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ビリヤードな日常  作者: 田渕才造
うんちく編
9/51

その九 セットマッチ

「師匠」

「はい」


「ゲーム」

「すいません。で前回は私が喋ってばかりでゲームしなかったですね。今日はゲームにしましょう」

 今日だけじゃなくて毎回そうして欲しいかも。


「今日は、セットマッチしてみましょう」

「セットマッチ?」

「試合形式でゲームする事です。ナインボールなら九番ポケットしたら一セット。三セット先に取ったら勝ちみたいなルールです。三セット先取を三先と縮めて言ったりします」

 長くなるかな?

「それでは三先でやってみましょう」

 お、師匠さすがに気を遣ったか。


「それではバンキングから。よろしくお願いいたします」

「よろしく」


 当然の様にバンキングは負ける。師匠がラックを組む。

「最近の流行はセルフラックです。一番が先頭、九番が真ん中、二番が一番下と決まっていて他は自由に組むのが決まりです」

 二番の位置も決まってるのね。


 師匠がブレイク位置につく。

「お願いします」

 何度も頭下げなくて良いのに。付き合いで頭を下げてみる。


 バキャン!!!

 師匠のブレイクは相変わらず凄い音だ。僕が目を丸くしてると師匠はちょっと自慢げに微笑んでる。なかなか良い性格だ。


 師匠の目つきがいつになく厳しい。本気出してるみたい。本気出すなよ。いや出していいかも。目で見て学べるし。


 ブレイクで入ったのは六番。いつもブレイクで入る側のウイングにセットしてるって言ってた。ラシャと同じ緑色でジジイには見えにくいからだそうだ。僕には関係ないけど。

 カコンカコンと良い音を立てて次々にポケットしていく。構えて狙ってポケットするまでの時間が短い。迷いがない。こりゃマスワリかも。


 カコン。師匠が九番を沈める。やっぱりマスワリだった。師匠さすがだ。


 バキャーン!!!

 師匠のブレイクの音が更にえげつなくなった。こっち見てない。こりゃ本気の度合いが高い。


 カコン。師匠が九番を沈める。二連続かよ。ジジイ自重しろ。


 バキャン!

 今回は抑えぎみ。まさか。


 カコン。九番がポケットに沈む。僕バンキングしか撞いてない。しかもセットマッチ始まって十分くらいしか経ってない。


「私の勝利ですね」

「師匠、自重」

「すいません。調子に乗りました」

「許す」


 まあ一回も撞けなかったけど良いもの見せてもらった。


「次」

「はい。バンキングしましょう」


 師匠があからさまに手を抜いた。師匠の手球はセンター付近。さすがにこれだとバンキングに負けない。


「セルフラックで良いですか」

「やってみる」


 自分でラックを組むのは初めてかも。隣からぐちゃぐちゃ師匠がラックの組み方のコツを教えてるけど半分くらい聞き流しながらラックを組む。


 パキョ

 師匠の音に比べると情けない音だが、僕にはこれ以上強く撞けない。それでもウイングのボールはコーナーポケットへ入る。ラックは上手く組めてたみたいだ。


 結局三先で一セットも取れなかったが師匠の接待ビリヤードのおかげでそれなりに楽しめた。

 だんだんビリヤード場に居る時間が長くなってきた。ビリヤード代もバカにならない。バイト頑張らないといけないかな。斎藤くんとの勝負にはそろそろ勝てそうなくらいの腕にはなったと思う。ここまでビリヤードにハマるとは思わなかったよ。

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