住人1
このアパートは、○○○号室といってもただの部屋である。それでもなかなかに丈夫な扉がついており鍵もついている。まぁこんなボロボロのアパートに泥棒も間違ってもこないだろう。
共同の玄関でまだ新しい真っ白な靴を脱ぎいくつかの靴が収まった下駄箱に置いた。
アパートの中を見回すと大きく食堂と書いたプレートと名前であろう文字の書かれたホワイトボードがかかっている。どうやら炊事は、当番制のようだ。
どうしたもんか。産まれてこのかた料理なんかしたことないぞ。この先の不安に刈られつつも横を見ると浴場の文字が、このぶんだと当然というかトイレも共同なのだろう。
アパート内を軽く見回したところですぐそばにあった階段に足を乗せた。
「あれ?君だれだ、あ!新しい入居者の!」
まだ振り向いてすらいないというのに早口でまくしたてて自分で結論づけたよ…まぁ間違えてないけど。
少しの緊張と共に振り向くとそこには目を見張るほどの美女がジャージを着て下駄を下駄箱に入れていた。
身長は僕の目線ほどで緑のジャージを上下に袖を関節少し下にたくしあげ決してオシャレとは言えない格好もとても似合っていた。顔について説明は自分の中の語彙で表すなら美しい以外で表現することができない。ボサボサの髪の毛を一つに結わえた髪の毛ですら美しいと思えた。こちらが振り向いたことに気が付くとニカッと顔に似合わず上品の欠片もない笑いだった。
「君、あれでしょ?入居者の東君。私は南だ、南お姉様と呼んで貰っても構わなくてよ?」
性格も顔と真逆なのね。
鉄の軋む音と共に
「南ぃまた詰まらないこと言ってるのか?」
大家さんだ僕より少し前に入ったがいなかったことに今気付いた。
「ないが詰まらないことよーアイちゃんはかたすぎるのよー鉄だけにっ」
「それが詰まらないんだよ南。あと私はアイちゃんではない大鐘だそしてお前からは名前で呼ばれたくないので大家様と呼べ」
「なぁんで様付けなのよっ!えー可愛いじゃん鉄のアイアンでアイちゃんっ♪あっ、アンちゃんのほうがよかった?なら言ってよ~」
「黙れ南、どちらも糞みたいなネーミングだな耳が腐る。あと今の身体は鉄ではない。」
と、二人でぶぅぶぅ言い合っている。まったくもって僕のこと忘れているな…これは暫く終わらないだろう。僕は片足の置いた階段にもう一方の足を乗せ二人を背に割り当てられた302号室に向かった。