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ヴァンパイア辺境伯 ~臆病な女神様~  作者: お盆凡次郎
第25章 グリムス領の日常
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第25章 グリムス領の日常1

花粉やばい

いつもブクマ、評価ありがとうございます

今回から25章開始です


 カイトがグリムス領に来てから10日程経っていた。最初はアリスの屋敷に部屋を借りていたが、現在は元Aランク冒険者の経営する宿屋に部屋を借りている。LDはアリスの趣味に付き合う事情もあって、屋敷の隣に建設された機械人用の工房に間借りしている。

 カイトがこの領地に来て一番驚いたのは、屋敷周辺に建てられた数々の工房の存在だった。

 魔法研究をする研究塔。ここではAWOには存在しなかった数々の魔法を見せられた。どれもアリスが独力で魔法陣を解析して生み出したものだったのも驚きだが、その技術でエアコンや冷蔵機やIHコンロのような物、果ては広範囲の任意地点に魔力を送る電線や発電所のようなものまで作られていた。それによってアリスの屋敷の快適さは現代日本に劣らないものになっている。

 次は最も広く土地を使っている新技術研究所。研究塔で得られた技術などを用いて様々なものを開発している場所だ。中には試作飛行船や試作自動車など、巨大な発明品が数多く存在した。機械人(馬)もここで作られた。巨大ロボの頭部のようなものもあったが、カイトはそれを見てないことにした。

 次は通称実験場。開発した魔法や素材の様々な実験を行う場所であり、研究塔と研究所の中間に存在している。小規模な対物理、対魔法結界魔法が使われている。

 そして最後に一番新しい施設『機械人工房オートマトン・ファクトリー』。ここでは人型機械人のパーツ生産などが行われている。作られたパーツは領内にいる転移者の機械人の整備に使われている。更に工房内では機械人達や、そういった技術に興味を持った冒険者に対してアリスかイカリが技術指導も行っている。

 アリスが言うにはこれらの施設はいずれ自分の手を離れて、この世界の者達によって運用されるようになる予定らしい。

 

「今日も快晴、絶好の仕事日和だなぁ」


 カイトはそんなことを口にしながら、部屋の窓を開けて空を見上げる。グリムス領の仕事の大半はモンスター討伐と素材収集だ。カイトも例に漏れず毎日これらの仕事に従事している。当人としては訓練にもなって一石二鳥だが。

 アイテムボックスから鎧一式を取り出して慣れた手つきで装着していく。鎧を装着し終えると、軽く動いて緩みがないかをチェックする。緩みがないことを確認すると、剣を腰にかけ、盾を持って部屋を出て行く。

 宿屋ではあるが、元冒険者が経営しているためか宿のみで食堂は存在しない。なので、カイトは朝食を取るべく、屋台道と呼ばれる場所へと足を運ぶ。

 屋台道は元Aランク冒険者達が出展している屋台の並ぶ道である。元冒険者が開いているだけあって大味な料理が多い。ただし使われている食材の多くがグリムス領で取れる最高級食材だ。外では高価なこれらの食材もここでは溢れるほど流通している。

 元冒険者以外の料理人も町にはいるのだが、場所が場所だけに極少数である。反面、新鮮な高級食材を使うためか、腕がいい料理人が多い。

 冒険者領と言われるだけあって、この町の多くの需要と供給は冒険者と元冒険者で完結するのだ。そこに一部の一流職人が入ってきて領地を賑わしている。

 カイトは屋台でズゥ肉のサンドイッチを購入して、それを齧りながら屋台道を歩いていく。進む方向にあるのは領主の館、そこに併設されている冒険者ギルドだ。

 ギルドまでの道ですれ違うのは武器を担いだ冒険者か店の仕入れに走る元冒険者だけだった。朝は仕事に出る冒険者客の出入りが多い為、道具屋や鍛冶屋は店から出ることはない。

 ギルドに近付くに連れて人通りが多くなっていく。仕事に出る冒険者に加えてギルドに向かう冒険者が歩いているからである。カイトはそんな冒険者達に笑顔で挨拶を交わしながらギルドに近付いていく。

 ギルドの入り口に到着すると、そこには朝用に外に設置された受付が目に入る。朝の混雑に対応する為に設置された臨時受付だ。受付の横には依頼を張る為の掲示板も用意されている。護衛などの人数制限のある依頼は朝一番で来ないと取る事ができないが、カイトはグリムス領を離れるつもりがないので関係なかった。

 カイトは掲示板にある常時依頼の周辺モンスター討伐を確認すると、ギルドの入り口となっている西部劇によく見るミニスイングドアを見つめる。そのドアの向こうには実質アリス専用依頼となっている、グリムスの森のモンスターの間引き依頼が存在する。

 グリムスの森の入場資格を得るにはLV185以上、グリムス領内での一定以上の実績が必要になる。カイトはまだ後者を満たしていないので入場資格は得ていない。


(うーん、森の入場資格も早く欲しいけど、屋敷を出てからアリスに会えてないんだよなぁ……)


 そんなことを考えながら、モンスター討伐依頼がいつも通り制限なしなのを確認してから受付に向かう。


「おっ、竜騎士様は今日も元気に愛のために討伐依頼かしら? アリスもたまには顔を出せばいいのにねぇ」


 今日は受付に立っていたのはイェレナだった。アンジェリスではサブマスだったが、ここでは一受付嬢として勤務している。それでも元サブマスという経歴は他の受付嬢から尊敬の眼差しを受け、この支部の者達からは頼りにされている。


「いい加減、その『竜騎士様』ってやめてくれませんか。アンジェリスでは悪い事したとは思いますが……」


 カイトはうんざりした表情でイェレナに言うが、言われた当人はどこ吹く風な様子だった。そんな様子でカイトの後ろ回ると、背中を叩いて眩しいほどの笑顔を浮かべた。


「あんたのおかげであっちじゃ大量の書類処理させらたんだから、これくらいの仕返しは軽く流しなさい。代わりにアリスの情報をあげるからさ」


 アリスの情報、そう聞いてカイトが露骨なまでに反応を示す。カイトにとって彼の知らない50年の情報は喉から手が出るほどほしいものだった。


「あはは、そこまで反応してもらえると、こっちも提供のし甲斐があるわね。まぁ、今日討伐から戻ってくるまでにとっておきを用意しといたげるよ」


 カイトは態度に出てしまった事を恥じるように視線を外すが、決していらないとは言わなかった。むしろいつもよりも少しばかり気合が入っているようでもあった。

 カイトは『臨時報酬』に思いを馳せながら受付を後にする。後ろでは少しの間イェレナが大きく手を振っていたが、すぐに次々に訪れる冒険者の波に飲まれて受付カウンターまで押し戻されていた。カイトはそんなイェレナの様子を苦笑いしながら遠目に見ていた。

 カイトが来たときとは逆方向に屋台道を歩いていると、正面から見知った顔が現れる。


「おう、あんちゃん、おはようさん! 今日も絶好の討伐日和だな。まぁ、ここじゃこっちが討伐される可能性もあるけどな!」


 現れたのはギルドに最初に訪れた時に知り合った猥談をした冒険者だった。あれ以降もなんだかんだで悪友として付き合いが続いている。アリスがああなってしまったので、一緒にバカをやれる友人が新しくできるのはカイトにとっても嬉しいことだった。カイトにはアリスがどうしても女性としか見れなかったのだ。


「そういえば、あんちゃんは『今回の祭りのリクエスト』はどうするつもりだ?」


 カイトは冒険者の言葉の意味がわからずに首を傾げる。冒険者はそんなカイトの様子に気付いて意地の悪そうな笑みを浮かべた。


「そっかぁ、あんちゃんは来たばっかりで知らないのか。それじゃぁ、これは発表されるまで楽しみに待ってな。絶対あんちゃんも楽しめるからよ」


 そう言って冒険者は笑う。カイトは気にはなったが、これ以上聞くのもなんだと思って、素直に発表とやらを待つことにする。

 カイトはそれから冒険者と少し世間話をしてから別れて再び町の入り口を目指して歩を進める。屋台道を抜けてしばらく歩くと、そこには鍛冶屋や道具屋の立ち並ぶ職人通りがあった。

 職人通りは冒険者が使いやすいように入り口のある区画と屋台道の中間に設置してある。町には結界魔法があるため危険性も低く、また多くの冒険者の目に留まることから強盗などの心配も少ない。また、この区画の斜め後ろが宿屋の並ぶ宿泊区画であることもあって、冒険者の利便性が高い。

 冒険者達は仕事に行くときにここでアイテムの調達や武器防具の受け取りをし、帰りに生活必需品の購入や修理の依頼をする。夜でもこの区画は夜間警備依頼で人が途絶えることはない。

 そんな職人通りの店舗は現在冒険者でごった返していた。各店舗は各々に売り込みを行って冒険者を呼び込んでいる。冒険者達も自身の命に関わるため、どの商品がいいかを必死に吟味しており、職人通りはさながらバーゲン会場のようだった。


(相変わらずここの活気はすごいな。昼ごろには閑散とするんだろうけど、朝だけでどれだけの儲けがでるのやら……)


 カイトはそんな詮無いことを考えながら職人通りを歩いていく。人ごみの中にはカイトと同じように職人通りに目もくれない冒険者が数人いた。それらはカイトと同じく転移者なのだろう。

 今もアンジェリスで冒険者をしている転移者もいるが、この領地に来た転移者も少数ながらいた。カイトや彼らは自前のポーションなどの戦闘用アイテムを持っているので、職人通りに世話になることはなかった。

 職人通りを抜ければ広場のような入り口区画に到着する。入り口の区画には行商の馬車などが泊まっており、その護衛依頼を受けた冒険者が打ち合わせをしている。

 この町は最前線であり、生活必需品や調味料などの細々とした食材などの需要が非常に高く、護衛依頼が気楽に出せる金額になった現在では行商達にとっても最前線と化している。日々多くの行商が出入りし、販売や買い取りだけでなく売れ筋商品の情報収集などに努めている。

 この町には壁が存在していないにも関わらず入り口は存在している。外から見れば、見た目には入り口などないようにも見えるが、簡易的に柱を立てて入り口であることだけは示されているのだ。

 アリスは壁を作ることも考えないわけではなかったが、いっそのこと壁を作るのではなく、『壁になる』ように町を作ることにした。普段は使われない緊急用の二つの入り口と、正面の入り口以外の外周は建物によって塞がれているのだ。ただ、この建物アリスの手で結界魔法で防御されていて、ここを破壊して町に侵入することはできないようになっていた。

 ここまでカイトが歩いてきたのが領主の屋敷から入り口までの、グリムス領の町の姿だ。更に温泉区画やレストラン区画なども存在している。それらが入り口から領主の屋敷にかけて扇状に設置されていた。相当無茶な配置もされているが、アリスの結界魔法があることと、住人のほとんどが冒険者だからこそできることだろう。


「さて、今日も元気に冒険者しますか」


 カイトはそう呟いてから入り口から一歩、外へと足を踏み出した。結界を抜けた先はモンスターの跋扈する危険地帯。それもこの国で最も危険な場所『第1級危険指定領域』である。モンスターの平均LVは140、この領地の冒険者は高い者でようやく140付近なのだ。

 だが、それは転移者を除いた場合の話だ。カイトのLVは250、100以上の差があるのだ。一撃で倒すとはいかなくとも集団で襲われても十二分に殲滅できるLV差と言えるだろう。

 カイトは気負うこともなく盾を構えてヘルムを装着する。冒険とは言い難いが、これも立派な冒険者の姿である。


「昼までのノルマは30匹ってところかな。それじゃ、張り切っていこうか!」


 カイトがモンスターの多くいる場所を目指して走り始める。その速度はもはや人間のそれではなく、土煙が巻き上がる。途中冒険者とすれ違うが、冒険者も冒険者で人外染みた身体能力のため驚くこともない。精々土煙を多少鬱陶しく思う程度だろう。


(さてと、そろそろ到着だな)


 数分程走っていたカイトは急に速度を落とすと、いくつもの岩が飛び出た荒野のような場所で足を止める。

 カイトが軽く辺りを見回すといくつかの巨大な姿が見つかった。カイトはそれに向かって一気に踏み込むと、シールドを叩きつけてシールド・バッシュを発動する。

 殴られたそれはカイトを見ると大きな口を開けて雄叫びを上げる。雄叫びに釣られて周りのそれの同族も地面を揺らしながら寄ってきた。それはやたらと口の大きいモグラのような姿をしていた。

 アースドラゴン、LV147のモンスターである。姿そのものはモグラのように丸っこいのだが、全身を覆うのは体毛ではなく鱗であった。


「寄ってきた寄ってきた。これは昼までに50はいけるかもな」


 そんなことを口にしながらカイトが獰猛な笑みを浮かべる。剣を抜いてアースドラゴンを睨み付けると、カイトは一気に最初の一匹へと突撃していく。

 ディバイン・スラッシュで横薙ぎにアースドラゴンンの足を斬りつけたカイトは、そのまま二の太刀を放つ。二の太刀の切り上げでアースドラゴンの胴体を切り裂いて、更に『三の太刀』で斜めに再度足を斬りつける。

 カイトは鍛錬と実戦でディバイン・スラッシュを使いこなせるようになっていた。ディバイン・スラッシュのオーラを纏ったまま、何度も攻撃できるようになった。継続して使用するにはSPもまた継続的に消費するので、無限に攻撃できるわけではないが。

 三の太刀の後、盾を構えながら一度バックステップで距離を取る。斬られたアースドラゴンは痛みで暴れ狂っており、周囲の別のアースドラゴンにまで腕を叩きつけていた。

 カイトはその様子を見ながら、右腕を引いて突きの構えで力を溜める。そして暴れているアースドラゴンが一瞬止まった時に一気に再び距離を詰めて、頭部に向けて剣を突き出した。

 突き刺さった瞬間、剣はアースドラゴンの頭部の半分を吹き飛ばした。剣士系一次ジョブ『剣士』のスキル『バースト・スラスト』だ。溜めただけの突き技なのだが、それもLV250で使用すれば桁違いの威力を発揮する。

一匹を仕留めたことを確認したカイトは、他のアースドラゴンの攻撃が来る前に再び距離を取って態勢を整える。

 カイトはそこで軽く息を一つ吐いて次の獲物へと視線を向ける。狩りはまだ始まったばかりだ。


今回はグリムス領の町の説明回です。

いつも説明回のような気もするけど……

活動報告の方で キャラクター紹介ページがほしいか のアンケートとってます

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