第21章 激動の始まり3
今日が休日なのもあって、勢いで書いてるので今日は更新ペース速いです。
何話でペース落ちるか?たぶん明日からもうペース落ちるどころか数日空くかも
会議と言うか、報告開始です。幼女無双(役職)です
あ、あと激動の始まり2に挿絵追加しました
24時間経たずにブックマーク25件とかありがとうございますっ(ドゲザァ
――30分後
「ただいま戻りました。
おや、皆々様まだ会議を始めていなかったのですか?」
扉を開けて戻ってきた宰相は開口一番そう口にした。
ここにいる誰もが思っただろう。
――お前がいないから始められなかったんだよ!
否、アリスだけは然もありなんとでも言いたげな表情で笑っているが。
「それにしても、あなたが宰相なんてしているのを見るのは不思議な気分になるわね。これも50年の年月が生み出した奇跡なのかしらね?
ねぇ、裏町の支配者ドン・アルバート?」
「昔のことですよ。グリムス卿」
宰相アルバート、かつて王都のスラムを含めた裏社会を総ていた男だった。遊び人ロマを名乗っていたオーウェンと友誼を結び、現在王を補佐する宰相に納まっている。
そして今現在でも裏への影響力は計り知れない。
「よぉし、それじゃ会議を始めるとしようか!」
アルバートが王の左後ろ、会議における宰相の定位置に付くとオーウェンが開始を宣言した。
「じゃあ、遅れて来た私が最初に報告させてもらおうかしら。
アリス・ドラクレア・グリムス辺境伯よ。
忌々しいことに『冒険王物語』のおかげで、我が領地をはじめ、周辺の領地にも多くの冒険者がやってきているわ。
前回の会議から周辺と合わせて更に74人増、Sランク昇級者は1人いたわ」
アリスが席から立ち上がり、自身の領地と周辺領地の報告を始める。
グリムス領はアリス就任以前から極まった冒険者達が行き着く魔境として存在していた。
だが、なにもいきなりグリムス領に行くわけではない。アーデンベルグ領やグリムス領周辺の領地である程度の鍛錬を積んでからグリムス領に来るのが定番だった。
その鍛錬段階で諦める者は全体の4割、グリムス領に入って諦める者が2割、残った4割の冒険者がグリムス領で生活することになる。
そして残った冒険者達の中から、命がけの日々の中で更に極まった者が現れることがある。
それがSランク冒険者と呼ばれる者達だ。
冒険者とは放っておけば荒くれ者と変わらない連中である。それ故に遥か昔には彼らの存在は貴族のみならず民にとっても悩みの種だった。
そんな中当時のアトラクシア国王が冒険者の武力に目をつけ、冒険者に報酬と規律を与えることで王国の力としようと考えた。
そうして作られたのが冒険者ギルドだ。冒険者ギルドの仕事は冒険者の監視、依頼の仲介やモンスターから取れた素材の買い取り、国と冒険者の仲介、各地の気候やモンスターの記録など多岐に亘る。
そのギルドが冒険者に対しわかりやすい勲章として与えるのが、冒険者ランクなのだ。
どれだけの困難に立ち向かったか、どれだけの人々に希望を与えたか、そういったものが考慮され与えられる。
登録したての冒険者はその身を危険な世界に投げ出した者として、Eランクが与えられ、そこから順番にAランクまで上がる。
Aランクはいわば極まった冒険者の称号なのだが、それはあくまで国内に限った話であり、半分国外に片足を突っ込んでいるグリムス領は除外される。
そんなAランク達がグリムス領のような『第1級危険指定領域』で更に極まることで、Sランクになることができる。
余談ではあるがアリスはグリムス領が辺境伯領である原因となっている、領地に隣接する『特級禁忌指定領域』と呼ばれる『グリムスの森』での単独行軍をこなすことから、EXランク冒険者などという称号を持っている。
グリムスの森のモンスターは領内のモンスターの最低でも1.5倍は強いと言われている。
アリスは報告を終えるがそのまま着席することなく、一つ軽く息を吸うともう一度口を開いた。
「アリス・ドラクレア・グリムス王宮魔導師長よ。
現在開発中の魔道具及び、グリムス領で試験中の結界魔法について報告するわ」
アリスは辺境伯であると同時に王宮魔導師長という肩書きも持っている。
王宮魔導師とは王宮内に存在する魔法研究機関『双蛇の杖』に所属する優秀な魔導師のことであり、彼らは日々魔法や擬似的に魔法を再現する道具である魔道具の研究に勤しんでいる。
アリスはそこの長であり、それはすなわち国内最強の魔導師と認識されていることに他ならない。
この会議で報告の義務を持つのは、王国を10分割した10個の地域、その筆頭領主と王宮魔導師長、王宮総騎士団長――国王の後ろに控える宰相とは違う、もう一人の男性――の12人なのだ。
筆頭領主は領地の重要性から選ばれ、王によって任命される。
かつてのグリムス領のように重要な領地であるにも関わらず、地域のどの領主も統治していない状況ではその地域の筆頭領主は不在と言う扱いになる。
ただし王都を含む地域では筆頭貴族の基準は国王との関係性となっている。
現在の王都周辺地域筆頭領主であるステファニー・リュグナード公爵は伯母であるエレノーラが王妃となったことで、母が公爵を叙勲され、それを受け継ぐ形で公爵となっている。
ステファニー自身も非常に優秀ではあるのだが、王妃の親族ということで王都周辺地域筆頭貴族となっているのだ。
異国・異種族との和平と貿易の要となっているダムズ辺境伯、キュウテン辺境伯、ウッドレア辺境伯。
『第2級危険指定領域』を治めるアーデンベルグ伯爵。
純粋に貴族達に顔が利き、信頼も厚いヴァーデルン侯爵、エインズワース侯爵。
国内最大軍事力を持ち、アリスにしか興味がないサブネスト伯爵。
アリスが最も大切にしており、更にある別の可能性から重要視される領地を持つストムロック伯爵。
そして溢れ出せば国が滅ぶとまで言われているグリムスの森を押さえ込める唯一の存在、グリムス辺境伯。
それが現在の議会を構成するメンバーなのだ。
議会の選出には他の貴族から不満が出そうではあるのだが、二人の侯爵と辺境伯4人には納得せざる得ず、アーデンベルグ領を代わりに治められる人材もなく、理外の存在であるアリスに喧嘩を売るような真似もできないので、結局不満は飲み込むしかない状況なのだ。
「まずは魔道具の研究成果から発表するわね。
結果から言って、魔導飛行船の実用化の目処が立ったわ。
材料に森のモンスターの魔石やら、素材やらを使うから量産化は難しいけどね」
魔石、それは何故かモンスターの体内にある物体であること以外ほとんど何もわかっていない物である。
様々な魔道具や特殊な効果を持つ武具を作るのに必要になり、モンスターごとに特徴や力の大小があり、利用方法だけは辛うじてわかっているといった代物なのだ。
これはAWOにも存在しており、アイテム作成などによく用いられていた。
「錬金術でどうにかならんもんかのぅ。
量産できればこの老骨ももっと頻繁に王都にこれるんじゃが……」
ドムスが腰を叩きながらアリスに問いかける。
アリスはAWO時代からずっと錬金術師というアイテム作成に特化した補助ジョブを付けており、それはこの世界に来てからも有効利用している。その錬金術師のスキルの一つが魔道具生成である。
だが、錬金術とは万能ではないのだ。
「無理ね。ある程度の強度なら錬金術で上昇させられるけど、巨大な船で空を飛ぶなんてのはちょっと強度上げただけでどうにかなるもんじゃないもの。
防御系の魔法を船全体にかければ今度は魔力の問題が出てくるし、魔石の魔力だけじゃ1時間飛ばすのにズゥ30匹分の魔石が必要なのよ。ズゥクラスの年間討伐量は200に満たない状況なのだから、結局本体をそのまま頑丈にするのが一番現実的なのよ」
それを聞いてドムスは残念そうに肩を落とした。老人には馬車の旅は堪えるのだろう。
ズゥはグリムス領内でも最上位に位置する強さのモンスターであり、Sランクパーティーがそれなりに準備をして一匹狩るのが普通なのだ。
そのレベルのモンスターを狩れるパーティー自体が少ないのに、年間200匹近く狩られているのには理由がある。
アリスを除いてのグリムス領最高戦力、アリスの従者が定期的に大繁殖をさせないように間引きを行っているのだ。
「それじゃ、次に結界魔法について報告するわ。
これは今まで説明した通り、土地そのものに錬金術による魔道具作成を行うことでモンスターを防ぐ障壁を発動しているわ。
これはモンスターの体内にある時の魔石が特殊な魔力、瘴気とでも呼べるものを発しているから、それを基準に判別しているわ。
無害なモンスターはこれを発してないから結界を通過できるけど、無害だからそもそも問題にならないわね。
この瘴気はモンスターの攻撃一つ一つにも内包されているのが特徴ね。
これも魔石と一緒でモンスターごとに大小様々なのよ。
結界維持の魔力は今のところ、領内で取れたモンスターの魔石を冒険者から買い取る形でなんとか補えているわ。
ただこれはグリムスの森の封印、町を守る為の第1級危険指定領域のモンスターに対抗するための強度、それらを実現した上での状況だから他の領地では事情が変わってくるでしょうね。
手に入る魔石の質も、必要になる結界の質もね」
ここで会議参加者が全員そろって頭の中に考えを巡らせる。
彼らは貴族であり、貴族であることに誇りを持っている。誇りを持っているからこそ、民を守るということに関してどこまでも真摯なのだ。
貴族として国を豊かにし、民を守ることを義務と考え、たとえ悪ふざけの最中であっても頭のどこかに国と民を思う考えは残されているのだ。
そんな彼らにとって結界魔法の改良と報告は何よりも重要な事項の一つだ。誰もがゆくゆくは全ての町に、できることなら村にもこの結界魔法を設置したいとずっと考えている。
「現状の問題はこの結界魔法を使えるのが私しかいないことと、周辺モンスターの強さに応じて必要になる結界の強度を考えて細かく調整しないと、結界が弱かったり、逆に無駄に魔力喰ったりするってことね。この調整も私にしかできないよね……。
錬金術師が育ってくれればもっと楽にはなるんでしょうけど」
淡々と結界魔法の欠点を挙げるアリス。
現状の結界魔法はアリスへの負担の大小以上に時間がかかりすぎるのだ。
魔道具の製作には魔石の他にも材料や魔法陣など様々な準備が必要になる。それは結界魔法も例外ではなく、グリムス領に結界を張るときには、結界魔法の開発時間を抜きにしても発動準備と調整で6年かかっている。
結界魔法は強すぎれば領地の経済に負担をかけ、弱すぎればそもそも意味がない。
それ故に調整に妥協はできないと議会の面々は考える。
「そして、もう一つの問題は、歴史書の中の存在『第0級接触禁忌災害』が私の考えている通りの存在なら、結界魔法はそれらには一切役に立たないわ。
全力で張っても討伐前に粉砕されてあとは地獄絵図よ。
いえ、それ以前に私と従者だけじゃ、手も足も出ないし、Sランク冒険者でも何もできず殺されるのがオチよ」
そう言ったアリスの表情は一瞬だけ曇る。
『第0級接触禁忌存在』、歴史書の中で語られる、140年前に隣国の一つを7日と立たずに滅ぼした存在である。
武器も魔法も効かず、最後には自壊して消滅したとされる、この世界で最大の恐怖である。
「奴が相手では仕方あるまい。あれは人の手でどうにかできる存在ではない」
「あればっかりはどうにもなりんせんよ」
「あれはまさしく天災、触れるべからず。ただ過ぎ去るのを待つしかないでしょうね」
それを知るのが当時を生きていたダリル、アマツ、エメラドである。ダリルに至っては遠目にその脅威を目にしてすらいる。
だが、アリスはそれを倒せないとは考えていない。歴史書に記された話とダリルの証言から『第0級接触禁忌災害』の正体に心当たりがあった。
『大規模レイドボス』
AWOでは本来戦闘は最大6人のパーティー単体で行う。しかし、レイドボスといわれる存在だけは複数のパーティーでの戦闘が必須となるのだ。
レイドボスというのは単純にそれだけ強力な存在であり、また各々厄介な性質を持ち合わせていた。
レイドボスが存在するエリアに突入できるパーティーの最大数は10個。つまり最大60人での戦闘になるのだ。
もし少し準備が足りなければ、もしスキルを間違えれば、小さなミス一つで全滅に繋がりかねない敵、それがレイドボスなのだ。
実際隣国を滅ぼした存在は不思議な膜に覆われていて、一切の攻撃を受け付けなかったと聞いていた。そして全ての攻撃が広範囲に及び、ドラゴンのような頭部からは長時間大地を燃やし続けるブレスを吐いたという。
始原竜『アーカーシャ』
それがアリスが予想した隣国を滅ぼした天災の名前だ。
このボスはダメージを与えるためには特殊な行程を踏まねばならない。聖属性と呼ばれる属性の魔法を一定ダメージ量当てることでバリアの一枚目を砕くことができ、二枚目を砕くにには闇属性の魔法を一定ダメージ量当てなければならなかった。
そうしてようやくバリアを砕くことができるのだが、このバリアは一定時間で復活し、バリアが消失した直後に20体ほどの高レベルザコモンスターを召還、バリア消失中は定期的に周囲にオーラによる攻撃をばら撒くのだ。
そしてこのモンスターのLVは350。AWOのプレイヤー最大LVが250だったのに対して高すぎる数値なのだ。ゲーム中でも最強クラスのボスとして君臨していた。
そしてこの世界の存在は実力がレベル通りではないことが多々あるが、それでも実際のLVはSランク冒険者でも150に届かない。技術や経験、覚悟の違いなどでLV以上の実力が出せるとはいえ限界はある。
アリスは大規模レイドに参加し、これを数度討伐した経験がある。そして討伐したレイドボスはこれだけではない。だからわかるのだ。
「結界で防げなければ、この国に出現した地点で詰みよ」
アリスの表情が何かに耐えるようにゆがみ始める。
本来レイドボスはレイドボスエリアから出ないが、この世界は現実であり、エリアなどというものは存在しない。
そもそもかつて始原竜が顕現したのは人間の暮らす土地だった。地形も何もかもAWOとは違う、この現実世界にはレイドボスの常識もAWOでの出現条件、場所の知識なんてどれだけ通用するかわからない。
だから備えなければならないのだ。
「奴らの倒し方はこの頭の中にしっかり残っているわ。
話を聞く限りまったく当てにならないわけじゃない。倒すことが不可能な存在ではない。
それでも私くらいの存在が、いえそれ以上の存在も含めて60人必要なのよ。
それでようやくスタート地点。準備のために無数のアイテムを用意して、事前に地形の把握をして、それでようやく討伐可能なの。
今は何もかも足りないけど、この国が蹂躙される、それだけは絶対に認められない。
だからせめて守れる準備だけはしなくちゃいけないのよ」
アリスが苦虫を噛み潰したような表情でこの国への思いを語る。
それがこの世界に生きる臆病な少女の願いだった。
誰もそれを笑う者はここにはいない。誰もが同じ気持ちだから。
140年前を生きていた者達ですら、否、だからこそその思いに強く交感を抱く。
ただ、この議会の中で二人、違う表情をしている男がいた。
オーウェンとウィリアムだ。
彼らは一様に悲痛な表情でアリスを見つめている。
彼女を良く知るが故に、彼女を強く思うが故に、今の必死なアリスの姿に胸を締め付けられる。
会議場が沈黙に包まれる。
そして……
「お前クラスの存在が60人いれば対抗できんだな?」
ウィリアムが口を開いた。
本編3話目でようやく話が進みます。
ウィリアム、お前は一体何を企んでいるんだ(棒読み)