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第16章 楽するための情報収集作戦!

「楽して生きるためには、まず情報だ!」

僕は村の広場で胸を張って宣言した。

アリシアが呆れ顔でため息をつく。

「怠田様、情報収集は分かりますが……本当に働きたくないだけなんですね」

「当然だろ? 俺は楽して生きるために異世界に転生したんだからな」

悠々自適のニートライフを送るためには、無駄な労力をかけるわけにはいかない。

そのためには、どこに行けば楽できるか、誰に頼めば世話してもらえるか、そういう情報を徹底的に集める必要がある。

「でも、どうやって情報を集めるんですか?」

「ふっふっふ、それなら心配ご無用」

僕は得意げに《怠惰スキル》を発動させ、地面に寝転がった。

体の力を完全に抜き、動かないことで周囲の人が無意識に助けてくれるはずだ。

つまり、僕が寝ている間に誰かが勝手に情報を教えてくれるだろうという作戦だ。

「……まさか、寝ているだけで情報が集まると思っているんですか?」

「大丈夫。俺には《怠惰スキル》があるからな」

アリシアは呆れた顔で肩をすくめたが、何も言わず僕の横に腰を下ろした。

どうやら付き合ってくれるらしい。


うわさ話の力

そのまましばらく寝転がっていると、村人たちが広場に集まってきた。

みんな修理が終わって一息ついているらしい。

「なあ、聞いたか? 隣町に新しい宿屋ができたらしいぜ」

「おう、しかも料理がめちゃくちゃ美味いって噂だ」

「おまけに、働かなくても住み込みで食わせてくれるとか」

「なんだって!? そんな天国みたいな場所があるのかよ!」

(なんだって!?)

僕は思わず反応しかけたが、ここはじっと耐えて動かない。

《怠惰スキル》を発動させている以上、ここで動いたら効果が切れてしまう。

「でも、住み込みってことは何かしらの仕事はあるんじゃないのか?」

「いや、どうやらお客さんの話し相手になるだけらしい。適当に相槌を打っていればいいって話だぜ」

「それ、ほとんど仕事してないじゃん!」

「しかも、寝る時間も自由らしい。まさに楽園だな!」

(……完璧じゃないか)

これは行くしかない。

僕の求めていた「楽園」が隣町に存在するなんて……!

「アリシア、聞いたか? 隣町に天国があるらしいぞ!」

「ええ、聞こえてましたけど……本当にそんな場所があるんですかね?」

「行ってみれば分かるさ! よし、早速出発だ!」

僕は勢いよく立ち上がり、アリシアを連れて隣町へ向かうことにした。

もちろん、楽をするためにだ。


隣町への道中

隣町へ向かう道は、のどかな草原が広がる一本道だった。

空は青く澄み、風は心地よく、絶好の散歩日和……と言いたいところだが、歩くのが面倒だ。

「アリシア、俺、歩きたくない」

「……はい?」

「だから、なんとかしてくれ」

アリシアはしばらく考え込んだ後、魔法の杖を取り出した。

「仕方ありませんね。《浮遊の魔法》を使いますから、私に掴まってください」

「おお! さすがアリシア!」

彼女の魔法で、僕たちはふわりと宙に浮いた。

風に乗って移動する感覚はとても心地よく、まさに楽して移動できる最高の手段だ。

「ふふっ、楽して生きるためには、知識と協力者が必要ですからね」

「アリシア、マジで有能。これからも頼むわ!」

「はい、怠田様のためなら」

アリシアは微笑みながらも、少しだけため息をついていた。

でも、その顔にはどこか楽しそうな表情が浮かんでいる。


楽園の正体

隣町に着いた僕たちは、噂の宿屋を見つけた。

外観は普通の宿屋だが、中からは楽しそうな笑い声が聞こえてくる。

「本当にここで楽して暮らせるのか……?」

期待を胸に、僕は宿屋の扉を開けた。

すると――

「いらっしゃいませ! お客様は『話し相手』として働きたいのですね?」

にこやかに出迎えてくれたのは、妙に元気な店主だった。

そして、店の中ではおじさんたちが大騒ぎしながら酒を飲んでいる。

「そこの兄ちゃん、一緒に飲もうぜー!」

「おお、話し相手が増えたのか、今日は盛り上がるぞー!」

店の雰囲気は非常に賑やかで、楽しそうではあるが……騒がしい。

(……あれ、これ楽するどころか、めっちゃ疲れそうな予感がする)

僕は一歩引きかけたが、店主が腕を掴んできた。

「さあさあ、話し相手は貴重なんですよ。しっかり稼いでいってくださいね!」

「ちょ、ちょっと待っ――」

強引に席に座らされ、酔っぱらいのおじさんたちの相手をすることになった。

話の内容は取り留めもなく、同じ話を何度も繰り返し、延々と笑い続けるおじさんたち。

「ははは……そ、そうですね……」

僕は必死に笑顔を作りながら相槌を打ち続けた。

これはこれで、別の意味でキツイ……!

「怠田様、頑張ってくださいね」

アリシアが楽しそうに見守っているのが、唯一の救いだった。


「……楽して生きるのって、意外と難しいな」

そんなことを思いながら、僕は酔っぱらい相手にひたすら頷き続けるのだった。



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