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獣の神と高校生  作者: カミハラクロネコ
嫉妬の猫
3/11

二話目

 人間のダークは感情を書きます

 楽しく書くことをモットーにします

         翌日。


 俺は昨日、猫にボコボコにされ、陰陽師の神西封馬じんざい ふうまさんに助けられた。


 学校をサボり、家で傷の完治を試みている。


 家に帰るさいに結界を張った公園を見に行ったがなんと、何者かに食い破られていたのだ。


 猫以外の誰かに……。


 一体、誰がやったのだろうか?


 ワンコに訊きたいが生憎、猫を追って奔走している。俺も手伝いたいが、流石に全身骨折をしているから、動きたくても動けない。


 唯一動かせるのが腕だけ……。


 あぁ、畜生! こんな事になるんだったら格闘技の一つでも習っとけば良かったぜ……。


 いや、無理か……痛いの嫌いだし。


 俺は完全に暇を持て余していた。


 時刻は昼の三時。


 ドラマの再放送を見ているが、残念なことに嫌いなドラマだった。


 猫にどうやって勝とう?


 気づけばそればかり考えてしまっている。


 圧倒的な力の差。


 でも、どうしてだろう。初めて会った気がしない……どこかで会った事があるのだろうか?

 

 分からない。


 考えすぎて頭が割れそうだ。


 寝返りがうてない俺は、真っ白な天井をじっと見たり、物思いにふけっていた。


「お邪魔いたします」


 玄関から声が聞こえる。


 聞き覚えがある声。


 耳をすましてみれば、階段を上がってくる音がする。


「失礼します」


 ドアが開けられると、そこにはーー。


「若宮さん!?」


 ショートカットの髪の毛。きっちりとした制服。ちょうど良い体のライン。そして綺麗な真っ黒な瞳。


 まさしく彼女だ。


 若宮安曇わかみや あずみ


 意外な来客。


 俺はとりあえず、驚いた。


 自分の声が骨に響く。結構痛い……。


「怪我、大丈夫ですか?」


「大丈夫かな?」


 痛みで、笑顔が出来ない。これじゃあ、余計に心配をかけてしまう。


 それだけは阻止しなければ……。


 彼女の手には鞄とおそらく、俺の家の住所が書かれているメモ用紙を持っていた。


 わざわざ来てくれたのか……。


「学校のプリント」


 鞄から封筒を取り出し、ここに置くねっと言って机の上に置く。


 そして、ノートを五冊取り出す。


 何だ? あれは?


「これ、今日やった授業のノート。余計だったかな?」


「いやいや、そんなことないよ!」


 体を無理に動かそうとして、激痛が走る。


 痛い! 痛い! ワンコの加護があるからここまでで抑えられてるけど。


 無かったらと考えるとゾッとする。


 本当に助かった。


「大丈夫!?」


 身を乗り出して、心配してくれているがその勢いのままでひびが入った肋骨に手を置かれた。


「あ゛ぁ゛あ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛!?」


 いっっっってぇぇ!! 


 可愛い顔をしてやってることは鬼畜だ!


 鬼畜系女子か!?


 嫌いじゃないが、今日だけはよしてほしいものだ。


「ごめん……なさい」


 椅子に座り、完全に下を向いてしまった。


 俺はオロオロしながら彼女から目を逸らす。見るのが恥ずかしかった。


 恥ずかしさを抑えて彼女を見てみると、こちらをチラチラと見ながら、何か言いたそうにもじもじしている。


「どうしたの?」


「あの……その……今日はあなたの奴隷です!」


「え!?」


 なんだそれ!

  

 むちゃくちゃ楽しいそうじゃねぇか!


「さっきの、お詫びです……」


 ほっぺにスリスリしたいよ!! 胸にダイビングしたい! 太ももをペロペロしたい!!


 はっ!


 いかんいかん。危うく理性が吹っ飛ぶ所だった。


 俺は性的要求の衝動に駆られたが、必死に自制した。多分今、目から血の涙を流していることだろう。


 耐えろ! 俺!!


「どうしたの? 血が出てるよ!?」


「これは、勲章だよ」


 自分でもなに言ってるのかが分からない。


 けど、よく我慢した。


 自分で自分を褒めたい。


「じゃあ、話し相手になってもらおうかな?」


「喜んで!!」


 テンション高いなー。


 目がキラキラしてる。もしかしたら、Mっ気があるのかな?


 鬼畜系Mっ気女子。


 新しいジャンルを確立したぞ。


 どんな話せばいいんだろう?


 そうだ。


「好きな人いるの?」


 王道に聞いているか。


 気軽に聞いた質問に彼女は簡単に答えられない。


 唇を噛み締め、悲しい目をして、何かを考えている。


 不味い事、聞いたかな?


「好きな人だっけ? いないよ」


 彼女は微笑む。


 だが俺はすぐにそれが嘘だと言うことに気づく。


 彼女の笑顔はどこか、曇ったような笑顔いや、作り笑いと言うべきか……。


 心の底からの笑顔じゃない。


「あの女さえいなければ……」


「え………?」


 え?


 聞き間違いじゃない。


 小声だが確かに言った。あの女さえいなければ、と。


「何か言った?」


「ううん。言ってないよ」


 また笑った。


 怖い……。


 俺は初めて女性の笑顔が怖いと思った。


 この曇った空の中に真実はあるのだろうか……? 今の所は分からない。


「疲れてるんだよ。寝ないと」


 そう……だよな。


 よりによって若宮さんにあるわけがない。


 ん……なんだか眠たくなってきた。


 気がついたら、俺は眠りについていた。


 

 起きたのは、六時くらいだったかな?


 目を覚ますと、椅子に座りながら寝ている若宮さんが居た。


 寝息をたててぐっすりと寝ている。


 可愛い……。


 襲いてー!! 抱っこしたい! なでなでしたいよー!!


「ん? 室久佐君……おきたの?」


 目が少し潤んでいる。


 綺麗だ……


 俺は生唾を飲み込み、じっと彼女を見つめる。


 ヤバいな……。


「あっ! もうこんな時間!? 帰らなきゃ!」


 ぺこりと頭を下げて、部屋から、家から出て行く。


 なんだか、若宮さんが少しおかしかったような。


 どうしてだろう? 

 

 いや、考え過ぎか……


 また、眠たくなってきた……。


 俺は疲労による眠気に負けて、寝てしまった。


「起きろ」


 目を覚ますと、ベットの上に俺以外に誰かいる。


「にゃん」


 俺をまたいで立っている猫が居る。


 状況が全く理解できない。どうして猫がこんな所に? どこから入って来た?


 全てが謎のまま猫を見てあることに気づく。


 この顔……どこかで……?

 

 まさか!


「あんた、もしかしてーー」


「お前と、話がしたい」


 俺の言葉をさえぎる形になってしまったが猫はお構いなく、話を続ける。


 俺と話がしたい?


 一体どうして?


 しかも今の俺はワンコが近くにいない。このまま攻撃されたら死んでしまう。


 かなり危険な状態だ……。


 猫の言う事聞いた方が良さそうだな。


「どうして私を追う?」


 顔を近づけて、漆黒の瞳がしっかりと俺の目を見つめていた。


「決まってる。ワンコが困ってるから」


 この言葉は嘘ではない。


 しっかり瞳を見つめ返す。


 やっぱり、この猫はーー。


 面影がちらつく。似てるような……いや、似て非なる存在と言うべきか。


 まだ確信は持てない。


「お前ーー」


「答は自分で見てこい」


 猫に首筋を噛まれる。


 軽い痛みを感じる。


 この行為に何の意味があるのだろうか? きっと何かがあるのだ。


 この先に何かが。


「じゃあな……えーっと、室久佐速水むろくさ はやみだったか?」


 そう言って、猫は窓を開け、飛び去る。


 なる程、そこから来たわけか。


「うっ!!」


 俺の体に頭痛と吐き気がいきなり襲ってきた。理由はきっと猫に噛まれたからだ。


 眠気が……。


 この先に答があるんだ。


 俺は気を失ったみたいに寝てしまった。


 気がつけば、目の前にダークブルーの海が広がっていた。


 溺れている。


 息が!?


 あっ、出来る。


 苦しくない。むしろ心地よいぐらいだ。身を任せていれば何も考えなくても良いんだ。


「ん?」


 どこかで女性のすすり泣く声が聞こえる。


 振り向くと、女の子が膝を抱えて泣いている。


 どうしたんだ?


 近づき、話しかける。


「大丈夫?」


「私の心を土足で荒らさないで!」


 彼女の怒号で俺の動きが止まる。


 これ以上近づけば、気に触れてしまうだろう。


「あの女さえいなければ……」


「え?」


 頭に言葉が流れてくる。


 憎い! 憎い! 憎い! 憎い! 憎い! 憎い! 憎い! 憎い! 憎い! 憎い! 憎い! 憎い! 憎い! あの女が憎い!!


 私からあの人を奪っていくなんて、死ねばいい!


 止めろ、止めろ! 止めてくれ!!


 いつしか周りの海が炎に変わる。


 指の間から顔がかすかに見える。


「名前を教えてくれ!!」


 彼女が口を動かした瞬間、俺は一気に現実に呼び戻される。


 名前が、名前だけ知りたい!


 くそ、目が覚める。


《速水、大丈夫か? うなされていたぞ》


 ワンコの声によって俺は起きた。


「なぁ、ワンコ」


《なんだ》


「ただ、勾玉を取るだけじゃあダメだ。罪の因子から助けてあげないと……」


 彼女の嫉妬心はえげつない。


 下手をすれば精神がおかしくなる。


 だとしても、俺は関わる。傷つこうが、精神がおかしくなろうが構わない。


 俺は心に固く誓う。


 救おうと。

 

 そのためにいくら傷つこうが怯まないとーー。


 


 


 












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