出会い4
「ただいま」
「おかえり。菊ちゃん、そちらの方は?」
二人を出迎えたのは、店内に花を飾っている雪花。
「昨日、話していた旅人さん、滝で会ったの。兄さんもいいって言ってたから連れてきたの」
「そう。いらっしゃい」
雪花はにっこり笑う。
「お邪魔します」
ぺこりと頭を下げると、暁の少し長い焦げ茶の髪が流れる。
「彰君、呼んでくるね」
雪花は奥に入って行ってた。
「水桶、ありがとう。座って待ってて、今、コーヒー淹れるから」
白菊は、水桶をカウンターの中に運び、準備をはじめる。暁は荷物を端に置き、白菊のいるカウンター席に座る。日当たりのいい店内、棚にはビンに詰まったコーヒー豆。カップやソーサー。暁は久しぶりに温かな所に来たと、店内を見回す。
「何か気になる物、あった?」
作業の手を休めずに、白菊が聞く。
「こういうの、久しぶりだなぁと思ってね」
「そうなんだ。あっ、そこの筒覗いてみて」
言われるがままに、手に取り覗いてみると、中は鏡が織りなす幻想的な世界だった。
「万華鏡か」
「綺麗でしょ?職人さんの逸品よ」
暁は筒をくるくると回してみる。
「綺麗だ」
店の中は、コーヒーを淹れる音と、白菊の動く音。視界には、万華鏡の創りだす世界。暁は、しばらくその穏やかな空間に浸っていた。白菊に呼ばれるまで。
白菊の声と同時に、奥から彰と竜を連れた雪花が戻ってきた。
「君が、ヒカルが懐いたって人か。俺は彰。これの兄だ」
「暁です」
万華鏡を、元の場所に戻し、彰にあいさつをする。
「これとは、何よ。これとは‼︎」
白菊は、膨れっ面をする。
「私は雪花。この子は竜。ほら、竜。ごあいさつなさい」
「よろしくな」
竜は、ニカッと笑ってみせる。
「よろしくな。竜」
暁は、竜に視線を合わせるように屈み、竜の頭を撫でる。
「滝の裏で野宿していたという事は、行くあてはないんだろう?」
「あはは……」
「なら、しばらくここにいるといい」
「え?」
彰の言葉に驚く暁。
「そのかわり、店の手伝いをしてもらう」
「いいんですか?」
「ヒカルが懐いた奴に、悪いのはいない」
彰は白菊と同じ事を言う。
「白菊もそう言っていましたが、どうしてそう言えるんですか?」
「ん?それはまた話すよ。なぁ雪」
「えぇ」
雪花は、穏やかに微笑む。
「さて、ここは見ての通りの長屋造りだ。隣が空いているはずだから、そこを使えばいい。白菊、案内してやれ」
「うん。じゃあ行こう。暁」
「あぁ」
表に出る白菊の背中を、彰と雪花は、ホッとした様に見ていた。
「あんな顔、久しぶりね」
「そうだな」
「?」
「まぁ、そういう事だ。暁、よろしくな」
「はい。お世話になります」
改めて、あいさつをする暁。二人の会話が気になるが、先を行く白菊についていく。
「ここら辺は、職人さん達が住んでいるの」
白菊の説明を聞きながら、案内された部屋は、暁一人が使うには充分な広さだった。




