異世界転移
阿澄 龍の朝はいつも早い。
誰よりも早く起きて兄妹…妹の凛音と弟の伸也の分と自分の分の弁当を用意し、朝ごはんを作る。
そして、皆が起きて来るのを待って、一緒にご飯を食べて一緒に学校に行く。
そして学校が終わると買い物をしながら帰り、そのまま晩御飯を作る。
それを兄妹皆で食べ、それぞれ風呂に入り、寝る。
これが阿澄 龍の中学卒業以降のいつも通りの一日…
父と母が死んでからの日常。
だが今日は、いつも通りにはいかなかった。
ーーーーーーーーーーーー
「ふわぁぁ、やっと5限目終わったか…」
眠そうに目を擦りながら黒髪黒目の青年が伏せていた顔を上げ言った。
「阿呆、龍お前そんなんで卒業出来んの?」
そんな青年、龍を隣の席に座ってた茶髪混じりの髪の青年が言った。
「問題ないよ、ノートは取ってるしテストも平均点以上は取ってるから卒業は出来るよ。」
龍はそう言いながら隣の席に座る、昔からの友人の御上 剣弥に言った。
「それにしたってお前最近寝過ぎじゃねぇーか?」
確かにここ最近はやり始めた内職のバイトみたいなので夜更かしをしていたからか、授業は基本寝てた。
「うーん、確かにそろそろやばいかもね、まぁ寝ながら聞いてるからテストは問題無いけど流石に平常点がまずいかもね…」
そう呟く龍を見て剣弥は溜息をついた。
「はぁー、普通は寝ながら聞くなんて無理だと思うがお前の場合は本当に聞けてるからな〜。」
そんな風に話ていると、急に窓の外が真っ暗になった。
「なんだ、これは…」
さっきまで賑やかだった教室、いや学校全体が一瞬静かになった。
だが、異変は止まらず今度は学校全体が眩い光に包まれた。
光が収まるとそこには生徒の居ない学校があった。
その事を誰も不思議に思わず、それどころかその学校に居た生徒の事を誰も覚えていなかった。
ーーーーーーーーーーーー
「くぅぅ、なんだった…ここどこだ?」
光に包まれてる間に俺はどこに来たんだ?
「なんだ…この真っ白い空間は…」
少なくとも現実には無いよな、こんな場所。
上下左右どこもかしこも真っ白、なのに上下の感覚もあるしなんだここ?
「っ!他の皆はッ!」
不意に自分以外の人が気に成り周りを見ると、そこには剣弥含む生徒達が全員綺麗に並べられてた。
「なんだ…これ…」
だが一番おかしいのはほとんどの人が薄い。
何もかも、存在感も体も半透明だし、気を抜いたら見失いそうだった。
それに人数がおかしい。
僕のクラスだけならこんなに人数は居ない。
この人数だと全校生徒みたいだな…
「っ!凛音と伸也…」
その中には凛音と伸也もいた。他の人よりは薄く無いがそれでも不安定な感じがする。
何がどうなってんの?
「ふ〜ん、珍しいな、こんなに意識を保てる奴が多いのは。」
不意に後ろからそんな言葉が聞こえてきた。
「誰だ!」
すぐに後ろを見ると金髪碧眼の男がいた。
服装は神話に、出てきそうな服を着てる。
何より、雰囲気が神々しい…
「お前は、誰だ?」
答えは姿と雰囲気から言ってるような感じもするがとりあえず聞いてみる。
「俺か?俺はこの世界と他の世界の管理、というより見張りを任されてる神で名をハールエルと言う。気軽にハールと呼んでくれ。」
そう言った目の前の男は、そう言いながらこっちに近づいてくる。
「それにしてもこの空間で意識どころか何事も無いように立ってる奴がいるとはな。」
そんな事を言い男は一瞬で俺の横にいて、
「すまないがしばらく眠っていてくれ。」
そう言いながら肩を叩かれた瞬間に俺は倒れていた。
な、なにが、起こったんだ?
そう思ったと同時に俺は気を失った。