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星の海で会いましょう  作者: 慧桜 史一
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新型量産機編3

 司令室を辞した後、俺たちはフリードリヒ大尉に連れられて次の場所に来ていた。

「ここは?」

 広い空間の壁面にはびっしりと正方形が並んでいる。

「資材倉庫だ。」

 壁面の正方形は資材を入れる箱とのことだ。入り口以外の5方向それぞれに正方形はあり、どの方角の正方形も大きさが違う。大きさに合わせてどの場所に物を入れるか決まっているようだ。フリードリヒ大尉は入り口側の端末を操作すると、待機していた無人集配機が荷物を運んできた。

「『ロンバルディア』に乗るときの衣装だ。パイロット・スーツはこいつで普段着はこっちだ。基地に居るときは別に軍の支給品でいいぞ。」

 大尉から服と日用品を手渡された。US軍とばれないように変装するようだ。パイロット・スーツはEU軍のものだった。

「言葉は英語でいいんですか。」

「それは英語でいい。色んな国の奴らが居るところなら別に変じゃないだろ。」

 確かに人種が多岐に渡れば英語を使う場合は多い。

「こういう時は便利ですね。」

「だな。軍人言葉は別にどっちでもいいぞ。宙賊は軍人崩れも多いからな。」

 興味深い話ばかりだな。宙賊なんて家業では会わないに越したことがないから考えたことはなかったが、シリンダーに居るアウトローと同じようなものだと考えれば元軍人が居るのもうなずける。

「宙賊のことをあまり深く考えたことがなかったので新鮮ですね。」

「その辺りの情報はもう少し入れておいた方がいい。『ロンバルディア』で時間ができたらレクチャーしてやる。」

「お願いします。」

 宙賊になりきるには、まず宙賊を知らなければならないか・・・。深そうだ。


「部屋に帰って準備してこい。着替えはパイロット・スーツだ。お前のスペース・トルーパーも持っていく。準備が終わったら『ロンバルディア』の格納庫にこい。」

「わかりました。」

 俺たちはフリードリヒ大尉と別れて、一度自室に戻った。船旅に持っていく日用品と変装用の服を鞄に詰めて行く。おや?なんだこの女性用の服は?もしかしてヴァレリーのか。

「これヴァレリー用の服だと思うんだけど・・・。」

 ヴァレリーは俺から服を受け取ると広げてみせた。なんか露出が高いな。

「そのようですね。着替えます。」

 そう言うとヴァレリーは服を脱ぎ始めた。ヴァレリーは軍で支給されるシンプルな下着を着けていた。って暢気に女性の着替えを見ていていいのだろうか・・・?よくはないな・・・。俺は後ろを向いて自分のパイロット・スーツを着替え始めた。着替え終わって振り向くと、ヴァレリーも着替え終わっていた。少し大人っぽい感じで露出が高めだ。普段ヴァレリーが着ている服は軍服に近いのでかっちりした格好だ。しかしこれはこれでいいものだ。すごく似合っている。

「グレンは紳士ですね。別に見ててもよかったんですよ。」

 満面の笑顔で言われた。そうかー。見ててもよかったのかー。今度からそうしよう。

「しかし露出高めだな。」

「そうですね。でも私の場合、こう言う環境ですとセックスボットしか偽装できないんですよね。」

 確かにこんな見た目の家事手伝いガイノイドは平和な世界ならまだしも、宙賊の世界には居ないだろう。別の需要が高すぎる。

 準備ができたので『ロンバルディア』に向かった。桟橋から船に乗り込み格納庫に向かった。途中で会った人たちは男女の区別無くヴァレリーを振り返って見ていた。あの容姿であの格好じゃ仕方ないな。格納庫ではフリードリヒ大尉が積み込む品を確認していた。

「おう、来たか。」

 大尉はやってきた俺たちに気づいて、こちらにやってきた。ヴァレリーを上から下に舐めるように見て

「なかなかいいじゃないか。」

と褒めていた。

「大尉。俺は何をすればいいですか。」

「あそこからスペース・トルーパーを入れる。」

 大尉は天井を指差して言った。そこにハッチがあり、スペース・トルーパーはそこから出し入れするとのことだ。

「わかりました。スペース・トルーパーはどこですか?」

「工廠で組み立ててるはずだ。とりあえず動かせるようになっていたら持って来い。最終工程は移動しながらでもできる。」

「了解です。行こう。ヴァレリー。」

「はい。」

 俺たちは工廠へ向かった。工廠は港の端に大きな構造物だ。中に入ると『ヘーニル』はまだ組み立て中だった。白い塗装をされており、外装も『マウス』に似せてある。『バルバロッサ』のスペース・トルーパーは白という設定らしい。決めたのはフリードリヒ大尉とのことだ。組み立てている人に声を掛ける。

「すいません。もう動かせますか?」

「まだです。もう少し待ってください。」

「わかりました。」

 待てと言われても手持ち無沙汰だな。俺は少し工廠の中を見て回ることにした。工廠は基地全体の規模からすると大きいと思われる。10機ぐらい駐機できそうだ。更に奥には工廠用の倉庫があった。正方形が大きい。スペース・トルーパーのパーツや『ロンバルディア』の部品が入っているのかもしれない。

 こっそり端末を操作して、何が入っているかを検索してみた。思っていた通り、ほとんどがスペース・トルーパーのパーツだった。


「組み立て終わったよ。」

 パーツリストを眺めているだけで、大分時間を食ったようだ。組み立てが終わって整備員が呼びに来てくれた。整備員は珍しく女性だったようで、俺とヴァレリーを怪訝な目で見ている。この格好のヴァレリーを誰も戦術AIだとは思わないよな。

「ありがとうございます。行こうヴァレリー。」


 俺たちは『ヘーニル』のところへ移動した。中は以前と変わらない。俺はパイロット席に、ヴァレリーはいつものように俺と向かい合う形で座る。

「発進シークエンス開始します。」

 うーん。コネクトするまでヴァレリーは目の毒だな。コネクトしたら見えなくなるから戦闘中に気が散ったりしないのは助かるけど、それはそれで寂しい。

「オールクリアです。」

「OK。コネクト開始。」

「コネクトを開始します。」

 俺の視界はいつもの通り『ヘーニル』のものとなった。ゆっくり工廠を出て、『ロンバルディア』の上部ハッチまでたどり着いた。あとはぶつけないように格納庫へ降ろすだけだ。足元に軽い衝撃があり、無事着艦できたようだ。俺たちは乗降廊下にコックピットを寄せて、スペース・トルーパーから降りた。格納庫の下の方からフリードリヒ大尉の声が聞こえた。

「お前たちが最後の荷物だ。さっさとブリッジに行って席に着け。出発だ。」


 俺たちはブリッジに移動する。ブリッジの席は少ない。俺たちの座る場所はあるのだろうか。フリードリヒ大尉もブリッジにやってきた。キャプテンシートに座る。

「俺たちはどこに座れてばいいですか。」

「とりあえず適当に座っとけ。」

「わかりました。」

 ヴァレリーはレーダー係の席へ、俺はその隣の監視係の席に着いた。シートに座り固定具を付ける。

「じゃあカウントダウンを開始する。」

 こうして俺たちは新型量産機受領のための航宙に出発した。

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