第十九話 初めての遊園地(後編)⇒そして浩信は子供に
遅くなりましたが、遊園地の別行動後の話です~
竜心・浩信・那美・静とうまく分かれた武仁・賢治・灯・千香は、竜心たちからある程度離れたところで立ち止まり、顔を見合わせてニヤリと笑った。
「いやー うまくいったなー」
と武仁が言うと、
「まあ、ある程度ヒロにはバレてるだろうけど、別れてしまえばもう大丈夫だね」
と賢治は浩信の状況を察しながら答える。
「えー! バレてたらマズくない!?」
と千香が悲鳴を上げるが、賢治は落ち着いて答える。
「ヒロと那美を2人にするっていうのが目的でしょ? ならオッケーだよ」
「まあ、ヒロならバレてもゴネることはないだろーな」
武仁はもうなずきながら同意する。
「そうなの?」と灯が聞くと、
武仁は、「ああ」とうなずき、
「ヒロはぶっきらぼうに振る舞っているようで、しっかり空気を読むヤツだからなー
ゴネて向こうの4人の空気を悪くするようなことはしないだろうな」
と答える。
それを聞いて千香が、
「わー! 名張君も清永君もそこまで考えて企んでたのー? ワルねぇ」
と目を細めてじとーっと2人を見ながら言うと、賢治が笑いながら答える。
「まあ、いつもヒロにはいろいろしてやられてるからね。たまにはお返しししないと」
「だな」
と武仁も同意する。
そこで、灯が初めて気付いたように発言する。
「あれ? そういえば、那美も山本君もいないこの4人で遊ぶのって初めてじゃないかな?」
「……そういえばそうだね」
と賢治が同意する。
「アハハ! なんか今更よねー!」
と千香が笑いながら言い、
「まあ、俺たちは俺たちで思い切り遊ぼうぜ!」
と武仁は誤魔化すように少し大きめの声で3人に声をかける。
少し照れたような雰囲気の中で、武仁・賢治・灯・千香の4人はどこから回るかを決めていくのだった。
賢治が察した通り、浩信は薄々武仁たち4人の意図に気付いていたが、気付かぬフリをして、
「じゃー 俺たちも回ってくかー」
と竜心・那美・静に声をかける。
那美も何となくおかしいなと思いながらも、「そうね!」と答える。
竜心と静は「お前に任せた!」とばかりに浩信をみつめて指示を待つ。
浩信は少し考え、そしてニヤリと笑いながら、
「最初はジェットコースターから行ってみるか!」
と言って近くに見えるジェットコースターの方に歩いていく。
那美は「まったく」と浩信のいたずら心に呆れ、浩信について歩きながら、
「会長、古賀君、ジェットコースターは大丈夫?」
と聞く。
静は目の前に見えるジェットコースターと乗っている客の「キャー!」という悲鳴に少し怯みながら、
「私は大丈夫よ!」と強がる。
竜心は「あれかー」とのんびりジェットコースターを眺めながら、
「俺も大丈夫だと思う」と答えた。
リバマンパークは遊ぶ施設の数が多いため、よほど人気の施設でなければそれほど並ばなくても遊べるようだ。
4人は2組待ちで列に並ぶ。
静が竜心に、
「古賀君は本当に大丈夫? 遊園地は初めてでしょう?」
と声をかける。
竜心が「大丈夫だと思います」と平然と答えると、
「ほんとに? 強がったりしてない?」と重ねて聞く。
「ええ」と竜心は答える。
浩信がニヤリとしながら、
「かーいちょー もしかしてビビってんすかぁー」
と冷やかすように静に言うと、静は、
「そんなわけないじゃないの! 失礼ね!」
とむくれながら反論する。
那美は冷やかしに参加しないものの「会長かわいー」と面白がる。
竜心たちが乗る順番が回ってきた。
浩信がまたニヤリとしながら、
「かーいちょー 一番前が空いてますねー
やっぱ一番前が一番楽しいですよねぇー」
と静を挑発する。
静はしっかり挑発に乗って、
「ええ、もちろんよね!
古賀君、一番前に行くわよ!」
と竜心の腕を引っ張り、一番前に乗り込む。
竜心は、
(いつも会長に俺がからかわれているが、会長がからかわれているのを見るのは新鮮かもしれないな)
と思いながら、2つずつ並んだ席の一番前の静の隣の席に着く。
竜心は座った後どうすればいいかわからずに静に聞くが、静も不安になって後ろに乗った浩信と那美に尋ねる。
聞いたとおりにベルトを締めて上がっていた安全バーを下す。
「おお!」と竜心が驚いた声を上げる。
静が「やっぱり古賀君も怖いのね!」と思いながら、嬉しそうに竜心に「どうしたの?」と声をかける。
「いや、自由に身動きが取れないというのは意外に不安になるものだと思いまして」
と竜心が感想を述べる。
「そうでしょー」
静がにこにことしながら同意する。
浩信は2人の会話を聞きながら、
(まあ、竜心は自分でジェットコースター以上の速さで動けるだろーが、拘束されながらというのはなかなかねーだろ。
それにしても会長は竜心と一緒にいると途端に大人げなくなるなー)
と考え、苦笑する。
那美は「何か、今日の会長は可愛いわねー」と小声で浩信に話しかけ、浩信は吹き出しそうになるのをこらえて「だな」と答える。
プルルルルルルルル……
とスタートする合図のアラームが鳴る。
ガタンと音を立てて、4人が乗っているジェットコースターが動き始める。
「おお」と竜心がいちいち驚く。
「!」と静はいきなり余裕がなくなって声を出さなくなる。
カ・カ・カ・カ……とチェーンを巻き上げる音とともにゆっくりとジェットコースターが坂の頂点の方へ登っていく。
この当たりで竜心は慣れてきて、周りの景色を眺めながら、リバマンパーク全体の広さなどに驚いて「おー」と感動の声を上げている。
静はうつむきながら目をつむっている。
坂の頂点に到達する少し前くらいで、竜心が静に「会長、大丈夫ですか?」と尋ねる。
静が目を開いて力なく「ええ、大丈夫……」と答える途中で頂点に到達し、一気に下り始める。
「よぉぉぉぉぉキャーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー」
静が竜心に答えようとして少し気を抜いた時に下り始めたため、余計にインパクトがあって静が悲鳴を上げる。
竜心は「わざとじゃなかったんだが、悪いことをしたかな?」と思いながら、「確かに身動きできない状態でこのスピードは少し怖いな」と冷静に考える。
那美は素直に楽しげに手を上げて「キャーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー」と声を上げている。
浩信は静の想像以上の驚きようがツボに入って、
「アッハッハッハッハッハッハーーーーーーーーーーーー」
と思い切り笑っている。
竜心たちが乗ったジェットコースターが降り場に到着した。
静が明らかに憔悴した様子でよたよたと降りる。静の目に少し涙がにじんでいるように見える。
ちなみに浩信は涙がこぼれた跡が残っている。これは明らかに笑い泣きの跡だ。
施設を出た途端、浩信がまた笑い出す。
「はっはっはっはっは……いやー、会長! 最高でしたよー」
那美も笑いそうになるが、必死でこらえる。
静がジト目で浩信を見ながら、
「何よ……」とふくれる。
竜心はフォローしようとして、
「いや、身動きできない状態で振り回されるというのはなかなかない体験で少し怖かったなー」
と発言すると、静が竜心をキッとにらみ、
「何よ! 古賀君があんなところで声をかけるから余計に驚いたんじゃない!」
と非難する。
竜心が「すみません」と素直に謝ると、静は居たたまれなくなって「いいわよ……もう」とぼそぼそと答える。
那美は苦笑しながら「まあまあ」と静をなだめる。
それから浩信がまた静を挑発し、静が乗って……というパターンでフリーフォールや船の形をして前後に180度動くバイキングなどをこなしていき、疲れたところでお化け屋敷に行くことになって静が竜心に抱きついてしまうハプニングもあったりしながら、「とりあえず休憩」ということでベンチで休むことになった。
「いやー 完璧超人の会長も、こんな分かりやすい弱点があったんすねー」
と浩信が静を冷やかす。
那美が浩信の腕を叩きながら「いい加減にしておきなさいよ」とたしなめる。
静はさっき竜心に抱きついてしまったことで恥ずかしいやら自己嫌悪やらで「ううう」とうつむいてうなっている。
竜心は隣で頬をポリポリかきながら「ははは」と苦笑している。
浩信は少しバツの悪そうな顔をして、
「いやー 調子に乗り過ぎちまったかな?
まーお詫びってことでジュースでも奢りますよ」
と立ち上がって途中で見つけていた自動販売機の方に向かった。
「私も手伝うわ」と那美がついていく。
2人になったところで、静は竜心に話しかける。
「なんだか今日は格好悪いところばかり見せてるわね」
「いえ。いつも頑張っていますし、こういう時くらいはいいんじゃないですか?」
「ふふっ。そうかしらね」
と静が少し調子を取り戻して応じる。
「ええ、それに楽しんでもいたんじゃないですか?」
と竜心は気付いたことを話す。
「ふふふっ。わかる? こんなに素直に感情を出して遊ぶのは久しぶりね。
そういう意味では山本君の意地悪にも感謝かしらね」
静が微笑みながら答える。竜心もうなずく。
竜心と静がのんびり会話している途中で、竜心がふと立ち上がって静に「ちょっとすみません」と断って、走っていく。
竜心が向かった先で、小さい女の子が泣きながら一人で歩いていた。
竜心はその子の前でしゃがみ、「どうしたのかな?」とゆっくり尋ねる。
「おかあさんがいないの」と女の子は答える。
竜心は近くの気配を探るが、誰かを探すような気配は感じない。
「そうかー」と竜心が困った顔をすると、女の子はその顔を見て余計に「うわーん」と泣き出す。
竜心が「しまった」とオロオロすると女の子はさらに「わーん」と泣き出す。
収拾がつかなくなったその時に、竜心を追いかけてきた静が到着して、しゃがんでいる竜心の頭をポンと叩いて「私にまかせて」と言った。
静がしゃがんで女の子に話しかける。
「こんにちは」
女の子はめそめそ泣きながらも「ごんにちわ」と挨拶を返す。
「私は静っていうの。あなたのお名前は?」
「……くみ……4さい」
「くみちゃんっていうのね。よろしくね」
と涙と鼻水でぐちゃぐちゃになった手を構わずに取って握手する。
「あなたの苗字はなんていうの?」
「みょうじ?」
「ええ。私は村上静で苗字は村上よ」
「……たなかくみ」
「たなかっていうのね。ありがとう」
静は一呼吸おいて、
「お母さんとどの辺りにいたかわかる?」
女の子はぶんぶんと首を横に振る。
また女の子が泣きそうになる。
「じゃあ、探しにいこっか。
お姉ちゃんとこっちのお兄ちゃんが手伝ってあげるから、すぐに見つかるよ」
と静が明るく言うと、女の子は大きくうなずいて「うん!」と笑った。
静がハンカチを出して女の子の手を拭いてあげているところで、浩信と那美がやってきた。
「おー ベンチにいなかったから探したぜ。
迷子か?」
浩信がカップのジュースを両手に持ちながらしゃがんで女の子に話しかけようとする。
女の子はびくっとして、静の後ろに隠れる。
静が「どうしたの?」と聞くと、
「あのおにいちゃんちょっとこわい」と女の子が答える。
どちらかというと子供に好かれる方だと自負していた浩信はショックを受ける。
那美が笑いながら浩信に「怖がられてるよ」とつっこむ。
静が「うーん」と少し考えて、
「じゃあ、私と古賀君でこの子の親を探すから、山本君と天地さんは2人で行動してもらえるかしら?
……山本君がこの子に怖がられているしね」
とさっきの仕返しとばかりに浩信に冗談交じりにやり返しながら提案した。
浩信は「うっ」とダメージを受けて言い返せない。
那美が代わりに答える。
「わかりました。ではそうします。
……ほらヒロ! 行くよ!」
那美は両手に持っていたジュースを竜心と静に渡し、しゃがんで落ち込んでいる浩信の腕を引っ張って離れていった。
「じゃ、いこっか」
静が女の子と竜心に声をかける。
女の子が竜心をじーっと見て、両手を前に出して、
「かたぐるま!」
と催促した。
竜心はさっき那美から受け取ったジュースを静に「お願いできますか」と渡してから、
「よし!」と女の子をひょいと持ち上げて首に跨らせた。
女の子は「きゃはははは!」とさっきまでと違って大喜びだ。
静は「よかったわねー」と女の子の方に首を上げて微笑む。
女の子は「うん!」と大きくうなずく。
まず近くの案内板に向かって一番近い連絡センターの場所を探す。
全部で4ヵ所あり、今いる場所はちょうど近い方の2ヵ所の間に位置しているようだ。
「とりあえず、こちらに行って、もしいなければ別の連絡センターに連絡してもらいましょうか」
と静が方針を決め、一方の連絡センターに向かう。
途中で女の子にジュースをあげたり、それを竜心の頭の上にこぼされて静が笑いながら拭いてあげたりしながら連絡センターに着いた。
静が係員に「『たなかくみ』ちゃんを探している方は来ていませんか?」と尋ねる。
係員は「こちらには来てないですね。……ちょっと待ってくださいね」と他の連絡センターに内線で連絡する。
「あー、はいはい! こちらに連れてきた方がいましたよ! ええ。それではこちらで待っていたらいいですね」
と内線でやり取りした後、「お母さんがこちらにきてくれるよ」と女の子に笑って話しかけた。
「わー!」と女の子ははしゃいで竜心の頭をぺちぺち叩く。
竜心は構わず女の子を見上げて微笑んでいる。
静も「ふふっ」と女の子と竜心のやり取りをみて微笑む。
少し経ってから「くみっ!!」と三十歳くらいの女性が連絡センターに駆け込んできた。
竜心が方から女の子を降ろしてやると、「おかあさん!」とその女性のところに女の子も走って行った。
「もう! 勝手に先に行ったらダメよって言ったのにこの子は……ずっと探していたのよ!
あ、ありがとうございました。本当に」
女性は女の子を抱きしめながら、竜心と静の方を向いて礼を言った。
「いえ、よかったです」と竜心が少し照れながら答える。
「ええ、本当に」と静が微笑みながら答える。
女の子の父親と姉が向こうの連絡センターで待っているということで、竜心と静は2人を見送った。
「おねえちゃん、おにいちゃん、じゃあねー」
と女の子が手を振り、竜心と静は「じゃあねー」と手を振りかえす。
「本当に、親切なカップルの方に見つけてもらってよかったわー」
と女性が去り際に言う。
「いや、そんなのでは」と竜心と静は顔を赤くし、首と手を振って否定するが、すでに女性は去った後だった。
「はー……ふふふっ。カップルに間違われちゃったわね」
と静が先に気を取り直して竜心にふざけて話しかける。
「いや、ええ、まあ」と竜心がモゴモゴとつぶやく。
「何? 嫌だったの?」と静がふくれたフリをして竜心をからかう。
竜心は慌てながら「いや、そんなことは」と手をバタバタとさせながら否定する。
そんな竜心を見て静は吹き出し、「あははは」とお腹を抱えて笑う。
竜心は困った顔で所在なげに棒立ちになる。
連絡センターの係員は「青春だねぇ」と小声でつぶやき、見ていないフリをするのだった。
一方、浩信と那美は、乗り物に乗って銃を撃って現れる敵を倒すアトラクションや、輪投げで景品を狙うアトラクションなどで熱くなって「勝負!」となり、ジェットコースターに連続で乗ったり、コーヒーカップを回しまくったりしてどちらが先に音を上げるかの勝負になり、互いにへとへとになってまたベンチで休んでいた。
「いやー さすがに疲れたなー」
「そーねー」
またジュースを買ってぐったりとしながら話す。
浩信がニヤリとしながら、
「お前と2人だとついムキになって勝負しちまうなー」
と那美に話しかける。
那美は微笑みながら、
「私もあんたと一緒だとムキになってしまうわねー」
と答える。
浩信は「ふー」と息をついてから、
「こうして2人で遊ぶのは……小学校以来か?」
と那美に聞く。
「そうね」と那美はすぐに答える。
少しの間、2人とも黙っている。
那美が浩信に話しかける。
「ヒロ。あんた高校に入ってから少し変ったわよね」
「そうか?」
「うん。少し肩の力が抜けたっていうか」
「あー……そうかもなー」
また間ができる。
那美が少しためらいながら続ける。
「中学の時は何だか張りつめているっていうか、無理しているようなカンジだったわ」
「ああ……気付いてたのか?」
「ええ。わかりやすかったもの」
「あんまし周りには気付かれねーようにしてたつもりだったんだがなー」
「まあ、私はあんたと付き合いが長いからね」
「そっか……」
那美が思い切って聞いた。
「何があったのか、聞いていい?」
「ん? ああ……そうだなー
……お前になら構わないか」
浩信はだらけていた姿勢を正して那美の方に向き直って中学生の頃のことを話し始めた。
「俺が中学に上がった時にな。
親父やお袋、兄貴や姉貴と自分の違いが目につくようになった。
ウチは親父やお袋に兄貴もみんな自分で会社を自分で立ち上げたことは知ってるだろ?
ちょうど俺が中学に上がる時に大学に上がった姉貴も会社を立ち上げる準備を始めてな。
それまでもいろんなことを教えてもらってはいたんだが、このままでいいのかって焦るようになった」
「そういえば、中学に上がってからいきなりいろんなところで手伝ったりするようになったね」
「ああ、そうだな。
人の繋がりが大事だって教えられてきたが、それまではずっと同じような仲間でつるんでたからな。
このままじゃマズイと思っていろんなところに顔を繋ぐようにしたんだ。
いろいろ動いているうちに繋がった先での厄介ごとにも絡むようになって、まあいろんな経験はさせてもらったな。
だが、そうやって経験を積んでくと、逆に親父たちと自分の違いがわかるようになってきちまった。
それで『もっと、もっとだ』と焦り、さらにいろいろ手を出したりしたな」
「私だけじゃなくて、タケやケンともあまり遊ばなくなってたもんね」
「あいつらはあいつらでいろいろ状況が変わってたりしたしな。
まー中学を出るまで俺がずっと焦ってたってのは間違いねーな」
「ふー」と浩信は一息ついた。
那美は浩信に聞いた。
「高校に入ってから変わったのは……古賀君のおかげ?」
浩信は少し驚いて「わかるか?」と聞き返すと、「ええ」と那美が当たり前のように返す。
「なんか古賀君って一生懸命っていうか……こちらの環境に慣れてないんだろうけど、目の前のことを真面目にがんばってるよね。
なのにどっか間が抜けてて、とっつきやすいっていうか」
浩信は「ははっ」と吹き出しながら、
「まーそーだな。
あいつと知り合ってつるんでる間に、何か焦りがなくなってったなー
まー打算的かもしんねーが、竜心のようなヤツは親父たちの人脈にだっていねーだろうってのもあったんだわ。
それと、あいつにいろいろ教えているうちに、自分のできることがいろいろ見えてきたっつーのもあったな。
まーそんなカンジで今は面白おかしくやれてるよ」
と吹っ切れたような顔で話した。
那美は、
「ええ、私は今のヒロの方がいいと思うわ」
と優しい顔で告げる。
浩信は、
「そうか」
と嬉しそうな顔で答えた。
夕方の18時。
予め決めてあった集合場所に、武仁・賢治・灯・千香の4人、竜心と静の2人、浩信と那美の2人がそれほど時間差なく集まった。
武仁と賢治が浩信の方を見てニヤリと笑い、浩信は苦笑しながら2人に「次は覚えてろよ」と小声で言った。
武仁たち4人も竜心たち2人も、そして浩信たち2人も、どこか距離が縮まったような、そんな雰囲気がそこにあった。
しかし、下川山駅に向かう途中で静が「もうすぐ中間テストね」と言ったところで、
武仁・千香の「あー! 聞きたくなかったー!!」という声が響き渡り、甘い雰囲気はきれいさっぱりと消え去ったのだった。
遊園地の描写で結構てこずりました・・・なんせ、自分が遊園地に行ったのがいつだった思い出せないほどの過去でして(^^;
そんでもってちょっとは甘い雰囲気を出したかったんですが、これまた経験不足で難しく。。。
リア充じゃない者がリア充を書こうとするとこんなに苦労するのかと思い知りました(T-T)




