第二話
短いです……
「なんだこりゃ……」と健は、自分の今の服装をじっと見つめる。まずこれを着て街を出歩けば変な目で見られる事確実の漆黒のマント。
その下には、見たこともないワイシャツのような物。そして、ズボンは……カーゴパンツのような感じのものであったが原料は健には判別がつかなかった。そして、なぜか刀を持っていた。鞘から抜いて見ると健が見たことがないほどその刀は光り輝いており、そこらの刀とは段違いであることが一目瞭然だった。なんとかこれで身を守ることが出来ると健は思った。が、ふと健は気付く。この刀をメンテナンスするための道具が何もないことを。
「本当に用意が悪い女神だな。これも自分自身で見つけ出せってことかよ。マジできついな…… 」
と健はぼやきつつ、歩いていると、茶色の帽子が落ちていた。身を隠すためにはちょうど良い雰囲気な帽子だったので、落とし主に感謝しつつ、ありがたくかぶらせていただく。
「ふう……これからどうすれば良いんだ?いやでもあの話を女神の事だからここに召還されたって事は街か何かがあるってことか…… 」
と呟いて、辺りを見回すとそこは雪国ではなく、緑が鬱蒼とした山の中だった。一応街道のような整備された道があり、辿っていけばいずれ、街に着くようだった。しばらく歩くと健の印象では村のような集落が見えてきた。ふと空を見上げると、其処には妖しく光る満月があった。
そのとき、悲鳴が健に飛び込んできた。
健が召還された場所から一番近い街というより村は今 、ヴァンパイアつまり吸血鬼の恐怖に怯えていた。村人が最近、一人一人血を吸われているのだ。ヴァンパイアは、不死の存在であり、人の生き血を吸う知性のある生物である。ヴァンパイアに生き血を吸われると奴隷にされて、死ぬまでこき使われるか、非常に稀なことだが吸血鬼になることもある。つまり、一見見ただけでは吸血鬼か人間かどうか区別がつかないのである。今、村では村長が雇った衛兵が警備を行っているが全く効果がなかった。そんな村の外れに一軒の小さな家があり、そこにはまだ幼い娘とその母が暮らしていた。
「ねえ、お母さん。今夜もまた吸血鬼が来るの? 」
「大丈夫よ。アリアナ、領主様の兵隊さんが追い払ってくれるわ 」とエマは安心させるように言うとアリアナはすぐに眠りに落ちていった。アリアナには父がいない。エマはその代わり、アリアナには人一倍の愛情を注いだつもりである。
「ああ、この子に神のご加護がありますように 」と呟くと、アリアナを護るように、眠りについた。
ヴァンパイアは辟易していた。最近、自分が遊びで血を吸った地域はどこも警備が厳しくなっており、潜伏するのが一苦労だった。だが魔術を使えばまずばれることはなく、生きのいい次の獲物を虎視眈々と狙っていた。狙い目は女である。
しばらく村の周辺の気配を探っていると、家々が集まっている場所から少し離れたところに小さな家があり、そこならば衛兵にも気付かれにくいようだった。ヴァンパイアは慎重に中に何人いるかを確かめると、女と子供だけであり、ヴァンパイアは狂喜した。扉に忍び寄り、こじ開け二人が寝ている事を確かめる。ヴァンパイアは少し考え、まずは母親と思われる方から先に血をいただくことにした。ゆっくりと母親の方に歩み寄り、首筋から血をいただこうとした瞬間、
「きゃあああああああああああああ 」
娘が目を覚まし、叫んだ。が、ヴァンパイアはそれを気にせず、母親の血を吸いにかかった。