廊下にて
こんな甘い恋、してみたいですねぇ……
ー作者の理想が詰まったラブコメディー
はじまりはじまり
『うわぁぁ!』
華やかな香りがしたと共に、手に持っていたノート達が宙を舞った。
ぶつかった反動で、体格の良くない僕は、反対側の壁まで吹き飛ばされてしまっていた。
「すみません!」
先に口を開いたのは、相手の方だった。
この声……
ハッとして前を向くと、そこには、僕の憧れの人、橋田 美優が座り込んでいた。
「こ、こ、こちらこそ!?」
僕は相当テンパっていた。当たり前だ。自分の好きな人を目の前にして、まともでいられる訳ない。
そもそも、廊下の角でぶつかったなんて、少女漫画の中だけの話だと思っていた。
しかし、今それが、目の前で起きているのだ。それも、好きな人と。
((なんてラッキーなんだ!))
「大丈夫?」
その声で、僕は我に返った。自分の世界に入り過ぎていた。
「あ、は、はいっ!」
慌てて立ち上がろうとすると、右腕に電流が走った。それは、いたずら用のビリビリボールペンなんかとは、比べ物にならない激痛だった。
思わず後ろに倒れそうになったが、なんとか左手で立て直した。
僕が立ち上がると、目の前に、綺麗に重ねられたノートが差し出されていた。
「っ!?!?」
この状況を理解するため、僕の頭は高速で動きだした。
((さっきここにいたのって2人だけだよね!?))
((てことは、ノート拾ってくれたのって、美優さん!?))
((そんな馬鹿な!?))
「あれ?これってアナタのだよね?」
「あ、そ、そそ、そうです!」
モタモタしていたせいで聞かれてしまった。
もう、緊張し過ぎて、すぐにでもこの場から逃げ出したかった。
「ていうか、アナタ確かB組の……」
「お、大野 由希ですっ!!」
言えた……
「そうそう!由希君!」
その瞬間、鏡を見なくても顔が赤くなったのが分かった。勿論、さっきから赤くなっていた。だが、今、名前を呼ばれたことで、顔面が焼け焦げそうだった。
「そーいえばさっきから、同級生なのに、なんで敬語なの?」
痛いトコを突かれた。敬語で話すのは、幼稚園の時から未だに治らない癖なのだ。まあ、治る予定も無いだろうし、治す気もない。
「い、いや、話すの初めてだったのでっ!!」
「あー、確かにねぇ~♪」
なんとか誤魔化せたようだ。
「じゃあ、今話した訳だし、もう敬語使っちゃダメね!?」
「え、ちょ、そん……」
(♪チャイムの音)
「あ、次の授業始まっちゃう!」
「あ、その、、、」
「じゃあ、またね!」
そう言って彼女は去って行った。
ぶつかった時と同じ香りが漂って来た。
僕は頬をつねったが、
「痛い……」
夢じゃなかったのか…
「何してるんだー、遅れるぞー。」
気怠そうな国語教師の声がした。
あ!次の時間に遅れる!
結局、次の授業には間に合ったのだが、教科書を忘れていたため、こっぴどく叱られた。
更には、右手を痛めていた事で、板書もままならなかった。
だからといって、彼女を責める気にもなれない。
「敬語なし、かぁ……」
夜、布団に入るまで、いったい何回呟いただろうか。
いや、布団に入ってからも呟いた。
僕にはかなりの難題だと思う。
ただ、今は、名前を呼ばれた喜びを噛み締めるのみだった。
どうだったでしょうか?
この小説は、前回みたいに間空けないようにしたいと思います!
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