テンプレの後は厄介事?
あの後、傷ついた人達の治療がある程度終わったのか、馬車の中に呼ばれた。
馬車の中に入る。
馬車の中は意外と広い。
てか、広過ぎる、どう見ても外見の大きさと会わない。
てか、完璧に部屋って感じだよな、ベットとか椅子とか家具あるし…
広さ的にはリビング位かな?
あれ?外から見た時は豪華な馬車だったんだけどな?
「驚いたか?この馬車は特別製でな。」
と入り口に立っている僕に騎士の人が言ってきた。
「特別製って…どうやって中を広くしたんですか?」
と普通に疑問に思った事を聞いてみる。
「んー、魔法らしいぞ?詳しくは知らない。」
少し気になったが、いい加減中に入ろうと思い入った。
部屋には騎士の人以外にメイド服っぽい物を着た女の人がいた。
メイド服と言ってもメイド喫茶とかのじゃなくて、ちゃんとした普通のメイド服。
「おう、んじゃそこのイスにでも座ってくれ。」
と言い、騎士の人が机を挟んだ向かい側のイスに座りながら言ってきた。
言われた通りに座ると、いつの間にか向かい側の騎士の人の隣にあったイスにメイド服の人が座っていた。
「まずは、自己紹介からだな、俺はガルフェルン、気軽にガルフって呼んでくれ。職業は一応騎士だ、外の奴らも騎士で奴等の隊長でもある、よろしくな。」
と言った。
ガルフの自己紹介が終わったのを確認して、隣のメイド服の人が自己紹介を始めた。
「私は、メルス・ルーリアと言います。ルーリアと呼んでください。一応、王女をやっています。よろしくお願いします。」
と言ってきた。
へぇー王女ねぇ……
ん?王女?
「えっ?王女ですか?」
と聞いてみると、
「?えぇ王女です。」
と言われた。
「……あの、ガルフさん?」
「まぁ落ち着け、この人が王女なのは本当だ、話したい事もその事に関係するしな、だけどその前にお前とお前の連れ、ユキって子の事を教えてくれないか?」
そう言われ半ばパニックになっていた僕は、少し冷静になり、自己紹介を始めた。
「…そうですね、じゃぁ僕は、リュウって言います。そのままリュウって呼んでください。職業は特にありません。」
そう言うと驚かれた。
「お前冒険者かなんかじゃないのか?」
と言われた、
「あの…冒険者ってなんですか?」
と聞くと、さらに驚かれた。
「…お前どこから来た?冒険者がなんなのかなんて、子供でも知ってるぞ?」
と言われた。
あれ?あの本には書いて無かったんだが、こうなったら、誤魔化そう。
「…すいません、記憶が所々抜けていて…自分がどこに住んで居たのか、何をしていたのかは分かりません。気がついたら変な場所で目が覚めたんです。分かるのは自分の名前位です。」
と誤魔化す。
すると、誤魔化せたわけでは無いかもしれないが、ガルフさん達は納得してくれた。
「まぁお前についてはそれでいいとして、ユキって子はどういう子なんだ?」
「…分かりません、まだ喋った事も無いですから…あの子は僕が目覚めた時に近くで変な儀式で殺されそうになってたんです…」
そう話す、ガルフさん達は悪い人達ではなさそうだから、一つ聞いて見た。
「…儀式していた人達はあの子…ユキの事を器って呼んでいたんです…心当たりありますか?」
と聞くと、ガルフさんと王女、ルーリアさんは驚き、そしてガルフさんが言ってきた。
「…知っている。今ではほとんど廃れた伝承…伝説の中にありとあらゆる力をその身に宿せる者の事を器の者と呼んでいた、実際に古い歴史書には器の者の様な存在が居たというのが書かれていた。その文献には器の者は深紅の瞳を持ち、この世の力を受け止める、とも書いてある。」
と思い出すように話す。
「…だが、その者がいたのは遥か昔…もはやそんな話しは誰も知らない様なものなんだがな。知っているとしたら、俺のような変わり者だろう。」
とそこで一旦区切り僕の方をみる。
「それよりも今では、深紅の瞳を持つ者は人外の力を持っていて、竜のような高次元の存在という話の方が有名だ…」
と言い、僕の目を見る。
「お前は深紅の瞳を持っているな…赤い瞳を持つ者はあまり居ない、いたとしてもお前程紅くは無い。お前の瞳は深紅の瞳。てことは少なくとも強いんだろ?」
と聞いてきた。
どう答えたらいいものか…
だけど…
「基準は分からないけど、少なくとも強いとは思う。」
僕の返事にガルフさんは、ニヤッとして言ってきた。
「だよな。弱いって言ってきたら切ろうかと思ったぜ。」
と物騒な事を言ってきた。
「まぁ、そんなお前に頼みがある。もちろんタダではない。」
と真剣な顔で言ってくる。
「内容によりますよ?」
あんまり危険なのは今ユキが起きてない現状ではやりたくない。
それにまだ、体のスペックがどんなものか分かりきっていないからな。
「なに、簡単だ。俺達を護衛して欲しい。」
「…それは盗賊達や魔物からって事ですか?」
と聞くと、
「…いや違う、実は俺達は国から逃げているんだ。」
なんで…と言う前にガルフさんは続けて話した。
「理由は簡単。先代の国王が死に、現在の国王…つまり王子が着任した時、奴はルーリア姫を殺そうとしたんだ。ルーリア姫は優しく民衆に愛されていたが、兄の王子はろくでもない奴で、民衆はルーリア姫を王にしたがっていたんだ。それを無視出来るほど奴は寛大じゃない。だから殺そうとした…だが俺達、王女の護衛騎士団がいち早くその事を知り国外に逃げようとしたんだ…結果国から追ってがかかっている。もし追ってに襲われたら、それをお前に倒して欲しい。」
個人的には受けたいが、それは国を敵に回す気がする。
てか国と敵対するよね?
「僕が一人なら受けてもいいんですが、ユキがいる状況で国を敵に回すのはまだやめときたいです。」
と言うとガルフさんは、
「あぁ、安心しろ、お前がどんなに国の追ってを殺そうが国とは敵対しないぞ、うちの国はここ、西の大陸の中にある12の国の中で一番小さい国だからな、それにこの大陸を統べた大国、フエルム公国が命じた掟、争い事は他国を巻き込まない事、に違反はしたくないだろう。」
と言った。そこでまた疑問が浮かんできたが、後回しにした。
ガルフさんが報酬の話しをしようとしてたから。
「それで報酬だが、何がいい?お前が決めろ。」
と言われた。
んー特に今欲しいものは無いな。
あ、お金は欲しいけど、うーん
としばらく悩んでいるとガルフさんが、
「あぁ、お金以外な?お金は報酬の内にもう入っているから。」
と言われ、さらに悩む。
結果何も思いつか無かった。
「ふーむ、ならお前に助けがいる時にできる範疇で助ける…これでいいか?」
とガルフさんが言ってきたので、迷わずに首を縦に振る。
そしたらガルフさんとルーリアさんがイスから立ち上がり言ってきた。
「それじゃ、早速前払いで払うぞ。」
とニヤッとして笑った。
ガルフさん達はベットの方に歩いて行った。
その後をついて行くとベットにユキが寝ていた。
「さて、まず説明しないとね。」
とルーリアさんが言ってきた。
「まず、この子、ユキちゃんは誰かの奴隷だったけど今はリュウさんのよね?」
と言ってきた。
「えぇ、そうですけど、ってそれも聞きたかったんだ、奴隷ってどうやって解放させるんですか?」
と聞くと、ルーリアさんは少し考えて、言ってきた。
「解放するのは今は出来ないわ、それよりも今ユキちゃんが起きないのは実は奴隷の紋の関係なの。奴隷の紋は呪いに近くてね、一度かけられると奴隷の主に解放する意思が無いとまず無理なの。」
と説明してきた。
「奴隷は基本的に主が死ぬと解放、もしくは主無しの状態って言って、廃人の様になるの、でもユキちゃんの場合は珍しく主権限がリュウさんに移ったの。でも、完璧には移っていなくて、今は廃人とリュウさんの奴隷という状態を行ったり来たりしているの。」
とそこで僕は質問した。
「ちょっと待って、もし奴隷が廃人状態になったらどうなるの?」
と聞くと、ルーリアさんはパンっと手を叩いた。
「そう、それよ、廃人になった時は新しい主を作るの。そうすると、廃人状態の奴隷は元の状態に戻るの、だから今からリュウさんをちゃんとユキちゃんの主にするの。」
と言われた。
だけどそれなら、あれが使えるかもしれない。
危ないから使わなかった餓狼が有効かもしれない…
「少し、試したい事があるんでそれをやりたいので退いてもらってもいいですか?」
と僕が二人に聞くと、二人は少し不思議そうにしながらも、どいてくれた。
そして、寝てるユキの額にてを乗せてスキルを発動させた。
発動するとユキの中にある、不純物の様なものを見つけた。
それだけを喰らうイメージでやると…
「…うまくいった。」
感覚的にはうまくいった。
念のためステータスをみると、
______________
〈ユキ〉二つ名〈悪魔の娘〉
種族.人 年齢.15 性別.女
職業.ーー LV.10
状態.空腹.精神疲弊
〈ステータス〉
体力・D
魔力・C
攻力・D
防力・D
攻魔・C
防魔・C
速力・D
〈装備〉
頭・無し
体・白い貫頭衣
腕・無し
脚・無し
足・無し
アクセサリー・無し
〈スキル〉
魔人
魔力支配
召喚魔法
四天墜
決壊
基本魔法LV.2
氷魔法LV.2
回復魔法LV.2
〈所持金〉
0
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奴隷の紋が無くなっていた。
それを確認すると、途端に飢えが襲ってきた…が対したことは無かった。
せいぜい少しお腹が空いたぐらいの感じだ。
そんな事を考えていると、ユキが目を覚ます。
「…うん、ここは…?」
とか細い声で言ってきた。
それに僕は答えた。
「おはよう、ここはとりあえず安全な場所だよ?少なくとも僕が保証するよ。」
と言うとユキは僕の頬に手を当てた。
「……暖かい…」
それだけ言うとまた眠ってしまった。
僕はユキの手を握りおやすみと言った。
その様子を後ろから見ていた二人に、僕は話しかけた。
「ありがとうございます。おかげでユキを起こせました。この依頼は受けます。その代わりガルフさん達が行く町…いや国に僕らも同行させてください。」
と言うとガルフさん達は不思議そうにしながらも、
「…何をしたか分からないけど、まぁよかったな、それと同行は本当にありがたい。こちらこそありがとう、そしてこれからしばらくよろしくな。」
と手を差し伸ばしてきた。
その手を僕は握った。
しばらく握手をした後、夕方だったのでガルフとルーリアさんと騎士の人達と一緒に夕食を食べた。
ユキはルーリアさんの話しによればまだ起きないそうだ。
だけど念のためユキの分のご飯をアイテムボックスにとっておいた。
ちなみに僕が護衛すると聞くと騎士の人達はみんな僕に感謝してくれた。
なんだかんだ依頼を受けたが良かったかなと思える気がした。