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獣の神と高校生  作者: カミハラクロネコ
暴食の鮫
8/11

二話目

楽しく書くことをモットーにしてます!

 二年前の話をしよう。


 俺が喰空と出会った話を……。


 中学時代に喰空満は転校してきた。久しぶりの転校生で学校中が騒いだ事を、今でも覚えている。


 その日の放課後ーー俺はたまたま喰空と昇降口と鉢合わせしてしまった。


「すいません。職員室を教えてくれませんか?」


 この時はまだ、口調は優しかった。いつからああなったんだろうな……。


 初めて会った時から言い聞かせてやれば良かったか?


 そうに違いない。


 おっと話がブレた。


 いかんいかん話を元に戻そう。


 俺は渋々承諾して喰空を職員室に連れて行く。


「ありがとうございます」


 とニコッと微笑む。


 素直に可愛かった。喰空が色々と悩んでいるなんて考えもしなかった。


「あの……名前を聞かせてもらっても……?」


「室久佐速水です」


「室久佐……先輩」


 俺は(きびすを返して、その場から立ち去った。


 カップルがいちゃついてる校門を通り過ぎ、家路につく。


 さて、帰ったら何をしようか?


 漫画読んで、ゲームして、溜まったアニメでも見るか……。


 帰り道にある信号に引っかかって、青になるのをただ待っていた。


「室久佐君」


 後ろから女性に声をかけられた。


赤峰あかみね先輩……」


 赤峰あかみね櫂河かいが先輩。


 中学三年生の俺の先輩。高校一年生で見た目は、肩まで伸びた綺麗な黒髪、覇気を感じられない瞳、背は確か、百六十センチだったかな? 面倒見が良い性格で俺も世話になった。


 今思えば、どこか安曇あずみに似ている。


 こうして会うのは、久し振りだ。


「どうしたの? 彼女にでも降られた?」


「彼女何て元から居ませんよ」


「アレ? そうだっけ?」


 クスクスと笑う。


 綺麗な顔をしてるのに、言うことはかなり酷い。


「そうですよ……いませんよ」


 溜め息を漏らし、青になった横断歩道を渡る。


 赤峰先輩は後から追いかけてくる。


「怒った? ごめん。ごめん」


 ニコニコと笑いながらそう言った。


 面倒だ。


 赤峰先輩に会えたのは嬉しいが、今は疲れてるんだ。


「先輩、部活やってないんスか」


「やってるよ。室久佐君で遊ぶ部活」


 白い指で俺のほっぺをつつく。


 あー、完全に遊ばれてる。


 そして男性の視線が怖い。この地獄からいち早く脱出したい。


「あー、そうスか」


「反応が鈍いよー」


「うるさーい! 久し振りに会ってほっぺたつつきやがって!!」


「その反応待ってたんだよ!」


 俺の反応を嬉々として見ていた。


 しまった……思わずデカイ声を出してしまった。周りの視線が!


 俺は家に走って逃げ帰った。 


「ハァ……」


 ここまでくれば流石に……。


「いきなり走るなんて酷いなー」


 隣には引き離したはずの赤峰先輩が、額の汗を腕で拭い、俺に笑いかけた。


 この人は……本当に……


 面倒だ。


 先輩を部屋に招き入れ、麦茶を出す。


「まだ人助けしてるの?」


「してますよ」


「私がいなくても大丈夫?」


 中学時代の時に、俺と先輩で学校で困ってる人を無償で助けていた。


 高校では止めてしまったが。


 結構楽しかったな。


 でも、今は中学時代。もちろんこの時もやっていた。


「大丈夫ッス」


「町回りは?」


 町回りーー人助けの一環でしていた事だ。


「してないです」


 そう。


 やってはない。何故なら人助けをするのにはあまりにも、人が少なすぎる。


 先輩が居るときは、週に二回行っていた。


 まぁ、俺も受験生だしもうできない。


「じゃ、今日は久し振りにやろうよ!」


「え!?」


 先輩に無理矢理、町回りに参加させられた。


 しかし、半年ぶりにやった気がする。したかった訳ではないが、いつになく懐かしい。


 町はこの半年でなにも変わりはしない。


「あそこに、困ってる人が!」


 先輩は走り出す。


 反応が遅れて、俺も先輩に次いで走り出す。


 その先には、転校生ーー喰空満が数人の女子生徒に絡まれていた。


 なにやら不穏な空気……俺達には気が付いていない。


「君達……かつあげはいかんぞ。かつあげは」


 女子生徒はすんなりその場から、立ち去った。


 喰空は怯えている。


「大丈夫かい? 君」


「はい……」


 コクっと頷く。


 怪我は……ないな。


 俺は安堵の深い息を吐き出し、横にあるビルの壁に寄りかかる。


「良し。一応、室久佐君の家に戻ろう」


 町回りは終わり、家に舞い戻った。


 喰空はおどおどしている。


「君……名前は?」


「喰空……満です」


 差し出した麦茶を少し飲む。そして喰空は少し落ち着いた。


 俺はベットに座る。


 どうやら、俺達にもびびっているらしい。一度も目を合わせてくれない。


 嫌われた?


 いや、そんなはずは……。


「私の名前は、赤峰櫂河。よろしくね」


「赤峰……さん」


「それはそうと喰空さん。どうして絡まれていたんだ?」


「………」


 沈黙と静寂。


 俺、何か不味いことを訊いてしまったのか? でもこれの答を知らない内には何も出来ない。


 訊いたことを後悔し、麦茶をすする。


「たまたまです」


 彼女は重々しく口を開いた。


 そしてーー。


「私、赤峰さんみたいな人になりたいです……」


 と言った。


 会ったばかりの赤峰先輩に憧れた? 俺と同じだ。俺も会ったばかりの赤峰先輩に憧れた。


 なんとなく、人に憧れを抱かせる。不思議な人間の赤峰先輩。


「何それ。面白そう! 二人で室久佐君をいじめよう!」


「やめろッ!!」


 ここから、喰空満は今のキャラを築き上げる。


 


  


 


  


    

 


      





 

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