二話目
楽しく書くことをモットーにしてます!
二年前の話をしよう。
俺が喰空と出会った話を……。
中学時代に喰空満は転校してきた。久しぶりの転校生で学校中が騒いだ事を、今でも覚えている。
その日の放課後ーー俺はたまたま喰空と昇降口と鉢合わせしてしまった。
「すいません。職員室を教えてくれませんか?」
この時はまだ、口調は優しかった。いつからああなったんだろうな……。
初めて会った時から言い聞かせてやれば良かったか?
そうに違いない。
おっと話がブレた。
いかんいかん話を元に戻そう。
俺は渋々承諾して喰空を職員室に連れて行く。
「ありがとうございます」
とニコッと微笑む。
素直に可愛かった。喰空が色々と悩んでいるなんて考えもしなかった。
「あの……名前を聞かせてもらっても……?」
「室久佐速水です」
「室久佐……先輩」
俺は踵を返して、その場から立ち去った。
カップルがいちゃついてる校門を通り過ぎ、家路につく。
さて、帰ったら何をしようか?
漫画読んで、ゲームして、溜まったアニメでも見るか……。
帰り道にある信号に引っかかって、青になるのをただ待っていた。
「室久佐君」
後ろから女性に声をかけられた。
「赤峰先輩……」
赤峰櫂河先輩。
中学三年生の俺の先輩。高校一年生で見た目は、肩まで伸びた綺麗な黒髪、覇気を感じられない瞳、背は確か、百六十センチだったかな? 面倒見が良い性格で俺も世話になった。
今思えば、どこか安曇に似ている。
こうして会うのは、久し振りだ。
「どうしたの? 彼女にでも降られた?」
「彼女何て元から居ませんよ」
「アレ? そうだっけ?」
クスクスと笑う。
綺麗な顔をしてるのに、言うことはかなり酷い。
「そうですよ……いませんよ」
溜め息を漏らし、青になった横断歩道を渡る。
赤峰先輩は後から追いかけてくる。
「怒った? ごめん。ごめん」
ニコニコと笑いながらそう言った。
面倒だ。
赤峰先輩に会えたのは嬉しいが、今は疲れてるんだ。
「先輩、部活やってないんスか」
「やってるよ。室久佐君で遊ぶ部活」
白い指で俺のほっぺをつつく。
あー、完全に遊ばれてる。
そして男性の視線が怖い。この地獄からいち早く脱出したい。
「あー、そうスか」
「反応が鈍いよー」
「うるさーい! 久し振りに会ってほっぺたつつきやがって!!」
「その反応待ってたんだよ!」
俺の反応を嬉々として見ていた。
しまった……思わずデカイ声を出してしまった。周りの視線が!
俺は家に走って逃げ帰った。
「ハァ……」
ここまでくれば流石に……。
「いきなり走るなんて酷いなー」
隣には引き離したはずの赤峰先輩が、額の汗を腕で拭い、俺に笑いかけた。
この人は……本当に……
面倒だ。
先輩を部屋に招き入れ、麦茶を出す。
「まだ人助けしてるの?」
「してますよ」
「私がいなくても大丈夫?」
中学時代の時に、俺と先輩で学校で困ってる人を無償で助けていた。
高校では止めてしまったが。
結構楽しかったな。
でも、今は中学時代。もちろんこの時もやっていた。
「大丈夫ッス」
「町回りは?」
町回りーー人助けの一環でしていた事だ。
「してないです」
そう。
やってはない。何故なら人助けをするのにはあまりにも、人が少なすぎる。
先輩が居るときは、週に二回行っていた。
まぁ、俺も受験生だしもうできない。
「じゃ、今日は久し振りにやろうよ!」
「え!?」
先輩に無理矢理、町回りに参加させられた。
しかし、半年ぶりにやった気がする。したかった訳ではないが、いつになく懐かしい。
町はこの半年でなにも変わりはしない。
「あそこに、困ってる人が!」
先輩は走り出す。
反応が遅れて、俺も先輩に次いで走り出す。
その先には、転校生ーー喰空満が数人の女子生徒に絡まれていた。
なにやら不穏な空気……俺達には気が付いていない。
「君達……かつあげはいかんぞ。かつあげは」
女子生徒はすんなりその場から、立ち去った。
喰空は怯えている。
「大丈夫かい? 君」
「はい……」
コクっと頷く。
怪我は……ないな。
俺は安堵の深い息を吐き出し、横にあるビルの壁に寄りかかる。
「良し。一応、室久佐君の家に戻ろう」
町回りは終わり、家に舞い戻った。
喰空はおどおどしている。
「君……名前は?」
「喰空……満です」
差し出した麦茶を少し飲む。そして喰空は少し落ち着いた。
俺はベットに座る。
どうやら、俺達にもびびっているらしい。一度も目を合わせてくれない。
嫌われた?
いや、そんなはずは……。
「私の名前は、赤峰櫂河。よろしくね」
「赤峰……さん」
「それはそうと喰空さん。どうして絡まれていたんだ?」
「………」
沈黙と静寂。
俺、何か不味いことを訊いてしまったのか? でもこれの答を知らない内には何も出来ない。
訊いたことを後悔し、麦茶をすする。
「たまたまです」
彼女は重々しく口を開いた。
そしてーー。
「私、赤峰さんみたいな人になりたいです……」
と言った。
会ったばかりの赤峰先輩に憧れた? 俺と同じだ。俺も会ったばかりの赤峰先輩に憧れた。
なんとなく、人に憧れを抱かせる。不思議な人間の赤峰先輩。
「何それ。面白そう! 二人で室久佐君をいじめよう!」
「やめろッ!!」
ここから、喰空満は今のキャラを築き上げる。
読んでもらいありがとうございます!