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第18章 怠惰の試練へ!動かずに進める迷宮

「ここが……怠惰の神殿か」

 隣町を抜け、北の森を進んだ先に、古びた石造りの神殿があった。

 蔦に覆われた巨大な門、ひび割れた石柱、そして不気味な静けさが辺りを包んでいる。

「怠田様、本当にここに『楽園の村』への道があるのでしょうか?」

 アリシアが不安げに呟く。

「間違いないさ。怠惰の神殿なんて名前、俺のためにあるようなもんだ」

「確かに怠田様にはピッタリですが……」

「よし、早速中に入ってみよう!」

 僕たちは重い石の扉を押し開け、神殿の中に足を踏み入れた。

 中は薄暗く、ひんやりとした空気が流れている。

 複数の像がありその内の一体の像の足元に、脳が震えると書いてあった。

「どこかで見たことのある特徴のある像だ」

 その横の壁には古代文字が刻まれ、不気味な雰囲気を醸し出していた。


 動くと進めない迷宮

「……あれ? 全然進めないんだけど」

 僕たちは迷宮のように入り組んだ廊下を進もうとしていたが、なぜか同じ場所をぐるぐると回っていた。

 何度同じ角を曲がっても、見覚えのある壁画や石像が現れる。

「怠田様、これは迷宮に仕掛けがあるのかもしれません」

「仕掛けか……面倒くさいなぁ」

 仕掛けを解くなんて、僕には無理だ。

 謎解きなんて頭を使うことはできれば避けたい。

「うーん、どうしたものか……」

 僕は疲れて地面に座り込み、そのまま寝転がった。

「怠田様、こんな場所で寝転がっては危険ですよ!」

「いや、ちょっと休憩だ。こういうときは《怠惰スキル》を信じて、動かずにいればきっと道が見つかるさ」

 アリシアは呆れた顔をしていたが、僕は気にせずそのまま目を閉じた。

 すると――

 ズズズ……!

 床が低くうなりを上げ、石壁が音を立てて動き始めた。

 迷宮全体が緩やかに回転し、壁や床の配置が変わっていく。

「怠田様、これは一体……!?」

「動かずにいたら、迷宮が勝手に動き始めた?」

 壁に刻まれた文字が淡く光り出した。

 そこには古代の言葉でこう書かれていた。

『怠惰を極めし者よ、何もせず進むべし。動く者には迷いの道を』

「なるほど、動かないことで道が開けるってわけか」

 迷宮は《怠惰スキル》に反応して、僕を正しい道へと導いてくれているらしい。

 これは楽でいい。動かずにゴールに行けるなんて、まさに僕向けだ。

「やっぱり《怠惰スキル》って最強だな!」

「こんな仕掛けがあるとは……さすが怠惰の神殿です」


 怠惰の守護者との対峙

 迷宮が自動的に動いてくれるおかげで、僕たちは何もせずに最深部まで辿り着いた。

 そこには巨大な石像が立ちふさがっていた。

 両手に大剣を構え、鋭い目つきで僕たちを睨んでいる。

「……試練の守護者、ってところか?」

「怠田様、あの石像が動き出します!」

 ゴゴゴ……!

 石像が重々しい音を立てて動き出し、大剣を振りかぶった。

「く、来るぞ!」

 僕はとっさに体を動かそうとしたが、すぐに立ち止まった。

 この迷宮のルールは『動かないこと』。

 動いたら迷ってしまう。

「そうだ、動かない方がいいんだ!」

 僕はその場にペタリと座り込み、目を閉じた。

「怠田様!? 危ないです!」

 アリシアの悲鳴が響く中、石像の大剣が勢いよく振り下ろされた。

 しかし――

 ズバァンッ!

 僕の頭上すれすれを通り過ぎ、石像の剣は地面を斬っただけだった。

 僕が動かないから、石像の攻撃が全て空振りしている。

「……なるほど、動かない限り当たらない仕組みか」

 石像は何度も剣を振り下ろしてくるが、僕は微動だにしない。

 次第に石像の動きが鈍くなり、やがて止まった。

 その瞬間、石像の胸部がパカリと開き、中から 「怠惰の巻物」 が現れた。

 古びた羊皮紙に金色の文字が刻まれている。

「これは……?」

「伝説の怠惰の巻物です。楽に生きるための知恵が記されていると言われています」

「よっしゃあ! これさえあれば、楽な生活の方法がもっとわかる!」

 僕は巻物を広げ、中身を確認した。

 そこには、こんなことが書かれていた。

『いかにして働かずに収入を得るか』『他人に仕事を任せる極意』『眠っていても世話されるためのコツ』――。

「す、すげぇ! まさに俺のための指南書じゃないか!」

「怠田様……本当に楽することに全力なんですね」

「この巻物があれば、もっと楽に、もっと怠惰に生きられるぞ!」

 僕は感動しながら巻物を抱きしめた。

 これでまた一歩、楽して生きる夢に近づいた――。


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