変化
店の開店前、彰と暁は店内の掃除をしている。そこに水を汲みに行っていた白菊が戻ってきた。
「兄さん、マジックショーが来るんだって」
「珍しいな。で、いつなんだ」
「今年のお祭りに、あのギルも来るんだって」
水汲みの帰り道、掲示板にマジックショーの宣伝が貼ってあったとの事だった。
「そりゃ、すごいな」
「ギルってマジシャンは、そんなに有名なんだな」
「有名よ!マジック界のカリスマだもん」
白菊は、瞳を輝かせて言う。
「へぇ、そうなんだ」
「で、お前は行きたいんだろ?」
掃除を終わらせた彰は、コーヒー豆を炒りながら言う。白菊と彰は、亡き祖父の影響で手品や不思議な物事が好きなんだと、暁は聞いていた。
「いいの?」
「暁が一緒に行ってくれるならな」
マジックショーは、夕方からである。終わるのは夜遅く。女の子を一人、夜道を歩かせるわけにはいかない。
「え?」
急に話をふられて暁は驚く。白菊の期待の眼差しが痛い。
「店の方が忙しくないなら……」
「ありがとう。暁」
花の咲くような笑顔、例えるなら撫子。
「あぁ」
この笑顔を断れってのが無理である。何がを背負っている白菊が笑っていられるならいいかと、暁は思うよ。
「そうなると、その日は女性客が悲しむわね」
家事を終え、雪花が顔をだす。暁が店を手伝うようになってから、人から人へと暁の噂が広がり、女性客が増えた。瓦版が取材に来たいと依頼があったぐらいである。でも、暁が嫌がり取材は断わった。
「どうして取材、嫌がったの?」
「俺が目立つと、ろくなことがないから。余計な奴が目をつけないといいんだけど……」
最後の方は独り言のようである。
「余計な奴ら?」
「大丈夫。なんでもないよ」
暁は白菊に笑いかける。




