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星の海で会いましょう  作者: 慧桜 史一
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襲撃編3

 US軍の基地は<サークル>の第二宇宙港と反対側、円の9時方向にある。作りは他の宇宙港とさほど変わらず髭のように伸びた通路の端に船庫があり、そこが改造されて軍基地となっている。防衛隊に囲まれて小型艇と『クロウ1』、そして俺たちは基地内に入っていった。

 小型艇は奥の方まで入り桟橋と連結した。『クロウ1』と俺たちスペース・トルーパーは少し手前にあるスペース・トルーパー用の乗降口の前に移動した。どんな仕組みか見たことがない俺は横に居る『クロウ1』を観察した。

 『クロウ1』が乗降口思われるところにコックピットを寄せると壁から筒状の物が伸びてきてコックピットとぴったりくっついた。

「なるほど。あれが通路になるのか。」

「その通りです。」

 俺は『クロウ1』に倣って乗降口にコックピットを寄せた。通路が伸びてきてコックピットの前に接合した。

「コネクト解除。」

「コネクトを解除しました。」

 コックピット内に意識が向くと通路に空気を入れている音がしていた。

「空気の充填が終わりました。コックピットを開けます。」

 コックピットが開き通路の向こう側が見えた。何人かの人が居る。俺とヴァレリーは通路を通り基地内の廊下に出た。廊下には意外な人が立って居た。

「グレック先生?」

「やぁ、グレン君奇遇だね。」

 グレックは、にやりとしながらとぼけた態度で話掛けてきた。

「嘘を吐いてすまなかったね。退役軍人と言っていたが現役なんだ。」

 びっくりしすぎて言葉が出てこない。

「そうそう、あちらにも知り合いが居るよ。」

 指差した方にはパイロットスーツを着たキム先生が居た。

「は?」

 完全に理解が追いつかない。キム先生は『クロウ1』の乗降口の前に居る。という事は凄腕パイロットはキム先生だったのだ。俺はグレック先生とキム先生を交互に何度も見た。

「さぁ、いつまでも呆けてないで。こっちだ。」

 グレック先生とキム先生は俺たちを先導して歩き始めた。廊下の端には虹彩認証の扉があった。グレック先生が扉を開けて更に先に進んでいく。俺たちは無言で先生のあとに続いた。


 しばらく廊下を歩いたところでグレック先生は立ち止まりドアを開けた。

「グレン君はここだ。HTX-02は司令室へ出頭せよ。」

「了解致しました。」

 ヴァレリーはそのまま廊下を進んで行った。ヴァレリーが行ってしまったのは予想外だったが、俺の頭はまだショック状態から抜けていなかったらしい。特にリアクションが起こせなかった。グレック先生を見ると顎で部屋の中へ入るように促してきた。仕方なしに俺は部屋に入った。部屋の中は机と椅子がある会議室のような場所だった。

「椅子に掛けてくれ。」

 俺は促されるがままに席に着いた。向かいにグレック先生とキム先生が座る。軍の基地だと言うのに学校の面談の様相だ。

「どうしたんだい?グレン?」

「いや、立て続けに理解の範疇を超えることが起こったので・・・。」

「混乱するのも無理ないか。単刀直入に言うと僕たちは君を監視していたんだよ。」

 本当に今日は驚くことばかりだ。

「いつからですか?」

「僕たちは学校初日からだ。学校が始まる3日前にいきなり学校に教員として潜りこまされてこっちもビックリだよ。」

「軍は貴方たちが『ヘーニル』及びHTX-02を拾得した時からマークを始めたの。」

 キム先生が説明を補足してくれた。

「『ヘーニル』がスペース・トルーパーでHTX-02が戦術AIガイノイドのことですか?」

「そうよ。」

「我々は部署が違うので詳しい話しは知らないが、軍が『へーニル』を回収する直前に君達に回収されてしまったようだよ。」

「なるほど。」

「渡りに船となってくれればよかったんだが、航宙法で君達の所有となってしまったし、どのように処分するかがわからなかったからね。」

「軍の買取価格が酷いのは私たちも把握しています。ブラックマーケットに流されても困るし、他国に売られても困る代物なのよ。あれは。」

 どうやらヴァレリーと『タロース』こと『ヘーニル』も相当の代物のようだ。

「それで俺はどうなるんですか。」

「さっきも話したが軍としては君を雇用する意向だ。」

「なんで俺なんですか? どこにでもいる高校生ですよ。」

「僕はそうは思わないがね。君は被験体だそうだ。」

「被験体? 何かの実験対象だと言うことですか?」

「そのようだ。正直詳しい話は僕も知らされていない。オーダーとしては『貴重な被験体であるので監視しろ』だ。」

 実験の詳細は知らされてないらしいがヴァレリーが関係していることは間違いないだろう。アンシュの予想が当たったと言うことだ。

「あとは『実験の協力を取り付けること』ね。私たちが貴方を熱心に勧誘しているのは軍の意向よ。」

 実験の被験体として有望なので協力しろってことか。なんの実験かは気になるが先生たちは詳細を知らないらしい。

「実験の内容を聞かないことには何とも言えませんね。」

「そりゃそうだろうね。」

「詳細を話せる人間を連れてくるわ。」

 そう言うとキム先生は通信端末を使い誰かに連絡をした。5分ほど待っただろうか。扉が開き入ってきたのは中年の厳めしい男性だった。後ろにはヴァレリーも居た。男性は軍の制服をきっちり着こなしており、勲章や階級章といったものがたくさん付いていた。グレック先生とキム先生が直立し敬礼をしている。軍の偉いさんか。

「少尉と上級曹長は外してくれ。」

「はっ!」

 二人は敬礼を解くと部屋から出て行った。男性は席に座り、その後ろにはヴァレリーが控えていた。

「ではグレン君。少し私との会話に付き合って貰うよ。」

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