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第35章 市長室謎の男

 長い階段を駆け上がり、ようやく市長室にたどり着いた。

 重厚な扉を押し開けると、冷たい空気が肌を刺す。

 広々とした部屋には、重厚な机と豪華な椅子が置かれていた。

 そして――。

 黒いフードを深く被った男が、机の前に立っていた。

 顔は影に隠れ、まったく見えない。

 ただ、その鋭い眼光だけが闇の中で不気味に輝いていた。

「……やっと来たか」

 低く、響くような声が部屋にこだまする。

 その声には、冷酷さと威圧感が宿っていた。

「お前が……市長か?」

 僕は息を整え、慎重に問いかける。

 だが、男は答えない。

「これを受理してもらえば、公的扶助が……」

 書類を渡そうとするが

 男はその書類を一瞥したが、手を伸ばそうとはしなかった。

 代わりに、低い笑い声を漏らす。

「……愚か者め」

 その瞬間、黒いオーラが男の体を包み込み、渦巻き始めた。

 まるで闇が具現化したかのような、重苦しい圧力が部屋中に満ちる。

「な、なんだ……!?」

 圧倒的なプレッシャーに思わず後ずさる。

 男はフードを深く被ったまま、一歩前に踏み出した。

「ここまで来たことは褒めてやる。だが――」

「ここで終わりだ」

 その手から黒い靄のようなエネルギーが漏れ出し、渦巻き始める。

「お前の怠惰、その魂ごと吸い尽くしてくれる」

「な、なんだと!?」

 突然、黒い靄が一気に僕に襲いかかった。

 逃げる間もなく、靄は体を包み込み、体力が急速に奪われていく。

「ぐああああっ!」

 全身の力が抜け、膝が崩れる。

 まるで血が逆流するかのような感覚。

 目の前が暗くなり、意識が遠のきかけた。

「このままでは」

「これで終わりだ!」

 黒いオーラが収束し、男の手の中に黒い光の球体が現れた。

 それは不気味に脈動し、次第に大きくなっていく。

 男は光の球体を猛烈な速度で投げつけてきた。

 僕は咄嗟に床に転がって避ける。

 ズガァンッ!!!

 光の球体が壁に衝突し、爆発を起こした。

 重厚な壁が粉々に砕け散り、部屋全体が揺れる。

「うわっ、なんて威力だ!」

 もし直撃していたら、一瞬で消し飛んでいただろう。

 僕は体勢を立て直し、男を睨みつけた。

「最初から戦う気だったのか……!」

 男は答えず、再び黒い光を手に集め始める。

 その動きには、躊躇も容赦も一切なかった。

(くそっ、どうする!? 逃げ道は……)

 ちらりと部屋の奥を見る。

 そこには屋上へ続く階段があった。

 しかし、黒いオーラが壁のように立ちはだかっている。

「逃がすと思ったか」

 男は冷たく言い放ち、次々と光の球体を投げつけてくる。

 僕は必死に床を転がり、柱の陰に隠れて攻撃をやり過ごす。

(このままじゃジリ貧だ……!)

 何か、反撃の手段はないのか?

 ふと、怠惰の書物がポケットの中で震えるのを感じた。

 書物を取り出すと、光の文字が浮かび上がった。

 《屋上の女神像へ向かえ》

「どういう意味だ……!」

 だが、今はそれに賭けるしかない。

 僕は柱の陰から飛び出し、男に向かって叫んだ。

「そこまでして公的扶助を支給したくないのか!」

 男はフードの奥で目を細めた。

 そして、黒い光をさらに凝縮させ、巨大なエネルギーの球を作り出す。

「ここで消えろ!」

 エネルギーの球が轟音と共に放たれる。

 避けようにも、広範囲を覆う強烈な攻撃だ。

(くそ、間に合わない――!)

 その瞬間――。

「――ここは俺に任せろ!」

 力強い声が部屋中に響いた。

 次の瞬間、巨大なエネルギーの球が真っ二つに割れた。

「な、何だと!?」

 驚愕する男の前に立っていたのは、一気だった。

 彼は悠然と構え、鋭い目つきで男を睨みつけている。

「またお前か……!」

「お前は屋上へ行け。こいつは俺が引き受ける」

 一気は頼もしく言い放ち、拳を握りしめた。

 その拳には青白い光が宿っていた。

「でも、一気……!」

「さっさと行け! 閉館時間が迫ってるんだろ?」

 僕は一気の言葉に背中を押され、屋上への階段を見た。

 黒いオーラの壁は、一気の登場で消えかけている。

「分かった! 任せたぞ、一気!」

 一気はニヤリと笑い、黒いフードの男に向かって歩き出す。

「てめぇの相手は、俺だ」

 僕は一気を信じて、屋上への階段へと駆け出した。

 後ろからは激しい衝撃音と爆発音が響いてくる。

(絶対に……ここで終わらせない!)

 怠惰の書物が光り、僕を導いてくれる。

 僕は振り返らず、ひたすら屋上の女神像を目指して駆け上がった。


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