その頃の剣弥は…
タグが思いつかないので、募集します。
助ける気持ちでお願いします。
俺とあいつ…龍は小学校3年生の頃からの仲だ。
俺が妹を人質にやたら絡んでくる嫌な奴にボコられてる所を助けて貰った時から仲良くなっていった。あいつは自分以外に基本優しいが、怒ると怖い、それに敵と認定した相手には情け容赦無い。
だが、あいつは滅多に怒らないし、敵と認定しない。
例え自分が虐められていても…
だがあいつは、自分が虐められる事自体は気にも止めなかった。
理由を聞くと大した事じゃないし、実害が余り出てないからね。と言う返事が返ってきた。
あいつは周りに余り頼らないし、自分の抱えてる事を話さない。毎回一人でなんとかしようとする。
あいつの両親が亡くなった時もそれに触れずに何も言わないし、周りに変に思われないようにいつも通りに過ごしていた。
だから、俺は悩みを相談された事が無い。
だから、あいつの親友とは言え無いと思う。
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(ここは…何処だ…くぅ、頭が痛い、体が重い、なんだ…これは、腕に、足に、力が入らない。立てそうに無い。)
白い空間に俺は寝ていた。身じろぎぐらいしかできない。周りには俺と同じ様に寝てる奴が多い。
(てか、多すぎね?絶対クラスメイトじゃない奴もいるぞ。うん?誰か向こうに立っている?)
何とかそこに目を向けるとそこには龍が立っていた。
(龍、あいつ普通に立ってるな、まぁあいつだからな。)
そう考えていると龍の前に神々しい雰囲気を持つ男が立って何か話し合うと、一緒に消えた。
(なっ!どこに消えたんだ。てか消えた!?どういうことだ…)
しばらくすると男だけ戻ってきた。そして指を鳴らした。
すると俺はいつの間にか別の場所に居た。
「んな、今度はなんだ!あれ?さっきまでの脱力感がない?」
そう不思議に思っていると後ろから声を掛けられた。
「あぁ、ここはさっきまでと違う空間だからな、まぁお前達人間用とも言える空間かな?」
その声に反応して後ろを向くとそこには、20代後半くらいのイケメンがいた。
「…あんた誰だ?ここはどこで、さっきまでの場所は「まぁそう焦るな、一から説明する。」…分かった。」
俺の返事で、男は喋りだした。
曰く、俺達は異世界に召喚された。だがそのままだと危険なので、白い空間ー世界間の狭間と言うらしいーで色々調整するらしい。世界間の狭間は基本人間の魂が絶えられないので、気絶の類で意識を保てない様にするのだが、稀に俺の様な意識を保てる奴がいて、今回は特に多く大変らしい。んで、俺の様な意識を保てた奴には、選択肢によって力を与えるらしい。
「ふーん、んでその選択肢は?ちゃっちゃと決めたいのだが…」
と俺が言うと、目の前の男はそれもそうだな、と呟くと、俺の目の前に複数の箱が乗ってる台座が出てきた。
「力の与え方は担当する奴によって変わる。俺はこういう風に選ばせる。まぁ欲しいものがあったら教えてくれ。俺は邪魔にならない様に別の場所にいる。欲しいものが思いついたなら呼んでくれ。」
そう言うと男は背を向けた。
「待ってくれ。俺の欲しい力を今言う。」
俺がそう言うと男は立ち止まりこちらを見た。
「ふむ、いいのか?時間はある程度あるからゆっくり考えた方がいいと思うが、お前に意図的に与えられる力はせいぜい一つが限界だぞ。」
確かにそうなのかもしれないがそれでも…
俺は…
「いや、今言います。」
俺は…誰かを圧倒する力なんていらない。俺は…
「皆を守る力が欲しいです。」
小さい頃から守る力が…ずっと欲しかった。
「ふむ、それなら与えられるが、なぜその力なんだ?理由を教えてくれないか?」
男がそう聞いてきた。
「…俺は昔、ある奴に助けられた事がある、そいつは凄く強いのに威張らないいい奴で、すぐに仲良くなった。俺はいつか、そいつの役に立ちたくてね、だから守る力を望んだ。」
そう言うと男は、
「なぜ守る力なんだい?それなら別に他の力でも良くないか?共に戦う方が役に立つんじゃないか?」
そう聞いてくる、確かに普通はそうなんだろうな…
だけど、あいつは十分強い。
俺なんかが一緒に戦ってもきっと足手まといになってしまう。
だから、あいつが戦ってる時にあいつの…例えば家族なんかを守れればそっちの方が役に立てる。あいつは気にせずに存分に戦えるだろうから。
「いいんです、守る力で、それが一番役に立てるし、それが俺の役割なんです。」
そう言うと男は、
「まぁいいけどね。君がそれでいいなら、それじゃ与えるけど、その前にさっさとその箱のどれか開けちゃって。」
と言い箱を指差す。
「えっ?でもさっき俺は持てる力は一つが限界って言って無かったけ?」
と俺が言うと。
「いや、それは意図的、つまり君の要望通りの力をあげれる限界であって、持てる力はまた別、そこにあるのは誰でも手に入れる事が出来る力だから問題ないの、だからさっさと選んで。」
と言われ俺は、おもむろに箱を眺めた。
箱は全部で八つ、見た目に差はない。
だけど、何と無く気になる奴があるな。
俺はその箱の前まで行き箱を恐る恐る開けてみた。
すると中から目に見えない何かが俺の中に入ってきた。
「へぇー、それを選んだか、どうやら君は本当に守る力が欲しいんだね。」
ニヤニヤしながら男がこっちを見て言う。嘘なんかついてどうする。
「そんじゃ、君の望んだ守る力を与えるよ、君の場合余りにも抽象的だったから守る力の種となるものを君に与える。それとさっき俺の上司から君の友人の伝言も預かったから、それも纏めていれるね。ほいっ!」
と早口に言い間髪入れずに俺の腹に何かを押し込んだ。
「ちょっ、待っ…」
何か言おうとすると急に力が入らなくなり、倒れてしまった。
「あ、あとこの後すぐに君を向こうに送るから、これでさよならだね。じゃあね!」
それを聞いた所で俺の意識は落ちた。
________
ここは…?
気づくとまた不思議な空間にいた。
だが不意に目の前に龍が現れ、話だした。
「こんな形ですまないが、剣弥お前に頼みがある。」
それは、初めて聞く龍の頼み事だった。
「僕は、おじい…神様に頼まれて剣弥達と一緒に行けないんだ、だからその間、凛音と伸也を守って欲しい。特に凛音を、あいつは美人ランキングで上位に入ってたろ?それで勇也って奴が、美人ランキングの上位全員を狙ってる可能性があるんだ、だから勇也って奴には気をつけろ。確か楓ちゃんも入ってたからな。」
こいつが自分の大事な者…家族を任せるのだから暫くの間、本当に龍はいないんだな。
それなのにこっちの心配もするとかどんだけいい奴なんだよ。
そう感じた。
「親友である剣弥だからこそ、家族を任せられる。だから…お願いな。家族を頼んだ。」
そういい、龍は背を向けた、その背に俺は、
任された。
と返した。
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気がつくと俺は豪華な部屋にいた。
周りには皆が倒れてる。
その中には龍はいなかった。
あれは本当の事なんだろう、暫くの間あいつはいない、だから代わりに俺があいつの大切な物を守る。
そう頼まれたから。
俺は今こことは別の場所にいるだろう、親友に向けて心の中で言った。
お前の家族は俺が守る、だからお前は自由に存分に頑張ってこい!俺も力の限り頑張るからな…