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第03話 ココメロのプラン

 久々にダンジョンで迎える朝。

 ここに住み始めてそんなに長くはないけど、やっぱり他の町のホテルに比べると落ち着く。

 深く眠りにつけてなんだか気分も清々しい気がする。

 ここはもう俺の居場所なんだな……って、前も同じようなこと考えた気がするぞ……。


「おはようございます。エンデ様」


 メイリはすでに起きていてロットポリスから持ち帰ってきた物をテキパキ片づけていた。

 昨日の眠気で気の抜けた彼女はもういない。


「朝食はもう少々お待ちください。パステル様ももうじきお目覚めになると思いますので」


 どうやらパステルとサクラコはまだ起きていないようだ。

 腹は減っているものの無理に起こすのもあれだし、久々の我が家でダラダラと時間を潰すか……。


「そういえばココメロは起きてる?」


「はい、今は第二階層におられるかと」


「ありがとう、ちょっと行ってくるよ」


 階層移動の魔法陣を使って第二階層へ。

 ここには確か連れて帰ってきたばかりの精霊獣くらいしかいないはずだけど……。


「おーい、ココメロいるー?」


「はーい! ここにいますよー!」


 上機嫌な声が返ってきた。

 第二階層はまだ特に何も設置されておらず迷路のような洞窟になっている。

 声の方に向かって俺は進む。


「やあ、おはよう。今日は機嫌が良さそうだね」


 見つけたココメロはイノシシの上に乗っかっていた。

 イノシシの方は特に嫌がる様子もない。


「それはそうですよ! この子たちって精霊獣じゃないですか! 伝説の精霊竜を守る獣たち! ある意味守ることに関してはプロフェショナル! 流石ですボス! こんな戦力を連れ帰って来るなんて! 昨日は偉そうなこと言ってすいませんでした!」


「ああ、それはいいんだけどよくこのイノシシたちが精霊獣だってわかったね。メイリに聞いたの?」


「いえ、ダンジョンと契約したモンスターのステータスはこのダンジョンタブレットで見てるのでそれで見たんですよ」


「あっ、そういう機能もあるんだそれ」


 知らなかったな……。


「はい、なので正体を隠蔽(いんぺい)してダンジョンに住み着くことは出来ません。覚えておいてくださいね。あと、タブレットは設定で操作できる契約モンスターを制限することが出来ます。私がいじる前は誰でもタブレットを操作できるようになっていました。まあ、操作できるほど知能の高いモンスターは長い付き合いで信用できる方しかいませんので問題ありませんが」


「よく知ってるね。本当はボスとして俺が把握しておくことなんだろうけど……」


「まあ、私にはお留守番してる時間がありましたからね。その間に出来ることをしようとしただけです。昨日はキツく言ってしまいましたが、ボスだからと言って全てこなすのは難しいです。私は戦闘ではあまりお役に立てそうもないので、こっちの方向でみなさんをサポートしますよ」


「ありがとう。いやぁ、頼ってばかりだなぁみんなに」


「ふふっ、精霊竜の継承者がそんなご謙遜を」


「それもタブレット見えてる?」


「はい、なので精霊獣もついて来たのですね」


 ココメロはタブレットの画面に視線を落とす。


「この子たちは強力な各種耐性に加えて超再生や肉体強化に関するスキルを持っています。タフさが強みみたいですね。あと、回復に関するスキルもあります」


 タフな回復役か。もとは命の精霊竜を守る精霊獣だったかな。

 これは心強い。


「しかし、逆に攻撃に関するスキルはあまりパッとしませんね。他のモンスターを購入して補強すべきかと。さいわいパステル様も強くなりましたし、精霊獣が睨みをきかせていたら調子に乗るモンスターもいないでしょう。それにそろそろ植物や魔石以外にもダンジョンで手に入るものを増やしておきたいですからね。飽きられてしまいますから」


「それって、購入したモンスターを倒させてそこから取れるものを持って帰らせるってことだよね?」


「そうです。もちろん、ただやられるだけの弱いモンスターを買う必要はありません。それなりに強くて倒して人間にとって旨味のある……」


「うーん、傲慢っていうか甘いって言われそうなんだけど、あんまり俺は倒されるためのモンスターって置きたくないんだよね」


「モンスターをペットかなにかと……失礼、家族と思ってるんですね」


「あはは、まあそんな感じ。だから植物みたいに根から再生したりソウルドッグみたいに本体は別にあってそれが壊されない限り死なないみたいのの方が好きかな。でも、それじゃ倒しても得る物が少ないからダメなのか……」


「……ボスの考えはよくわかりました。それならばモンスターはあくまで防衛用と割り切り、他にダンジョンに来たくなる物を置けばいいんですよ」


「来たくなる物か……」


「はい、例えば人間が到達できないような極地に咲く回復薬になる花などをこのダンジョンで育てることが出来れば人は来ます。そして、そうした人間に役に立つ物がこのダンジョンからたくさん採れればコアを破壊してダンジョンを潰そうなんて思う者もいなくなります。一石二鳥ですね」


「俺には植物を育てるグロア毒もあるし……うん、それすごくいいね! でも今度行く予定なのは海なんだよね……」


「海でも大丈夫です。だって、海には海藻があるじゃないですか。ここは山に囲まれた農業が盛んな土地で海はありません。貴重でなくても食べておいしい海藻があるというだけで人は来るかもしれませんよ」


「海藻か! 思いつかなかったなぁ……。海に行ったことないからあんま知識がないけど、現地の人に聞いて美味しい海藻を持って帰って来るよ。君のアイデアでいろいろ上手くいきそうだ」


「いえいえ」


 ココメロはぺこりと頭を下げる。


「ですが、昨日も言ったように戦力の増強については引き続きお願いしますね。さっき言った貴重な物がたくさん採れるダンジョンを作ってもそれを壊そうとする存在は出てくるかもしれません。自分の欲望や利益のためだけに……。ボスはよく知っていると思いますが」


「うん……。仲間になってくれそうなモンスターも探すよ。さぁて、やることが増えてきたなぁ」


「今のプランはメイリさんとサクラコさんにも伝えておきます。長々話して最後にこんなこと言うのはアレなんですけど、ボスは細かいこと考えなくていいです」


「えっ!?」


 やっぱ、あまりにも知らないことが多すぎて失望されたかな……。


「ボスは最後の砦、魔王にとって最後の希望。求められるのは何よりも強さです。他の配下のモンスターが敵わない相手が現れた時、それを倒すのがボスの役目。ボスはパステル様のことだけ考えていてください。それが周りにとっても一番いい結果を生むと思います」


 イノシシたちから降りて真剣なまなざしを俺に向けるココメロ。

 俺もその目を真っ直ぐ見据えて応える。


「ああ、パステルは絶対に守るよ。それは当然としてみんなを守れるくらいもっと強くなる。もちろんココメロも守る」


「ボス……。ふふっ、ボスはダンジョンを守るモンスターも守りたいと思っているのですね。やたらにモンスターを増やしたがらないのも納得です。甘いと思いますがそれでいいです、ボスは。出来るだけその方針でいきましょう」


「ありがとう……って何回言ってるんだ俺は。まあ、何度言ってもいいか。さあ、そろそろ朝食かな」


 なんだか照れくさくなって俺は移動を始める。


「私、みんなとご飯食べるの初めてだから楽しみです」


 トコトコと後ろをついてくるココメロ。


「一つ注意しておくと、メイリは食事中にタブレット触ってると取り上げちゃうから食べてる時はどっかに置いとこうね」


「ハッ! それは問題です! 先に特典のソウルドックをそのまま購入する手続きをしておきましょう……。ヘルリビングアーマーは売ってないので断念です。なんかあれは貴重なモンスターで魔界学園がずっと特典として使いまわしてるらしいんですって」


「へー、モンスターの使い回しね……」


 そんな情報も手に入るんだタブレットって。

 こんど俺もしっかり触ってみようかな?

 変なとこ触って変なこと起こしそうだけど……。


 そう考えるとタブレットを使いこなせるココメロの存在はとても大きい。

 仲間に仕事を押し付けるというより、それぞれ役割分担して冒険しつつダンジョンも発展させていこう。

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