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星の海で会いましょう  作者: 慧桜 史一
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新型量産機編8

 今回の攻撃目標はユーラシア連邦だ。宙賊として偽装して活動する為、EUやMEと言った他の国の船も襲うが、今は戦争中となっているユーラシア連邦を主目的として襲う。USの船は襲った風を装い物資の補給をするため、これも目くらましとなる。

 他の宙賊は知らないが、『バルバロッサ』では狙う船の航路情報を得ており、交差地点に向かって電磁カタパルトで速度を出して追いつく戦略を使用している。『ロンバルディア』も輸送船に比べればかなり足の速い船なので遅延行為さえ上手く行けば、ほぼ追いつく事が可能だ。


 作戦を前に『ロンバルディア』内にある小さめのブリーフィングルームに作戦参加者が集まった。隊長であるフリードリヒ大尉が作戦を説明する。

「今回のターゲットはユーラシア連邦の商社の船だ。中身は軍事物資。護衛のスペース・トルーパーを2機積んでいるという情報だ。」

 前面スクリーンに輸送船の写真が出る。ユーラシア連邦国内の会社が建造している輸送船だ。護衛がいると言うことは余程儲かっている商社か、軍事物資輸送のために軍が護衛しているのだろう。

「軍事物資の内容の情報までは諜報部は得ていない。ただ護衛が付いていると言うことは軍事物資にかなりの価値があると思われる。」

 大尉がスクリーンを操作すると次に航路が表示された。標的の船はルナ・ラグランジュ・ポイント5から曲線を描きながら月に到達するコースを通る。『ロンバルディア』はその斜め左から航路を描き、お互いの航路が交差していた。交差点の位置はルナ・ラグランジュ・ポイントからおよそ1日半。月からも2日ほどの距離だ。

「この地点で交戦予定だ。今回は護衛が居るため、坊主と俺で敵スペース・トルーパーの排除を行う。敵の排除を確認後、タグボートで足を止める。」

 作戦の要点がスクリーンに表示される。

「足を止めたら『ロンバルディア』を横付けして白兵戦を仕掛ける。乗っ取れたら大成功。もし無理な場合は破壊する。何か質問は?」

 タグボートの発進タイミングやコールサインなどの確認が行われた。ちなみに俺のコールサインは『タロース』にして貰った。何らかの関係性や脈絡がない方が良いらしい。大尉は『マウス』で捻りも何もない。


 作戦開始時刻までまだあるので食堂でパワーバーを齧りながら、ヴァレリーとアリサ中尉とどうやったら話せるかの作戦を練っていた。色々と案を出すがヴァレリーに尽く却下された。アリサ中尉の壁は厚い。

「なんだ坊主。アリサと話せてないのか。」

 行き詰っていたところにフリードリヒ大尉がやってきた。俺はフリードリヒ大尉なら妙案が出てくるのではないかと思い尋ねた。

「そうなんですよ。話掛けてもヴァレリーにしか返ってこないんですよね。なんとかなりませんか?」

「なんともならんな。皆が通る通過儀礼だ。俺や前のプロジェクトのやつらもそうだったし、『コンスタンツ』基地のやつらもそうだった。」

 筋金入りの人見知りは俺以外にも相当数被害者が居ることがわかった。

「ま、時間が解決するさ。」

 軽く時間だけが解決方法であると返されてしまった。打つ手なしかよ。


 結局解決方法を見出せぬまま作戦時間前になったので『アスク』のコックピットにヴァレリーと乗り込んだ。『アスク』のコックピットは『へーニル』とほぼ同じだ。心持ち狭いように感じる。その分ヴァレリーとの距離が近くなった。うれしい反面コネクト中は意味が薄いので微妙な感じだ。


そして作戦時間がやってきた。コネクト状態になると『ロンバルディア』の上部ハッチが開き『マウス』と『アスク』を射出された。さらにバーニアを吹かして速度を上げる。相手のレーダーに映る頃には最高速に近い。今回は相手の進行方向の斜め前方からのアタックとなり、追いつくと言うよりは正面からぶつかることになる。


《おいでなすったぜ。青竜型だ。》

 護衛は人民軍の正式配備機の中でスピードに特化しているとされている機体だ。迎撃には向いている。

《『タロース』が先行しろ。》

「了解。」

 迎撃に出た護衛を向かえ撃つ。相手からの射撃があった。まだ距離があるので回避に問題はない。2射目も避ける。かなりの近距離だが、俺とヴァレリーならば可能だ。『アスク』は最新鋭機であり、俺たち用にカスタマイズされた機体でもある。避けたあとすかさずこちらから反撃の射撃を行う。狙い通り相手の胴体に命中し爆発した。胴体部分はコックピットもあるため、かなり頑丈に造られている。中のパイロットが存命なら反撃がありえる。2射目はすれ違い様に機体を反転させて、無傷な方の敵機のバーニアを狙う。こちらは相手が回避行動を取ったが、間に合わず太腿辺りに命中し爆発した。足が一本取れたようだ。

 速度を落とさないように円運動で戻ってきながら胴体に命中した機体の背後に回る。再び動き出そうとしていたが、弾が当たり爆発に巻き込まれたことでスピードは落ちてしまっている。もう一射撃行い、今度は外さずメインバーニアに弾が当たり破壊した。

 足が取れた方を見ると『マウス』が制圧し武装解除を行っていた。俺もそれに習ってもう一機の武装解除に向かった。


 その後はタグボートが『ロンバルディア』から発進し、輸送船の速度を落とさせる。『ロンバルディア』は輸送船の左舷に取り付きハッチを無理やりこじ開けた。戦闘員たちが乗り込んで船内を制圧しているはずだ。輸送船内の熱源反応はそれほど多くない。輸送船はさして抵抗もせず制圧された。宙賊相手では無理をすると命を落とす危険性がある。無抵抗なら一応ランチに乗せて放免されるので、軍人でもなければ抵抗しないのだろう。スペース・トルーパーのパイロット以外は商社の人間であると思われる。


 俺たちは青竜型のスペース・トルーパーからパイロットを下ろし拘束した。輸送船の乗組員と共にランチに放り込み放流する。輸送船はこのまま元々の進路でしばらく進むことになる。その間に船内の捜索を行う。探知に使われそうな物は軒並み潰しておく必要があるからだ。こうした作業を全て終えた上で進路を変更し『コンスタンツ』基地へ戻ることができるようになる。


 軍事物資はスペース・トルーパーの部品であった。主に『スルト』の物だった。その他には鹵獲した青竜型もあり、かなりの戦果と言えるだろう。

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