第十七話 来週は遊園地⇒そしてあの人も参戦
GWに遊びに行く予定を立てます。
合宿研修明けの月曜日。
竜心・浩信・賢治に、バスケ部の朝練がなかった武仁も交えて4人でGWの話をしていた。
「俺はGWも部活があるけど、5月4日は丸1日部活がないんだ。どっか行かないか?」
と武仁が3人に提案する。
浩信が、
「そーいや、竜心をいろいろ連れまわそうという話がほとんど進んでなかったなー
休みだし……遊園地か?」
と案を出す。
「遊園地か……新しくできた下川山市の遊園地もそんなに遠くないのに、全然行ってないねー」
と賢治が思い出しながら言う。
竜心は、
「はー 遊園地か……」
と知識でしか知らない遊園地に少し心惹かれたようだ。
武仁は難しい顔をしながら、
「遊園地か……それはいいんだが……男4人で行くのは寒すぎるなー」
と少し乗り気ではないようだ。
近くで話していた那美が、「ねえねえ」と4人に声をかけてくる。
「GWに遊園地に行こうって話になってるの?
私たちもいつか行こうかって話してたんだけど、よかったら一緒に行く?
ちょうど合宿研修のグループのメンバーだし」
那美と話していた、合宿研修で料理担当だった「宝田 灯」と、一人料理ができなかった「片瀬 千香」の2人も乗り気な雰囲気で4人を見ている。
浩信・武仁・賢治の3人は「どうする?」というように目線を交わし、竜心は「みんなで行くと楽しそうだな」と考えて少し口元を緩ませる。
浩信が、
「まー華があった方が……つっても那美じゃアレだが、面白そうだしな。
竜心の遊園地デビューってこともあるし、5月4日はこのメンバーで遊園地に行くかー」
とニヤリとしながら言う。
那美は「アレって何よ!」と肩を叩きながら怒ったフリをするが、顔は楽しそうな雰囲気を隠せずに、
「それじゃ決まりね!」
と宣言する。
二限目と三限目の間の休み時間。
1-Hの三限目は化学の授業で三階の理科室で実験をすることになっており、竜心は先に一人で向かっていた。
向かう途中で生徒会長の静が歩いていた。
「あら、古賀君」
と静が竜心に声をかけてくる。
「おはようございます。会長」
と竜心は頭を下げて挨拶する。
「ふふっ。おはよう。古賀君は本当にいつも真面目よね」
と静が微笑みながらお決まりの評価を下し、竜心は「はあ」と気が抜けたあいづちを打つ。
「ふふふっ。いつも同じことを言っちゃっているわね、私。
そういえば1年生は昨日まで合宿研修だったわよね。
楽しかった?」
「はい。みんなで料理したり、散策したり、ゲームしたり、楽しかったです」
竜心の素直な答えに、静が何故かウケて吹き出す。
「ふふっ……ふっ……ふふふっ」
我慢しようとして逆に変な声を出している。
竜心は「この人は俺と話すといつもこうだな」と思いながら困惑した顔で静が収まるのを待つ。
「ふー……ごめんね。古賀君と話すといつもこうね。
何だか小学生の感想みたいですごく可笑しくって」
と笑いを何とか収めてウケた理由を話す。
竜心としては「はあ」と返すしかない。
静は微笑みながら、
「合宿研修でみんなと仲良くなれたみたいでよかったわね。
来週はGWだけど、みんなで遊びに行ったりするの?」
と聞いてきた。
竜心は朝の話を思い出し、少し口元を緩めながら、
「はい、5月4日にみんなで下川山市の遊園地に行くことになっています!」
と答えた。
「楽しそうねぇ。下川山市の遊園地って新しくできたところよね。
もしかして古賀君は遊園地自体が初めて?」
「はい」
「ふふっ。いいわねぇ……ところで、私も5月4日は空いていたりするのだけれど」
「はあ」
「……」
少し無言の間ができる。
静が微笑みを2倍増しにして、
「私も5月4日は空いていたりするのだけれど」
と繰り返した。
「?……ああ! えーと、会長も遊園地はお好きですか?」
「ええ! あまり行ったことはないけれど、行ってみたいと思っているわ!!」
竜心の質問に少しかぶせ気味で静が答えを返す。
その勢いに竜心は驚きながら、少し考えて、
「ヒロたちに会長も誘っていいかどうか聞いてみましょうか?」
「ええ!」
と提案したと同時に答えが返ってきた。
静はわかりやすいほどニコニコしている。
竜心は、「この人も俺と同じくらい遊園地に期待にしているのかもな」と思い口元を緩めた。
そこに、遅れて理科室へ向かっていた浩信・武仁・賢治の3人と、那美・灯・千香の3人が遊園地の話をしながら、竜心と静がいるところまで歩いてくる。
浩信が静に「どもっす」と挨拶する。
他の者も「おはようございます」「どーも」「ちわっす」と口々に挨拶する。
静も「みんな、おはよう」といつもの顔に戻って挨拶する。
竜心が「ちょうどよかった」とみんなに声をかける。
「5月4日の遊園地だけど、会長も誘っていいかな?」
浩信は少し驚き、他の者は「ええっ」とかなり驚いて、少し間が空き、最初に気を取り直した浩信が、
「おう。いいんじゃねーか?
なあ?」
と周りに声をかける。
5人はうなずく。
「それにしても、会長さんが竜心に言ったんすか?遊園地に行きたいって?」
と浩信はニヤリとしながら静に話しかける。
静は「うっ」と一瞬気まずげな顔をしつつも澄ました顔をし、
「まあ、古賀君がみんなとどれくらい仲良くなったのか、ちゃんと確かめたいしね」
と澄ました顔で言った。
浩信は「ほほう」と意地の悪い顔をし、心なしか他の5人もニヤニヤしている。
静はそれに気付くが、気付かないフリをする。
竜心は一人、「よかったなー」という風な満足げな顔をしている。
静は「それじゃあ、詳しいことは後で連絡してもらえる?」と竜心にお願いし、早足で教室に戻っていった。
竜心以外の6人はそんな静をニヤニヤしながら見送った。
昼休み、竜心・浩信・武仁・賢治の4人は学食で手早く昼食を済ませた後、教室で弁当を食べている那美・灯・千香の3人と合流して5月4日の話を続ける。
滝本駅に朝10時に集合することが決まったところで、千香が竜心に話しかける。
「古賀君古賀君、古賀君ってば会長さんと仲いいの?」
「うーむ。会った時には話くらいはするけど、普通だと思うけどな。
入学式の時に話しかけてもらった時に俺が田舎から来たことを話したから、それで気にかけてもらってるよ」
「ええー! そんなんじゃなくて、もっと打ち解けてる雰囲気だったよ! さっきも!」
浩信もニヤリとしながら千香に便乗する。
「俺は会長さんとは中学の時からそれなりに付き合いがあるが、お前と話している時には珍しく砕けた雰囲気になってる気がすんだけどなー」
他の者も「うんうん」とうなずいている。
竜心は「そうかな?」と首をひねる。
「会長は、俺と話している時に、急に笑いが止まらなくなったりすることはあるみたいだけどな。
何ていうか、面白がられているだけのような気もする」
というと、那美・灯・千香の女性陣は「あーそれはわかる気がする」と同意した。
「みんなそうなのか」と竜心は少し凹む。
浩信が、手を「パン」と叩き、
「さて、まー大体話は決まったな。
そーいや、何で会長さんはお前に連絡してくれって頼んでたんだ?」
と竜心の方を向いて聞く。
「ん? ああ。会長の連絡先は前に教えてもらったんだ」
と竜心が答える。
途端に「ええーっ」と驚きの声が上がる。
浩信も驚いているようだ。
「ほー 俺は中学の時にいろいろ手伝ってたから会長さんの連絡先を知ってんだけどな。
なんで俺に言わねーのかなって思ってたんだが……そーゆーことか」
と浩信がニヤニヤしながら言う。
「やっぱ仲いいじゃん」
と千香も言う。
竜心は「そうなのか?」と首をかしげる。
その後昼休みが終わるまで、竜心と静の関係について、竜心を取り残したまま盛り上がるのだった。
予定を決めるやり取りだけでそれなりのボリュームになってしまったので、遊園地当日は次回にします~




