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星の海で会いましょう  作者: 慧桜 史一
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士官学校附属高校編2

 大音量のサイレンの音で目が覚めた。急いで着替えて廊下に整列する。カイ軍曹に聞いていた通りに朝の点呼が始まった。他の生徒は皆制服を着ているので一人だけ浮いているが、まだ制服を支給されていないで仕方がない。

 点呼が終わると食堂で食事だ。配膳される列に並ぶ。献立はパンとスープとスクランブルエッグにソーセージだ。食事はパワーバーを覚悟していたがちゃんとしていた。席は自由らしく適当に隅っこに座った。ただでさえ目立つので出来るだけ目立たないようにするのだ。食事を摂ると意外にもソーセージは人工肉ではなかった。<ルナ>はマンホームに近いから食事が豪華なのかもしれない。食事が終われば身支度をして登校だが、俺は制服がないのでそのままの格好で登校となる。やはり目立つ。

 皆はそのまま校舎に入っていったが俺は手続きのため教員棟にやってきた。受付にある通信端末でティーチング・アシスタントを呼び出す。すぐに若い男がやってきた。

「話は聞いているよ。君が転校生だね。まずは校長に挨拶だ。」

「はい。」

 俺はティーチング・アシスタントに連れられて校長室にやってきた。

「失礼します。」

 ティーチング・アシスタントはノックの後に返事を待たず室内に入った。校長は机に向かい何か仕事をしているようだった。結構な歳に見えるが身体つきは鍛えられていて厚みがある。軍の制服に身を包み、その胸には勲章がいくつも付いていた。

「ようこそ。グレン君。宇宙軍士官学校附属高校は君を歓迎する。」

「はっ。ありがとうございます。」

 俺は昨日教わった通りの敬礼をした。校長は満足そうに頷き、

「パウル君。あとはよろしく頼むよ。」

とティーチング・アシスタントに伝えた。

「了解しました。」

 校長との面会は一瞬で終了した。そこから別室へ移動し制服や運動着、学習端末が渡された。学習端末を起動しカリキュラムを確認する。課題がぎっしりだ。さらに実習についてはグレード9に交じってやるようだ。まぁ仕方がない。単位互換できるものは取得済みになっている。パイロット候補生のはずだがスペース・トルーパーのシミュレーションは免除となっていた。

「追いつくのは大変だと思うけど、この通りにやれば追いつくようにできているから。」

 ティーチング・アシスタントはにこやかに言った。こっちはげっそりだよ。

「成績不振だと退学だから頑張ってね。」

 厳しすぎる…。いっそ1つ下の学年からやらして貰えないだろうか。


 とりあえず言われた通りにやるしかなく、課題と実習をひたすら続けて6日が経った。今日は休みだが研究所の準備が終わったとのことなので研究所へ呼ばれている。

 俺は管理人に外出申請を出し、エレカーを使い第7研究所へと移動した。第7研究所は寮から10分ぐらいだ。停車場に着くとヴァレリーが迎えてくれた。

「ヴァレリー久しぶり。」

「お久しぶりです。あまり元気がありませんね。」

「学校の課題に押しつぶされそうだよ。」

「休日まで申し訳ありません。」

「本当は寮で課題をやりたいけど、こっちの方が本業だからね。」

 俺たちは研究所内に入り、ヴァレリーの案内で部屋にやってきた。

「失礼します。」

 ヴァレリーはノックすると室内に入った。そこには30代前半の灰色の髪の色をした男と20代の女性の2人が居た。

「こちらがグレンで今回のプロジェクトの被験体です。」

「よろしく。私はプロジェクトリーダーのテオだ。こっちの女性は助手のエルマだ。私は博士とでも呼んでくれ。」

「よろしくお願いします。」

 俺はテオ博士とエルマさんと握手をした。

「さて、さっそくだが君自身の今の状態を知りたいのであちらに立ってくれないか。」

 少し高くなったところがありその上に立つ。エルマさんがコンソールで何かしらの操作をしている。俺はぼーっと立ってるだけだ。

《スキャンが完了しました。》

「もういいですよ。」

 俺は高くなっているところから降りた。どうやら俺をスキャンしていたようだ。テオ博士とエルマさんは手元の端末で数値等を確認している。テオ博士はこちらを見て

「実に素晴らしい素材だね。君は。」

とよくわからない褒め方をした。

「あ、ありがとうございます。」

 一応礼を言っておく。

 

「では次はシミュレーションだ。」

 部屋の隅にはコックピットが設置されていた。ただし席はあるが壁はない。頭にヘッドセット状のセンサーを付けられて着席する。席の位置を調整し、固定具で身体を固定する。目の前の席にヴァレリーが座った。操縦桿をしっかり握る。

「ではシミュレーションを開始します。シミュレーション・コネクト開始。」

 俺の視界は宇宙空間になった。

「天頂4時の方向から敵機。機数2.」

「了解。応戦する。」

 俺はそちらの方向に機体を向けると、7割程度のスピードで敵機に接近した。敵機は2機とも撃ってきたが、余裕で回避行動を取りながら徐々に距離を詰めていく。牽制射撃のつもりだったが3発目が当たり、1機が沈黙した。

 俺は更にフェイントを織り交ぜながら敵機に肉薄していく。十分な近距離でプラズマ・ブレードを抜き袈裟切りにする。

《敵機撃破。シミュレーションを終了します。》

 アナウンスが入りコネクトが解除された。見えている風景が研究室の中に戻った。

「この程度じゃ相手にならないか。素晴らしい動きだ。では次の準備をするからその間に調整をしておいてくれ。」

「わかりました。」

 ヴァレリーはそう返事をすると俺の手を握った。

「私の目を見てください。」

 またナノマシンに命令を出すのだろうか。俺はヴァレリーの綺麗な顔を見ながらそう考えた。


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