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白菊のしらべ  作者: 柊 さつき
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出会い 2

 「ただいま」

 「遅かったな。どこまで行っていたんだ?」

 洗い物をしていた彰は手を止め妹を迎える。

 「ちょっと人助けしてたの。おもしろかったよ」

 「おもしろかったって、お前……。何があった?」

 「旅人の男の人が、お巡りさんに、絡まれていたの」

 「それを助けたと?」

 「うん。大丈夫、ヒカルが懐いたんだから、悪い人ではないと思うの」

 「ヒカルが懐いた?」

 「珍しいわね」

 別のところから声がした。白菊が振り返ると雪花が奥から出てきた。雪花は一見おっとりしているように見えるが、腹の据わった一児の母である。

 「でしょ?ヒカルが懐くなんて、京以来よ」

 「そうね」

 雪花はにっこり笑って答えたが、ちらりと彰と目を合わせる。“京”とは、彰と白菊の幼馴染の京介。一年前に亡くなった看護師の卵だった。

 白菊と京介は、互いに想いを寄せていた。京介が死んだと知らせが来たとき、白菊は皆の前では泣かなかった。でも、一人になったときだけ泣いていたのを、彰、雪花、二人の子供の竜も、犬のヒカルでさえもしっていた。

 「また逢えたらいいな」

 買ってきた物を片付けながら、白菊がつぶやく。その言葉に二人は驚いた。京介が死んで以来、白菊は人を好きになろうとはしなかった。

 「次に会えたら、連れておいで」

 「いいの?」

 「ヒカルが懐いた男を見てみたいんだ」

 

 翌朝、白菊は湧水をくみに出かける。

 「ヒカル、今日もいい天気だね」

 「ワン」

 山道を歩いていくと、水の流れる音が聞こえてくる。木々の緑が気持ちいい。川沿いを上流に歩く。しばらくすると視界がひらけて、滝が目の前にあらわれる。

 滝壺の近くに湧水が出ている。珈琲を淹れるには此処の水が好ましいく、嵐でも来ないかぎりは、白菊がヒカルと水を汲みにくる。店からここまで歩くと汗ばむ、そんな陽気。

 「ヒカル、水浴びしよう」

 滝壺から少し離れた、流れが緩やかな場所に足を入れる。

 「気持ちいい~」

 白菊は、懐にしまっている愛用の横笛を取り戻し、音を奏でる。ヒカルは水には入らず、白菊の傍に座り、奏でられる音に耳をそばだてる。

 同じころ、滝の裏側で暁が目を覚ます。滝の帯の向こうから、笛の音が聞える。表に出てみれば、清流に足をつけて笛を奏でる白菊がいた。気配に気づいたのか、ヒカルが暁の方を見つめる。ヒカルの様子に白菊は笛を吹く手を止め、ヒカルが見る先に目を向けた。

「「あ」」

白菊と暁の声が重なった。

 「ワン」

ヒカルが一声鳴いて水に飛び込み、暁のいる方に泳ぐ。白菊は、笛をしまい立ち上がる

「やぁ。おはよう」

暁は、水から上がり自分のもとに来たヒカルを撫でながら、どちらにともなく、あいさつをする。

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