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魔法使いにできないコト  作者: 水無雲夜斗
プロローグ
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プロローグ たとえば

初めましての方は初めまして、お久しぶりの方はお久しぶりです。

水無雲夜斗と申します。

今回はとある大学のサークル活動で書いた日常系青春ラブコメ作品を投稿させていただきました!

人生で初めて一人称視点に挑戦しています。うまく書けている自身はないので、アドバイスなどありましたらどんどん言っていただけるとありがたいです!

それでは、主人公達が送る青春ラブコメ風社畜学園生活をお楽しみください!

 ここではないどこかに行きたい。

 日常にはうんざりだ。

 いつもが少し違っているだけの、パターン化された日々。

 徐々にしか動かない周囲と、動き出す勇気を持てない自分。

 機械的に日課をこなし、日々をただ消費し、社会のために尽くすことに何の意味があるのだろうか。

 そこに価値を見出せる者もいるだろう。人間とは社会の歯車であり、社会のために動くものである、なんて思考に至って日々を精一杯機械的に生きる。そんな幸福を得た人間が、不幸だとは言わない。

 だが、そうでない者はどうなるのだろうか。

 機械的に過ごす日常に飽き飽きし、新しい刺激を求めてみるものの自分から動けず、また待ってみてもそれがやってくることはない。そんな地獄に囚われた者は、どうすればいいのだろう。

 自分から動けばいいではないか、と叱る者がいる。だが、自分から動いて本当に何かを得られるのだろうか?

 もう少し待ってみればいいと、優しく微笑む者がいる。だが、待ってみて何かが訪れるのだろうか。

 そんなものは誰にもわからない。

 だったら、求めない方がいい。選んでみて嫌な方向に転ぶくらいなら、何もしないほうがマシだ。



 たとえば、日常の何気ない一幕。

 朝、多くの生徒が行き交う通学路。

 友達、知り合い、恋人。そういった関係を持つ人間達であれば、人は他人を特別視し、判別できるだろう。だが、他人から見て、他人は他人だ。誰かが誰かと友達だったとしても、誰かの友達である赤の他人は、その人を他人としてしか認識できない。

 俺の周りにいるのはそういった赤の他人ばかりだ。

 では、自分と赤の他人とは関係がないのだろうか。そういう問いに、関係がないと返すのが大抵だろう。それには、たとえ言葉で関係あると取り繕っていたとしても、心の中ではそう思ってないヤツも含まれる。

 では、俺はどうか。

 昔までなら、関係ないはずがないと強く主張できただろう。だが、今はそうではない。

 たとえば、今、通学路を通りかかった一匹の黒猫がいる。

 それは子猫だった。生後数ヶ月といったところだろうか。体は小さく、両の手に収まるくらいのサイズだ。

 その子猫が、歩道から車道に飛びだそうとしていた。

 何気ない日常の、小さな非日常。そんなものを誰が気にするだろうか。たとえその黒猫が死んだところで、俺が損をするだろうか。

 心情的な傷を受けるかもしれない。だが、それはとても小さなものだ。気にするほどではない。死体を回収する業者の方が苦労するかもしれない。だが、それは赤の他人だ。そんなヤツがいくら苦労しようと知ったことではない。

 気付かないフリをして、俺は日常に戻ろうとした。そうすれば、俺は何気ない安全な生活を続けられる。

 だから、きっとその時、黒猫を助けようと今にも道路に飛びださんとしている女生徒が、視界の端に現れなければ、俺はいつものつまらない日常を、安全かつ快適に送り続けていられたことだろう。

 手を前方にかざす。おおよそ、猫の進行方向の先にある、白のガードレールの方向に。

 俺はそれを行使する。すると、黒猫は突如として目の前に壁が現れたかのように、その歩みをぴたりと止めた。

 その後、訝しげに前方をじろじろと見ていたが、やがて何かを諦めたかのように、元来た方へ向かって走り出す。

 すっとかざした手を下ろすと、それだけで日常の完成だ。

 訝しげな目で俺を見る生徒がちらほらいたが、俺が素知らぬ顔をして再び動き出すと、目を逸らしてそれぞれの日常に戻る。

 至極簡単な、簡易的で、つまらない日常の再開。

 俺はそれを面倒だと思いつつ、ただ義務的に、機械的にこなすことだけを考える。

 ただ、視界の端に映り続けている、先程黒猫を助けるために動かんとしていた女生徒の視線が、ずっと俺に突き刺さっていたことだけが、いつもの閉鎖的な日常とは違っているような気がした。

感想・アドバイスなど気軽に受け付けております。

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