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星の海で会いましょう  作者: 慧桜 史一
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進路編2

 俺の心は半ば決まっていたが、ヴァレリーの冷静な意見を聞いてみたくなった。

「ヴァレリーは俺が軍人になるのはどう思う。」

「はい。待遇としては破格かと思います。」

 ヴァレリーはそこで一息つくと、しかしと続けた。

「巻き込んでしまった私が言うのも躊躇われますが、副社長はグレンに会社の跡取りとして期待を寄せられていました。グレンもそうなるように努力していると聞いています。」

 養母さんは仕事中に何の話をしていたんだ。

「私はグレンが無理して軍人となる必要はないと思います。」

 そうか。ヴァレリーもそれがいいと言うのならやはり無理に軍人になる必要はないな。とそう思った時だった。

「HTX-02。貴方はそれでいいの?」

 キム先生はなぜか怒ったような雰囲気だった。。

「私に決定権はありません。求められた意見に対して提案するだけです。」

「私はフェアでないことは嫌いなの知ってるでしょ。貴方は彼を誘導したでしょ。」

 ん?知ってる?ヴァレリーとキム先生は知り合い?

「なんのことでしょう?私はグレンの環境を加味して提案をしただけです。それとも軍の利益になる方が良かったですか?それこそフェアではありませんね。」

「軍の利益にならないことは別にいいわ。でも自己保存は認められているはずよ。普通そっちに話を持っていくはずでしょ。」

 キム先生が少し寂しそうに見えた。

「それは無用な気遣いです。グレンとは関係ありません。そもそも回収すると言う事は続ける意思が軍にあると思います。」

 何の話をしてるんだろう?よくわからない。

「あのー、話が見えないんですけど。」

「グレンがわからないならそれで知らなくていいです。」

 何故かヴァレリーに怒られた。ちっとも良くない。キム先生は目を閉じて黙っている。なんでギスギスした雰囲気になっているんだ?グレック先生は何か考えていたようだが急に納得したようにうんうんと頷きだした。

「グレック先生。何かわかったなら説明して下さいよ。」

 グレック先生がちらりとキム先生を見るとキム先生は片目を開けて要らない事を言わないようにと圧を掛けた。

「駄目そうだから正攻法で説得しよう。グレン君は家族が大切だろ。」

「はい。」

 俺は大きく頷いた。

「君は身柄を人民軍に狙われる可能性がある。家族についても同様だ。」

「えぇ!?」

 それは困るぞ。家族に類が及ぶのは避けたい。グレック先生は指を立てて続けた。

「今は君がパイロットであることはバレていない可能性が高い。でも高校の実習であんな派手な成績を残せばクラスメイトから辿れてしまうだろう。」

「そんなものなんですか?」

「諜報部の意見としては可能だね。遅かれ早かれバレる。」

「なんとかならないですか?」

「方法としては君の重要度を使って准将に吹っかけるしかないな。協力するから家族の安全を保障してくれって。」

 うーん。これは選択肢がなくなった気がする。考え込んだのを見てグレック先生が気分転換に食事に行くことを提案した。確かにお腹が減った。俺たちはグレック先生の引率で食堂に向かった。キム先生はパイロットスーツを着替えるからと途中で別れた。食堂に着くと報道番組がやっていた。宇宙港襲撃事件の人民軍声明が発表されたようだ。言い分としては匿われたテロリストに対して攻撃しただけであると出ていた。俺はテロリスト扱いか。

「無茶苦茶な論理だな。」

 グレック先生は番組を一瞥しつつパワーバーベンダーに近づいていった。軍の食事はパワーバーなのか。理には適ってるが味気ないな。しかし見たことがないフレーバーがあるな。これにしよう。

 報道番組では第二宇宙港の破損状況を映していた。かなり激しく破損しており修理には相当掛かりそうだ。行方不明者1名とけが人が6名となっており巻き込まれた人がいるようだ。俺のせいかと思うと責任を感じる。ふと画面を見ると行方不明者の名前は俺だった。

「グレック先生。俺行方不明みたいなんですけど、どうしたらいいですか。」

 先生も慌てて

「ちょっと待て、これから対処する。」

と通信端末を出して対応を始めた。しばらくして

「グレン君は救助されたが検査入院することになったという話で落ち着いた。」

 生きてる扱いにはして貰えたようだ。

「家族が心配してると思うんで、家に連絡したいんですけど。」

「わかった。ちょっと待て。」

 グレック先生はまた通信端末を出して連絡を始めた。俺はパワーバーを齧りながら報道番組を見ていた。しばらくすると行方不明者は見つかったことになり、けが人が7名に増えた。軍凄いなー。

「グレック軍曹はどうしたの?」

 キム先生が帰ってきた。軍の制服だ。ヴァレリーが前に着ていたものに似ている。

「俺が行方不明者扱いになってたんで対応してくれて、家族に連絡をつけられるように段取りをしてくれてます。」

「そう。」

 納得したのかキム先生もパワーバーを食べ始めた。手で千切って食べるので上品に見える。うちの船員にそんな食べ方をする人は居ない。

「よし。段取りがついたぞ。医務室へ移動だ。」

 グレック先生がなんとかしてくれたらしいが医務室とは?

「なんで医務室なんですか?」

「君は入院することになるからだ。」

 さっき言っていたシナリオ通り検査入院なので病院なのか。俺はグレック先生に連れられて医務室へ行った。偽装のため頭に医療用キャップを被らされ通信してよいことになった。俺は養母さんに連絡した。

《グレン! 無事だったのね!》

「ちょっと怪我をしたけど大丈夫だよ。」

 通信端末の向こうの養母さんはほっとした顔をしている。ずいぶん心配を掛けてしまったようだ。

「今日は検査入院になるって。」

《どこの病院なの? 今から行くわ。》

「今は軍の病院なんだ。一般人は入れないって」

《そんな・・・。》

 俺は医者に通信端末を渡した。医者は本物の軍医で打合せ通りの説明をしてくれて養母さんを安心させてくれた。再び通信端末を受け取って

「養母さん、心配掛けてごめんね。でも大丈夫だから安心して。」

《わかったわ。グレン。帰る時は迎えに行くわ。》

「わかったよ。また連絡するよ。」

 そう言って通信を切った。なんとか誤魔化すことが出来たようだ。グレック先生から今後のことについて今日一晩考えて、明日結論を聞かせて欲しいと言われた。俺は基地に泊まることになり、グレック先生に部屋まで案内された。

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