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獣の神と高校生  作者: カミハラクロネコ
嫉妬の猫
2/11

一話目

楽しく書くのをモットーにしてます!

 高校二年の春の終わり。


 俺はいぬと猫に出会った。真っ黒な戌。凶暴な猫に。


 いつも通りに学校に行き、部活もせずにただ帰ってきている。いつも通りじゃないのが、こいつ。


《勾玉! 勾玉! 勾玉!》


 うるせぇー・・・・・・こいつ毎日、毎日、勾玉、勾玉って、俺だって毎日探してるぜ? それでも見つからない。


「なぁ? ワンコ。本当に俺以外に見えないのか?」


 こいつの名前は俺が勝手に決めて良いって言うから名前はワンコにした。外見はいかついのに名前は可愛くしてみた。だが、案外名前を気に入ってるようだった。


 それで、俺の質問にはワンコは笑って答えた。


《当たり前であろうに、そんな事より勾玉を探すぞ! 速水はやみ


 助けてもらったのは感謝してるのだが、寝ても覚めても、勾玉、勾玉って。


 そろそろってか、もううざったい。


 ワンコと勾玉の事に頭を悩ませてると、俺は人にぶつかった。


「キャッ!!」


 相手は女の子だった。


 確か・・・・・・同じクラスの若宮安曇わかみや あずみだったかな? 成績優秀。生徒会で、しっかり者、そして可愛いパンツを履いている。


 たった今、見た。


 偶然見たんだ。わざと見た訳じゃない。


 パンチラとは言えないな……パンツはおおっぴろげて見せるものじゃない! スカートからちらりと見えるのが男のロマンなんだ!!


 まぁ、パンツが可愛かったから良しとしよう!


「あっ、大丈夫? えっと、若宮さん」


 俺は手を差し出す。


 若宮さんはパンツが見てるのに気がついて、手を取るより先にスカートでパンツを隠して、赤面。


 うわ、可愛い!


 どうしよう。むちゃくちゃ可愛い・・・・・・。


「あの? 見ました?」


「何を?」


 ここは嘘をつこう。


 見たと言ってやりたいが若宮さんに嫌われる確率はかなり高いだろう。


 流石に初対面の人に嫌われたいと思う人はあまりいないだろう。


 あまり喋らないが、可愛い声をしてる。


 声優みたいだ。


「あっ、すいません」


 若宮さんがやっと俺の手を掴んで立ち上がる。


 手が柔らかい。


 ショートカットの髪の毛をいじりながら、制服を綺麗にした。


「室久佐君、ありがとう……ね」


 顔を赤くしてその場からそそくさと立ち去る。


 俺の名前、覚えてくれたんだ。何か嬉しい。今日は良いことがありそうな気がする。


《惚れたか?》


 一通り見ていたワンコが俺にニヤニヤしながらそう言った。


「ちょこっとね」


 立ち去った若宮さんの後を目で追って、俺はゆっくりと息を吐き、歩き出す。


 さて、勾玉でも探すか・・・・・・。


 いまだにその手がかりすら見当たらないが、どうやらこの町にあるらしいから、希望はある。

 

 家に戻り、私服のパーカーとジャージに着替え、勾玉を探すため家を後にする。


 そんなこんなで今、町を歩いてます。


 いやー、案外てか、全然見つからないな。


「見つからないな……ワンコ」


《だな……》


「意外と砂利に混じってるかもな」


《そうだと、嬉しいな》


 そんな他愛もない話をしつつ、とりあえず公園に向かった。


 俺が猫に殺されかけた公園。


 ワンコに命を助けてもらった公園。


 良い思い出なんて一つも、微塵もない公園。


 その公園ーー。


 夜とは雰囲気をガラリと変え、小さい子がたくさん居た。


 俺の目的は砂地だ。


 そこに向かうと、若宮さんが小さい子と遊んでいた・・・・・・。意外だ・・・・・・さっさと家に帰って、我関せずみたいな顔して、ずっと勉強してると思ってた。


「室久佐君!!」


 俺に気づき、顔を隠す。


 隠さなくて良いのに・・・・・・一つ一つの行動が可愛すぎるだろ!


 そんな事を考えていると、一人の男の子が彼女のスカートをめくった。


「キャ!!」


 本日二度目のパンツである。


 こんな奇跡二度と起こらないだろう。男の子、グッチョブ!! そして、奇跡にありがとう。今日は最高の日だ!


 いやいや、違う! これじゃあ、言い逃れが出来ないじゃないか!!


 しまった・・・・・・。


 パンツを見れたことは嬉しいのだが、見たという事実を残してしまうのは良くない。


 さて、どうする・・・・・・?


「見ました?」


 ここは正直に。


「うん。見た」


 自分で出来る最高の爽やかな笑顔を浮かべた。


「変態!!」


 頬に衝撃が走る。


 彼女にビンタされたのだ。


 痛い・・・・・・すげー痛い。一瞬、何をされたか分からなかった。


 俺は子供に笑われ、渋々ベンチに腰掛けた。


「あの?」


 悲壮感に支配された俺に話しかけてきたのはビンタした本人ーー若宮安曇わかみや あずみだ。


 手には濡らしてきた、ハンカチを持っていた。


 彼女は隣に座り、濡れたハンカチを俺の頬に当てる。


「!?」


「ごめんなさい。いきなり、ビンタして」


 顔を赤くして、濡れたハンカチを当てる。


 顔は合わせてくれない。


 こりゃあ、嫌われたかな? いや、本当に嫌いならハンカチなんて当ててくれないだろう。すなわち俺は嫌われてないんだ!


 俺はここにいて良いんだ!


 なんだか、どっかのネタをぱくった気がする。


「室久佐君は、子供・・・・・・好きですか?」


「もちろん」


「性的な意味で?」


「それじゃ、ロリコンじゃないか!! 女の子は好きだけど、流石に幼女には手は出さないから!」

 

 あれ?


 なんだか楽しく喋れてるぞ? それと、どことなくいい雰囲気だぞ! これは何かあるのか?


 まぁ、結局何もなかった。


 うん! 次回に期待しよう!


 てな訳で、今一緒に帰ってます。


「若宮さん、もうすぐ夏だね」


 ここは何としても、会話をしよう!


「夏は嫌いです。暑いから」


 しまった!!


 地雷を踏んだ!


 室久佐速水の人生の中で一番の失態だ! 何とか挽回せねば!


「でも、夏の日差しは好きです」


 ニコッと微笑みかけてきた。


 かっ・・・・・・可愛い!!


 今までの中で一番の笑顔だ!!


 ヤバい! 惚れる! これはヤバい笑顔だ。これで落ちない男は居ないぞ。


「そっか……それは良かった」


 信号に引っかかり、赤から青になるのを待つ。ここの信号は長いから嫌いだ。


 隣にいる若宮さんの方を向くと、彼女は道の先に歩いているカップルを、悲しそうな顔をしながらずっと目で追っていた。


 クソ、リア充め!!


「すいません。私はこれで」

 

 青になった瞬間、彼女は走り去っていった。


 そんなに俺といるのが嫌なのかな? ショック過ぎるぜ……。


 俺は奇しくもカップルと同じ道を、カップルを追うような形になってしまった。


 目の前でイチャイチャしやがって。


「うわぁぁ!?」


 カップルの前に猫耳を生やした女の子が着地した。あれは・・・・・・。


 あの猫だ!!


《速水、あいつだ》


「分かってる!」


 ワンコの奴、いつから居やがったんだ。時々いなくなったり、現れたりするのはよしてほしい。


 俺は走って、カップルをかばう。


 猫と会ったのは二度目だ。


 殺されたイメージが、フラッシュバックする。


 今回はやられる訳にはいかない。徹底的にやってやるよ。


「よぉ、猫」


 猫はうちの柿別かきべつ高校のセーラー服を着ている。


 相変わらず、飄々としている。


 真っ黒な瞳。ショートカットの髪。猫耳。そして俺を嘲笑う。


 あの時と何も変わりはしない。


 俺を殺した時とーー。


「誰? お前」


 ジャンプして、家の屋根の上に上がりそのまま走り出す。


 人間離れしてやがる。


《私が追う》


 ワンコが飛び、猫を追う。


 俺も急いで行かなきゃ。


 ワンコと猫を追って、裏通りを走り抜ける。あの二匹は速い。全然、追いつけない。


 人間にはこれが限界だよ!


 少しは待てよ!!


 ワンコが先に回り、猫を追い詰める。そして空き地に叩き落とす。


「ワンコ!!」


 ワンコと猫が睨み合っている。今すぐにでも飛びかかって喧嘩しそうだ。


《猫よ、私の勾玉を返してもらおうか。貴様が持っているのだろう?》


《久しいわね。戌神》

 

 猫の上にさらに猫が!?


 幻覚じゃない! ワンコと同じだ。精霊とか神とかそんな類のやつだ!


《確かに、我が持っているわ。でもこの嫉妬の勾玉はこの子と、我が必要としているのよ》


莫迦ばかが、罪の因子に捕らわれおって。それが、私以外の者が触れると危険だと言う事が何故分からない!》


 猫は高笑いし、ワンコに近づく。


 オイオイ、ここで怪獣大戦争を起こすきかよ!? ふざけんなよ!!


 俺はどうすれば良いんだよ・・・・・・。


 俺には状況が分からないまま、話は続く。


《こざかしい! さっさと返せ!!》


 ワンコの腕が実体化して、猫を切り裂く。


 だが、猫は霧のように消えてしまった。


《また会いましょう》


 逃げられた・・・・・・・・・。


 被害者を食い止めるチャンスだったのに、勾玉を手に入れるチャンスだったのに。


 俺は千載一遇のチャンスを逃してしまった。


 また一から探さないと・・・・・・。


 面倒だ。


「ワンコ、勾玉にも種類があるのか?」


《七つの大罪と同じだよ》


 七つの大罪ーー。


 名前は聞いたことがある。


 確か・・・・・・嫉妬、暴食、憤怒ふんぬ、怠惰、色欲、傲慢ごうまん、強欲。この七個だったかな?


 今のは、嫉妬だよな。


《私は、日本の大罪を制御するために生まれた戌神の一族。だが、ある日私の勾玉が全て消えていたのだ》


「大変だな……ワンコ」


 その夜。


 俺はあの公園に来ていた。


 昼間とは雰囲気をガラリと変え、カップルがいっぱいいる。


 ちょっと、イライラするぜ。


 俺って小さいな……。


《む、来たぞ》


 公園のど真ん中に着地。


 カップルが叫び、逃げる。


 作戦通りだ。


 嫉妬だから、きっとカップルがいっぱい居る場所に出てくると考えたからだ。


「また会ったな」


「また、お前か」


 そう言った瞬間ーー。


 彼女は問答無用に襲いかかってきた。


「うぐぅっ!!」


 俺の腕が湾曲する。


 骨が折れる音が体に響くと、次に襲って来たのは耐えることの出来ない激痛。


「あ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ!? 痛い! ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛あ゛!?」


 痛い! 痛い! 


 やっぱり、痛みには慣れない。もう体が限界を迎えてる。一撃が重い!


「死ねぇぇッ!!」


 折れた腕を掴まれ、簡単に投げ飛ばされる。そのまま街灯に直撃する。


 息が・・・・・・出来ない。


 ワンコは何をしてるんだよ。


「ハァ、ハァ、ハァ、ふざけんなよ」


 彼女に腹を殴られ、肋骨にひびが入った。そして、足で俺の頭を挟み、後ろに回り、俺を投げ飛ばす。


 体が動かない。


 反撃も出来ないままやられっぱなしだな、こりゃあ・・・・・・。


「死ね! 死ね! 死ね!! 死ね!! 死ね!! 死ね!!」


 俺の腕を膝で押さえつけ、顔を殴り続ける。


 あれ?


 泣いてる?


 そうーー彼女の真っ黒な瞳が、確かに潤んでいた。


 どうして?


 あっ、意識が・・・・・・。


「そこまでだ。猫のお嬢ちゃん」


 誰だ?


 若い男の声がする。


 彼女が俺から、飛び退く。


「今日は、非リア充が多いな……」


「僕は、ソロ充だよ」


 彼女との距離を詰め、背負い投げで公園に戻す。


 くるくると彼女は空中で回り、着地する。


「オンリークハクラマヤサナダイスロクリーカ!!」


 若い男がそう言うと、公園に結界が張られた。木や、アスレチックスに札がついている。


「よし、ひとまず、安心だな……この子を治療しないとね」


 気がついたら、俺はベットに寝ていた。


 最後の記憶は結界が張られた所だ。


 体が痛い・・・・・・。


「起きたかい?」


 あの声の主だ。


 俺を助けてくれた、若い声の主だ。本当に助かった。


「あなたは・・・・・・?」


「僕は、愛と勇気の伝道師。神西封馬じんざい ふうま、陰陽師だ。よろしく。えーっと?」


《速水だ》


 ワンコが部屋の中でくつろいでいた。


 こいつ! 俺が死にかけてるって言うのに、薄情な仲間だ!


《すまんな。速水。戦ってる最中、回復させるだけで手一杯だった》


 さっきの言葉は撤回。


 めっちゃ良い奴だー!!


「こっちこそ、ごめん。勾玉取り返せなくて」


 起き上がろうとしたら、激痛が走った。


「うぐぅっ!?」


「君は、三回は全身の骨が砕けてるから、無理は出来ないよ」


 三回かよ。


 良く、生きてるな……俺。やっぱり、ワンコのおかげか。


 あとでお礼をちゃんとしなきゃな。


 ともあれ、今日は強力な人が味方になった。これで勾玉集めが楽になる。


    


 

 

   














 













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