って狙撃する。狙い通り相手の銃ごと右腕を吹き飛ばした。更に動揺する隙をフリードリヒ大尉は見逃さなかった。『マウス』の追撃は1機の左足を撃ち抜いた。

 左足を撃ち抜かれたスペース・トルーパーは反撃に出るが、機体バランスが崩れた状態の射撃など当たるはずもなく。更なる『マウス』の追撃で完全に沈黙した。


 残る1機は船を盾に逃げようとした。どうやらこの船とは違う組織のスペース・トルーパーのようだ。『へーニル』と『マウス』は船の推進装置を次々破壊した。これでこの船は無力化した。もし何もないところで停止すれば漂流していまうことになる。船は残ったスラスターを使いゆっくりと方向を変えた。その方向は『トルトゥーガ』方面だ。一番近い修理拠点は『トルトゥーガ』であるので賢明な判断だ。

 これで『ロンバルディア』の頭を抑える役目の船は居なくなった。逃げたスペース・トルーパーは『ロンバルディア』の左に居る船と合流するようだ。

「『マウス』。どうします?」

 俺はフリードリヒ大尉にコードネームで尋ねた。

《右側は減速をしている。スペース・トルーパーの回収をするんだろう。左側にだけ気をつけながら戻るぞ。》

「了解。」

 『ヘーニル』と『マウス』は踵を返して『ロンバルディア』と左側の船との間に入る。攻撃しようものなら即座に反撃するためだ。

 左側の船もスペース・トルーパーを回収すると、『トルトゥーガ』に戻る航路を取った。どうやら諦めてくれたらしい。命あっての物種だ。

 

 結局その後は特に問題もなく6日の旅程を無事終えて、俺たちは『コンスタンツ』に帰ってきた。

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