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第15章 怠惰と安眠の極致へ!

「はぁ……これ、最高だ……」

 僕は村の広場にある木陰で《無限安眠枕》を抱えながら寝転がっていた。

 ふかふかの枕に頭を沈め、優しい風が頬を撫でていく。

 これまでに味わったことのない極上の安眠感……まるで天国にいるみたいだ。

「怠田様、そろそろ村の修理を手伝っていただけますか?」

 アリシアの声が遠くから聞こえてくる。

 でも、あまりにも心地よくて、まぶたが重く……意識がどんどん遠のいていく。

「怠田様? 怠田様ぁ!」

 彼女の声がどんどん遠ざかり、ついには完全に眠りに落ちた。


 絶対に起きない男

「……これ、どうなってるんですか?」

 アリシアは首をかしげながら、僕の顔を覗き込んでいる。

 しかし、どんなに近づいても、僕はピクリとも動かない。

「怠田様、起きてください!」

 彼女は僕の肩を揺すり、頬を軽く叩いてみた。

 しかし、それでも目を覚まさない。

「……まさか、死んでいるのでは……!?」

 アリシアは青ざめた顔で、僕の胸に耳を当ててみる。

 心臓の鼓動はしっかりと聞こえ、呼吸も安定している。

「ただ……熟睡しているだけ?」

 でも、普通ここまで深く眠れるものだろうか?

 アリシアはさらに強く僕の体を揺さぶったが、それでも目を覚ます気配はなかった。

「何ということでしょう……これではまるで、魔法で眠らされているみたいです」

 彼女はふと、僕が抱えている枕に目を向けた。

 ふわふわで光を帯びたその枕は、見るからにただの枕ではなさそうだ。

「……もしや、この枕が原因?」

 そう思ったアリシアは、そっと僕から枕を引き離そうとした。

 だが――

「むにゃ……これは俺の……安眠の極致……」

 僕は無意識のうちに枕を抱きしめ、絶対に手放さないようにぎゅっと抱きかかえた。

 それはまるで、命を守るような必死さだった。

「……なんて執念深いんでしょう」

 呆れながらも、アリシアは諦めてその場に座り込んだ。


 村の修理は進まない

 一方、村の広場では村人たちが集まり、修理の準備を進めていた。

 壊れた家の壁を直したり、倒れた柵を立て直したりと、大忙しの様子だ。

「おーい、新入り! 手伝え!」

 村長が僕に向かって大声で呼びかけるが、僕は微動だにしない。

 相変わらず《無限安眠枕》を抱えて、幸せそうな寝顔を浮かべている。

「おいおい、また寝てやがるのか?」

「どんだけ怠け者なんだ、あいつ……」

 村人たちは呆れ顔で僕を見ていた。

 それもそのはず、村の修理を手伝うどころか、目覚める気配すらないのだから。

「しかたねぇ、俺たちでやるか……」

「まったく、役に立たないやつだな」

 村人たちは文句を言いつつも、手際よく修理を進めていく。

 その光景を見て、アリシアはハッと気づいた。

「……まさか、《怠惰スキル》の効果?」

 僕が動かずにいることで、周囲の人々が無意識に手を貸してくれる。

 それが《怠惰スキル》の本質だとすれば、村人たちが僕を放っておけないのも頷ける。

「さすが怠田様、寝ているだけで仕事が片付いていくなんて……」

 彼女は呆れつつも、妙に感心していた。


 最強の睡眠の力

 やがて、村の修理が一通り終わった頃。

 僕はようやく目を覚ました。

「ふわぁ……よく寝た……」

 起き上がると、広場はすっかり綺麗になっていた。

 壊れていた家も修復され、倒れていた柵もピンと立っている。

「ん? いつの間にか修理終わってる?」

 僕が何もしないうちに全て片付いていることに驚きつつ、《無限安眠枕》の力に感動していた。

「これさえあれば、俺は本当に何もしなくても生きていける……!」

 枕をぎゅっと抱きしめ、僕は思わず笑みをこぼした。

 《無限安眠枕》と《怠惰スキル》の組み合わせは、まさに最強だ。

 しかし――その様子を見ていたアリシアは、じっと僕を見つめていた。

「怠田様、まさか一生寝て過ごすおつもりですか?」

「え、だって楽だし……」

「でも、それでは怠田様の夢である『悠々自適のニートライフ』とは少し違うのでは?」

 彼女の言葉に、僕はハッとした。

 確かに、ただ寝ているだけでは「悠々自適」とは言えないかもしれない。

「うう……面倒なことは嫌だけど……でも、もっと楽しい生活がしたい……」

 迷いながらも、僕は《無限安眠枕》を見つめた。

 この枕を使えば、どんな状況でも楽はできる。

 でも、それだけで本当に満足できるのだろうか?

「……よし、ちょっとだけ頑張ってみるか」

 少しの勇気を胸に、僕は《無限安眠枕》を抱え直した。

 楽して生きるために、ほんの少しだけ動いてみよう。

 次回、怠田の新たな挑戦が始まる!?


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