第一夜:03
しばらく遅れます。忙しくて……
獣に突き刺さった剣にヒビが入り始めた。
パキパキ、ピキピキと音をたてながら。
無音に近いこの空間を壊すように。
獣はすっかり静かになっていた。
その事に気付いたのはひび割れが始まった頃だった。
動く気配は無し。
しかし、違和感を覚えた。
先程、クラスメイトの、飛鳥が夢魔を撃った時、獣は砂の様に砕けていったからだ。
今はどうだろうか。
動きはしないが、砕けもしない。
つまり、何かしらの段階を踏む必要があるらしい。
考えるまでも無く、一つの結論に至った。
絶命させるしかない。
それ以外あり得ない。
剣は刺さったまま、獣からは青白い体液が流れている。
眼には、まだ、光が消えては居なかった。
「抜けろ…ッ!」
咄嗟に剣を抜こうとする。
しかし、
剣は、音を発てて、四散粉砕した。
同時に獣は、細かい硝子粒のように砕け、消失していった。
そして、異変は止まらない。
「ッ!?」
ガクリと膝から倒れた。
何が起こったのか良く解らない。
いや、解った事が、一つだけ。
ごっそりと力が抜けた。
徐々に視界が暗闇に飲み込まれて行く。
「……あ…ぃっ……」
結界は解かれない。
まだ、夢魔が一匹、目の前に居た。
意識が消える前に、確認出来たのはそれだけだった。