発動2
「……さ……。白菊さん……」
女性の声に呼ばれ、白菊は意識を取り戻す。
確か、マジックショーの手伝いをしていたはず、ここはどこなのだろうと、回らぬ頭で白菊はゆっくり起き上がり辺りをみると、薄暗い部屋の中で、白い人影が立っていた。髪が長く綺麗な女性。
「貴方は……、アリアナさん?」
以前、店に来たギルが写真を見せてくれた。たくさんの花を抱えて微笑んでいる彼女が、目の前にいた。
「こちらへ」
アリアナは、隣の部屋へ白菊を呼ぶ。そこには、月明かりに照らされ、ベッドに横たわる彼女がいた。
「え?」
「私は、とうの昔に死んでいるの。今、貴女と話している私は、ギルが心配で、その想いが強すぎて、この世に留まってしまった姿なの」
ー鬼族の血は、死者を蘇らせることが出来る-
前に、暁が言っていた。広まってしまった迷信。
「ギルさんの目的は、暁の血?」
「はい。私が死んでから、ギルは変わってしまった。お願いです!あの人を止めるのを手伝ってください!私には自体がないから、何もできない……。ギルが貴女をエサに、貴女の大切な人を呼び寄せたことも、止めることが出来なかった」
「暁がここに?」
「私について来てください。案内します」
アリアナは、そう言うと部屋の外へ出ていく。
薬で眠らされていたからか、うまく動かない体に鞭を打ち、迷路のような廊下をアリアナのあとを追う。
恋人が変わっていく姿を見ながら、止めることも出来ず、どんなに辛かっただろう。どんなに呼びかけても届かない声。アリアナの気持ちを思う反面。白菊にはギルの気持ちも痛いくらいにわかった。大切な人を失った痛みは、胸に穴が空いてしまったような喪失感……。
-先に旅立った者が、残してしてしまった人達に望むのは、その人達の幸せ-
これは、白菊が暁に教わったこと。
「暁……」
「白菊さん、あの広間です!」
限界に近い体力を振り絞り、白菊は広間の扉を開ける。




