あいつの涙と神様
俺は、あいつが泣かなくなるまでずっと傍にいてあげた。
なのにあいつときたら「俊、帰ってきてよ・・・。」ってずっと呟いてるだからやるせないね。
俺はすぐ傍にいますよって言いたいぐらいだぜ。
ま、実際声の限り叫んでたんだけど。
あいつには届かないみたいだな。悲しいぜ。動物には分かるみたいで、あいつの飼い犬の「健太」が俺に向って吠えてくる。マジ困るよな。言葉まで分かるようになってきちゃってよ。
『あっれ、お前どっかいったんじゃなかったのかよ!?さっさと御主人様に会ってやれよ。誤解してるぞ。』
それが出来るなら、苦労しないから!おい、犬。俺を見てももう話しかけるなよ!
『つれないナー。』
うるせぇ!
何て会話しながら、犬と話すなんて他のヤツに見られたら!と思って周りを振り返ってげんなりしたね。誰も俺の事なんて見てねぇの。ちげぇな。見えないらしいね。
生きてた頃はみんなの目線の先は俺ばっかりだったのによ。初めて死んだことを後悔したぜ。
あの喝采をもう浴びられねぇなんてな。
「ふん、悠長なものだな。子どもで浮遊霊になった魂があるとか言うから、わざわざ見に来てやったというのに。」
と思った瞬間に「見」に来てくれた人がいるようだ。
「妾を人と一緒にするな。失礼な奴め。」
え、じゃあ人じゃないのかな?
「当たり前だ。聞いて驚け。妾は神様だ。」
すげー!!なんか、ヒーローと同じぐらいスゲーなぁ!
「何を言う。妾はヒーローより偉い。」
マジで?そりゃすげぇ。なにがどう偉いんだ?
「そうだな、例えば妾なら悪い奴は一瞬で消せるし、弱い奴は一瞬で消せる。」
おい!駄目じゃねーか!
「何処がだ?必要とあれば雨も晴れにできるし、山作れるし、火山噴火できるし、津波起こせるし、人間を生み出しているのは妾だぞ。」
おお・・・なんだかわかんねぇけどすげぇ!
「そうだ、ヒーローを作ったのも妾だしな。多分。」
マジかよ!そりゃすげぇや。
「ちなみに妾の趣味は魂集めだ。おとなしく捕まりたまえ?」
疑問符が怖い!
逃げろ!待て待て、今まではあいつにくっついて来たから、動き方が分からねぇ!
足が、地面をすり抜けて踏みしめられねぇ!?
「まだ幽霊になったばかりのお前がこの神である妾に勝てるとでも?笑止千万だな。」
しょうしせんばんってなんだろ?
あ、そんなこと考えてる暇ないや、とりあえずどっかに逃げなきゃ!あいつの家からはとりあえず出なきゃ。あいつに迷惑かけられない。
「余裕だな。お前。この家から出れると思ってるのか?」
何で俺の考えてることが分かるんだ!?
「馬鹿だな。幽霊には口がないからすべての言葉は漏れているんだ。だから、お前の考えている事なんて動物や、この神である妾には筒抜けなのだ。」
そりゃやべぇ!俺があいつのこと好きってばれちゃうじゃんか!
「ふむ。未練ってそれか。詰まらんな。」
ひでぇ!じゃなくて、即刻好きってことがばれたぁ!
そんなことを喚いてると捕まっていた。やっぱり走れなかったからかな?
「馬鹿だな。幽霊は走るんじゃなくて飛ぶんだぞ。当たり前だろうが。」
・・・!!
「それでは未練はすっかり忘れて、妾の部屋に行くぞ。」
そんな、あいつはまだ泣いてるのに。俺の事を悲しんでくれるのは嬉しいけどやるせないね。
俺はあいつに笑ってほしいんだがなぁ。
俺が居なくても笑ってほしんだがなぁ・・・。
俊君は基本ポジティブシンキングです。
だから神様とかもすんなりと信じちゃいます。