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白菊のしらべ  作者: 柊 さつき
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告白

その日の夜、食事が終わる頃、暁は話したい事があると、皆んなを居間に呼んだ。

「暁、どうした?」

昼間の事もあり、竜が心配そうに聞く。

「皆んなに話しておかないといけないことがあってね。竜も聞いてくれるかい?」

暁は、竜に視線を合わせる。

「聞く」

「ありがとう」

暁は竜の頭を撫でる。

居間に一同が揃う。ソファに座る暁の隣に、少し間をあけて白菊が座る。床のカーペットには、ヒカルが竜と遊んでいる。その様子を見ながら雪花が暁達の向かいに座る。コーヒーを淹れていった彰が戻ってくると、暁が口を開いた。

「俺は、最北の島の鬼の一族の末裔です」

その言葉に皆んなが驚く。

「鬼族の話は聞いたことがある。その血は死者をも蘇らせる事が出来ると」

「はい。ですがそれは、鬼の血が人の血よりも生命力が強いだけのこと。人がその血を取り込めば、体力や傷の回復が早くなる。それが人から人へ伝わるうちに話が膨らみ"死者を蘇らせる事ができる"となってしまいました」

暁はコーヒーカップを手に、その水面を見つめながら語る。深い蒼の瞳に影をさす。

「その話を耳にした、時の国主が噂を鵜呑みにし、いつか自身の脅威になることを恐れ、鬼狩りを行いました。100年前事がです」

「鬼族の人達は、それを否定しなかったの?」

「それまで、国のたくさんの地方にいた鬼族達は、己が鬼族であることを他言せずに、人と一緒に暮らしていました。言えば狩られてしまう。何かしたくても、何もできなかった」

雪花の問いに、暁は悲しそうに目を伏せる。白菊が暁の固く握りしめていた手をそっと触れる。その手の温かさにハッとし、暁が白菊を見ると、今にも泣き出しそうな顔をしていた。暁は、泣くなという様に、白菊に微笑む。

「どこでどう調べたのか、それとも密告があったのか、鬼族は次々と狩られ、逃げのびた者達は北へ逃れ、隠れ里を作りました。人が決して近寄らないところへ」

「人と鬼族との違いは、血だけではないのだろう?」

「はい。満月の夜には、鬼の姿と化します。力もさらに強くなります。人を喰らったりはしませんが、中には凶暴化する者もいたそうです」

「暁はどうなんだ?」

「俺は、昔の原種ほど月には影響されませんが、満月の夜には、角が生え、目の色が変わります」

全てを話し終え、暁は目を閉じる。しばらくの沈黙を破ったのは彰だった。

「何で今、その話をする気になった?」

「今日、絡んできたのはただの雑魚だったからよかったんですがね……。これから先、俺がここに居たら、迷惑になるといけないから」

「潮時だから出て行くと?」

「え?」

彰の言葉に驚いた白菊は暁を見る。

"暁がいなくなる?"

白菊の心臓がドクンと波打つ。

「はい」

"嫌だ"

「その必要はねぇーだろう。なぁ、雪花」

「えぇ。大丈夫よ?菊ちゃん」

雪花は、白菊に優しく笑む。

「言っただろ?ヒカルが懐いた奴に悪いのはいない。少しの事には動じねぇよ」

「ですが……」

「出て行くなんて言わないで」

白菊は、真っ直ぐに暁を見つめる。

「何かあっても、一人より心強いでしょ?」と、雪花。

暁は皆を見まわし、瞳を閉じる。

「ありがとうございます」

これを話せば、また一人で流浪する覚悟を決めていた。たが、ここの人達は、それでもここにいろと言ってくれる。

暁は、一人で戦う覚悟から、守るものいる覚悟を決めた。

「さてと、ここでうたた寝している子を、部屋に連れて行かないとね」

「この話の中で寝るとはたいした奴だよ」

ヒカルに寄りかかり、眠ってしまった竜をみて、雪花と彰が笑う。部屋の空気が和らぐ。

「菊ちゃん、竜を部屋まで連れていってくれる?」

「うん。ほら、竜。起きるよ」

白菊が呼んでも竜は起きそうにないので、ヒカルの背をかり、白菊は居間を出る。その後ろ姿を見送ってから、彰が口を開く。

「本人は自覚はないだろうけど、あいつは、暁が来てから変わり始めているんだ。だから、お前には恩がある」

「さっきも、暁君が出て行くと言ったとき、とても悲しそうでね。辛い思いはさせたくないの」

コーヒカップを片付けながら雪花も言う。

「だから、暁が背負っているものを負担するぐらい、迷惑でもなんでもないんだよ」


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