その後神様は…
龍を異世界に送った後、龍が居た場所は形を変えて草原に変わっていた。
草原の真ん中辺りに一人の人が居た。
「ふぅー、なんとか間に合ったな、まさかこんなに早く場所が割り当てられるとはな…」
そう言った人は、中世的な顔立ちで、どっちつかずな感じのする人だった。
「全く、おかげで話しそびれた事が結構あるし、渡しそびれた物もあるんだかなぁ?」
と、その人は何も無い空間に向けて話かけた。
するとその空間が捻れ、そこにはさっきまでは居なかった女性が現れた。
「誰が来たかと思えば、まさかお前の様な高位の神がくるとはな、審判の女神・セレイオネ。」
そう言われ女性、セレイオネは深くため息をついた。
「…私の様な高位の者が来なければ行けなくなったのは、最高位の一角の時空神・アイオス様があの化物の封印を解き、そして自身の神域ごと隠れたせいではありませんか。」
セレイオネは疲れている様で、少しフラフラしている。
「…ふむ、そうだな。それにしてもよくこんな短時間で見つけれたな、少なくとも後百年は見つからんと予測していたんだがな…ほれ、座れ。」
その人、アイオスはセレイオネの後ろに椅子を出して、自分も出した椅子に座った。
「ありがとうございます。確かにここを見つけれたのは偶然です。不思議…いえ、どちらかと言うと不可解な力を微量ながら感じ、きたらここに辿りついたのです。」
それを聞きアイオスはあちゃーという感じな顔をして、
「やっぱり漏れてたか…あの子は本当に恐ろしいな、人間の枠に治まれてたのが不思議なくらいだ…」
そう言った。それを聞き、セレイオネはギョッとして、訪ねた。
「まさかと思いますが、アイオス様はもしかして異世界転移の申請を受けていたんですか?一人で。」
本来、例え一人でも人を全く関わりの無い世界に送るのは相当な力を消費する、それを一人で行えるのは高位の中でも少ない。
「うん?やったよ、しかもさかなり大人数で困っちゃったよ本当、今俺ほとんど力無いよ?もうね、そこらへんの下級悪魔にでも殺される位にね。」
それを聞きセレイオネは、余りにも驚き、金魚の様に口をパクパクしている。
「でもね、凄い者にも会えたし、本来の目的も達成できた。俺は満足。」
そう言ったアイオスの顔はとても清々しかった。
「一体何があったのですか?全部話してください。化物の事も、召喚の事も、全部。」
真剣な顔で尋ねてくるセレイオネに対し、アイオスは真面目な顔で、
「話してもいいけど、他言無用だよ、例え創世神様にもね。」
そう言いアイオスはこれまでの事を話した。
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話し終わるとセレイオネはこめかみを抑えながら、ため息をつく。
「なぜ、そのような危険な事をするのですか、もしその人間が化物の力を悪用したら、一つの世界ではすまないかもしれないんですよ!」
そう怒りながら言った。
「まぁ、多分化物の力を与えなくともあいつはかなり危険なのには変わらないと思うがな。」
そう意味ありげに言ってきた。
「どういう意味ですか、それは。」
セレイオネが怒りを鎮め聞いてくる。
「なに、お前から俺の神域から不可解な力を感じたって時にあいつがどういう存在か気になってね、なけなしの力を使い調べた。」
と事もなげに言う。
「調べたって、魂を…ですか?」
と聞くと、
「あぁ、そうだ。あいつの魂が時間と空間をどの様に過ごした、またはきたか調べたら…」
セレイオネは次の言葉を固唾を飲み込み待った。
「全くと言っていいほど、わからなかった。精々あいつ、龍が生まれる直前に少し魂を感じれた程度だ、それより前は、全く、存在すら感じる事が出来なかった。」
それを聞いたセレイオネは目を見開いた。
「それは…今の力がない状態だからですか?それとも…」
「いや、全力でやっても分からないと思う。」
と繋げた。その事実にセレイオネは言葉を失った。
例え、神であっても魂の様なものは存在する。魂は突如発生する物ではなく、時間をかけてゆっくりゆっくり形作られ、存在が定着していく物であり、急に出来る事はありえない。
もし、そんな物が存在したなら、それは他の魂とは比べることは不可能なほどに凄まじい力を持っているだろう。
なにせ他の魂がゆっくりとしか形作れないのに、その魂はその過程を一瞬で終わらせる。
定着に時間がかからないのは即ち、それが必要ないほどに圧倒的存在。
故にあったらそれは全てを凌駕する。
だからありえない。
例え、アイオスが感じれなかったのだとしてもそれはそれでおかしい。
神は基本下位の神以外はどんなに小さい魂も感じられる。
しかも、アイオスは最高位の神の一角である、そのレベルの神が調べても感じれないのはまず無い。
それが感じれないのなら、余りにも強過ぎるのか、突如発生したのかの二択。
だからありえないかったのだ。
どちらにしても…
「多分、突如発生したんだろうね、しかも感覚的な話しだけど、龍は魂の突然変異体でもあるね。」
事もなげにそう言ってくるアイオス。
魂の突然変異体は、稀に起こることで、魂が突如、変異していき、全く別の、新しい物になるというもの。
今迄なった者はもれなく強烈な力を手に入れてた。
新しい事実にもはやついて行けてなく無ってきてるセレイオネを無視して、話を進めるアイオス。
「だから、多分龍の魂が目覚め、それを龍が自覚してしまうと、もはや誰も彼を止められないね。例え…それが創世神でも。」
その言葉は、普段なら笑い飛ばすが今の話を聞くと冗談に思えなくなる。
「でも、安心して、簡単には目覚め無いよう彼の魂は、化物の力ごと封印してあるから滅多に目覚めはしないと思うよ。そのせいで彼を人間には出来なかったけど…」
それを聞き少しは安心した、セレイオネにアイオスはある頼みをした。
「それと、セレイオネ。頼みがあるんだ。俺が渡せなかった能力を向こうに送った奴ら…龍を含む奴らに与えてやってくれ。それと、向こうの神々にも余り龍に干渉しないよう言っておいてくれ。頼む…俺にはもう時間が無いんだ、しばらく眠りにつく。すまないが頼む。」
そういい、アイオスは眠りについた。
「はぁ〜、そりゃ一人で数百人に力を与えて、しかも規格外の魂を持つものに化物の力を与えて縛ったり、しかもそれを一人で分身を使い同時にやるなんて事をしたら力もすっからかんになるでしょう。」
そういい眠りについたアイオスを見ながら、呟いた。
「まぁ、後の面倒事は任せてください。出来るだけ早く起きてくださいね。」
そういいセレイオネはアイオスの神域を、出て向こうの世界、アルメラスに行く準備にかかった。
(あそこは化物の力のせいで、私達が自然に感知できない、閉鎖された世界。向こうの神々がどんな感じになってるか分からないけど、伝えるだけ伝えないと不味いからね。)
そこでセレイオネはふと気付いた。
(ん?まてよ、もしかしてあの龍って子はアルメラスに生まれたんじゃ無いかな?
あそこならどんな魂も調べようとしなければ調べられないしって、調べようとしてるじゃん。
あぁ結構パニックになってたな…
まぁいいや、ささっとアルメラスに行って伝えないと…)
そう思いアルメラスに向かった。
次こそ龍の話に戻します。




