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ビリヤードな日常  作者: 田渕才造
うんちく編
8/51

その八 ストローク

「そう言えば師匠」

「はい。何でしょう?」


 毎回おなじみになってきたやり取りから会話が始まる。


 今回はストロークの安定化の話。師匠からストロークが安定化するといろいろ出来る様になるって言ってたから、”練習する”以外のストロークの安定化の事について聞いてみる。


「ストロークやグリップについては、プレイヤー毎に考え方があると思えるほどなので、今から私がお伝えするのは私の考え方です。なのでそれが全てとは思わないで下さい」

 珍しく逃げ口上から入る師匠。


「基本は真っすぐ撞き出す事なんですが、一番重要なのはインパクトです」

 インパクト?手球とタップの触れる瞬間って事かな?

「その通りです。おおよそ1/1000秒程度の接触時間でプレイヤーの意思を手球に伝えています」

 とても短いって主張したいらしいけど、説明している理由は不明。相変わらず師匠は師匠だ。


「インパクトの瞬間だけ、撞点と力加減と方向性がプレイヤーの意図と合っていればストロークは波打っていようがどうだろうが良いのです」

 今日はまだカウンターに手を振っていない。師匠、続けて。

「ところが人間はそこまで器用じゃないです。なのでインパクトのリスクをできるだけ避けるためにストロークを安定化すると良いインパクトが生まれやすいと思うのです。さらにインパクトを強く意識することで確率はもっと上がります」

 この師匠、理論派なのか感覚派なのか分からない。

「インパクトのタイミングが感覚的に掴めていない時、不調の時や緊張している時は、『手球の裏側を撞く』とか『地球の裏までキューを出す』とかのおまじないの言葉を思い浮かべます」

 ついに師匠は呪術師のスキルまで身につけた様だ。


「結局は何万回キューを振ったかなんですけどね」

 やっぱり練習って言いたいのね。って万単位なのかよ。


「ところでビリヤードを最初にやった時にハウスキューをどうやって選びましたか?」

「ハウスキュー?」

「すいません。専門用語でした。ビリヤード場に置いてある貸しキューの事です」

 そりゃまっすぐなのに決まってるやん。テーブルの上でコロコロって転がして。斎藤くんがやってたもん。

「キューの曲がりを見るときに高橋さんは上から見てませんでしたか。シャフトの反りを見るには横から見ます。テーブルとシャフトの隙間が開いたり閉じたりしたら反ってる事が分かります。

 きっとハウスキューはそうやって見たら全部反ってると思う。だってこないだ行った漫画喫茶だと、ぐわんぐわん波打たないキューの方が少ないくらいだもん。

「ハウスキューの選択はインパクトの話に繋がるんですが、私ならタップを見て選びます。なるべく厚くて形が整っていればベストですね。もちろん私ならパンクしてないのが大前提ですが」

 タップって先っちょの革の事だったよね。でも曲がってたら振ったときふにゃふにゃするやん。パンクはあえて流す事にする。

「よほどヒドい曲がりじゃなければ曲がっている方向を上か下に向けます。そうすると曲がっててもまっすぐに使えます」

 まあ分かるような気がする。

「ちなみにタップをわざとパンクさせて使うプロもいらっしゃいます」

 どうしてもパンクを突っ込ませたいらしい。

「タップはインパクトに直接影響を与えるパーツなのでキューの構成要素の中で最も重要だと思います。良いタップが付いてるならモップでも良いって言うプレイヤーも居るくらいです」

 きっとそいつ相当なお調子者だな。モップで撞いてる姿見てみたい。


「ついでにグリップなんですが」

 ついでなのね。

「これはもう永遠の課題です」

 だんだん突っ込むのも疲れてきた。

「グリップはしっかり握るのが基本なんですが、しっかりって言うのは強くって意味ではありません」

 はいはい。

「必要最低限の力で握るのがベストです。生卵を握りつぶさない程度に、とか言う方もいます。キューが垂直になるようにを右手だけで握って軽くキュー先をフラフラ振ってキューが滑り落ちないくらいの力で握ってください」

 こうやるのかな、なるほど。

「キューの重みを感じる部分を自分で一番しっくりくる位置にします。どの指の辺りなのかは人によって違います。私は中指と薬指で握って他の指は添える程度です」

 僕は人差し指寄りかな。分かんないけど。


「ストロークの話に戻りますが、キューは肘から下を動かして振ります。私のストロークは肘が落ちますがこれも人によります。最初は私の真似はしない方が良いと思います」

 うん。肘を支点にすると振りやすい。しっくりくる。

「ストロークは早くとゆっくりとです。強くと弱くではありません」

 ふにゃ。また始まった。

「まず手球を睨みつけて撞点を決めます。最初は真ん中。芯を狙ってください。そして、もっとキュー先を手球に近づけて。もっともっと」

 師匠、手球に当たりそう。

「はい。そこです。新聞紙一枚の厚みくらいまで近づけるイメージです」

 当たる。当たる。

「まっすぐキューを引いて手球を撞くイメージを持ちながらキューを突き出す。それを数回繰り替えしてイメージ通りのストロークが出来たらショットする。イメージ作りをする素振りがウオームアップストロークと言います」

 また英語か。素振りで良いやん。素振りの最中にキュー先が手球に当たってコロコロ転がる。

「大丈夫です。慣れたら当たらなくなります。今はなるべくタップと手球は近づけてから素振りに入ってください」

 お、素振りになった。


 結局今日は最後までカウンターに手を振る事はなかった。

 ジジイ、話長すぎ。

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