出会い
僕が秘めている爆弾は何万人に一人しかかからない難病だ。最終的には死に至るらしい。
それが発覚したのが高校三年生の時。5限目の体育の授業中に突然手足の力が入らなくなった。身体を支える力がなくなって倒れた。そのまま救急車に乗せられて病院に搬送された。搬送先の病院で目が覚めたら目を真っ赤に腫らした母親が僕に笑顔で話しかけてきた。いつも不機嫌そうな顔をしている父親は会社を途中で抜け出してきたのであろうスーツ姿でいつも以上に顔が怖かった。そのあと、医者がいる部屋へと行き、自分が難病であることを聞かされた。母は既に真っ赤だった目を手で覆い泣き崩れた。父は母の背に手を当て慰めていた。もちろん僕は放心状態。
何万人に一人の難病になぜ僕がかからなければいけないのか。なぜ神様は僕を選んだのか。死という最も遠いであろう出来事がとても近くにある。当時の僕は今までいた友人にすらも打ち明けられず、まったく関係のないことで八つ当たりを繰り返してしまった。友人たちはそんな僕から距離を置き、どんどん離れて行った。定期入院を繰り返しながらも学校には通えていたため、普通の高校生のように受験を迎えた。しかし、病気のこともあり、思うように勉強が進まず、第一志望の大学とは行かなかったが、それなりの大学に入学することはできた。
東京の大型病院に定期的に通院しながら一人暮らしをしている。大学では友達を作らずに一人でひっそりと暮らしている。生活費のためにコンビニでアルバイトもしている。側から見れば普通の大学生だが、この爆弾を持ち合わせているため人間関係は無に等しい。僕自身が他人と親密にならないようにしている。
そんな過去と向き合いながら、僕は医療関係の本棚を眺めている。もちろん僕のような難病についての本なんてあるわけない。少しでも自分の病気のことについて知りたいのだが、参考になる本がないのでは仕方がない。暇つぶしにミステリー小説でも読もうかと思い、本棚から離れようとしたとき、ふと横を見ると背が小さく、本棚の上の方にある本を見上げている黒髪の少女のような女性がいた。
この時、彼女を見つけたことで僕は大きく変わることができた。見つけなければあんな思いをしなくて済んだのだろう。