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第56話 覚醒者の集い

 こちらを監視していた人物が上に話を通した結果、俺はまずは他の覚醒者達と顔合わせをすることとなった。


 名目としては善良な覚醒者同士で交流を持ってもらい、今後の対策に協力して臨んでもらいたいからとのことだが、実際にはそれ以外にも色々な意味があるのは間違いない。


「てめえが安全地帯なんてもんがあるとかいう大法螺をふいてる野郎か?」


 なにせその覚醒者の集いに顔を出すなり、そんな言葉を投げかけられたのだから。


 その明らかにこちらを威嚇するような態度からは、どう考えても協調しようなどといった雰囲気は欠片もしないというもの。


(生意気な新人を分からせようってか?)


 それが本人の意思によるものか、あるいは他の誰かからの指示なのかまでは判別できないが、何にしても好意的に見られていない事だけは確定的である。


「おい、何とか言えよ!」


 胸倉を掴み上げてくる金髪の坊主頭のヤンキーみたいな男のことを無視して部屋の中にいる人数を数える。


(監視していた人を含めて四人だけか。思ってたより少ないな)


 あるいは表に出せるのがその人数だけなのかもしれないが、なんにしてもそれほど数がいないのは嘘ではないようだ。


 でなければもっと大人数で俺のことを威圧するだろうし。


「仁さん、い、いきなり暴力はダメですよ……」

「うるせえぞ 深雪! 甘ちゃんのてめえは黙って見てろ!」


 おどおどした様子の大学生くらいの年齢の女性がヤンキーに声を掛けるが、乱暴な言葉を返されて撃退されてしまっていた。


 なお、残る一人の壮年の男はジッと此方を観察するように見てくるだけで何も言わない。


「いいか、新人。こっちはただでさえ戦力が不足している上に他の覚醒者が好き勝手に暴れてるとかで問題だらけなんだ。安全地帯だか何だか知らねえが、てめえの下らねえ嘘で余計なことをさせるんじゃねえよ」


 その気持ちも分からなくもない。


 急に安全地帯があると言われて信じられないだろうし、魔物とダンジョンの攻略に精を出していた俺とは違った苦労をこいつらもしてきたのだろう。


 だから胸倉を掴まれて暴言を吐かれる程度で怒ったりしない。


 もっとも別の要素で落胆はさせられたが。


「……あーあ、戦力としてそれなりに期待してたのによ」

「ああ?」

「思ってたより弱そうでガッカリしたって言ってるんだよ」

「っんだとてめえ!?」


 煽るようなこちらの発言に怒ったのか、顔を赤くして胸倉を掴む力を強めてくる仁と呼ばれた男。


 だがそれでも魔闘気を使っていない俺の半分以下の力もないのが分かってしまう。


(ってことはステータス的にそう高くないしランクは5にも届いてないな)


 つまりゴブリンキングとの戦いを経てランク13になった俺とは雲泥の差があることになる。


 MPが回復し辛いこの世界の特性上、中々魔物を倒して経験値を稼ぐのは難しいことは分かっている。


 俺だって無限魔力を始めとしたユニークスキルがなければここまで来るのにもっと時間が掛かっていたことだろう。


 だけどこうして力を誇示してくるのだから、もう少しくらい力を持っていてほしいというのが正直なところだった。


 それともステータスは低くとも強力なスキルを持っているとかだろうか。


「なあ、お前のステータスはどのくらいだ? それと何のスキルをショップで購入した?」

「ああ? 知り合いでもねえてめえに言う訳ねえだろうが!」

「それもそうか」


 それならそれで問題ない。


 胸倉を掴んでくる力などから大体の力加減の目安も付いたので。


「とりあえず離せよ」


 優しく、だけど力の差を分からせる意味も込めてデコピンをそいつの額に放つ。


 だがその結果はデコピンが当たっただけとは思えないものとなった。


 なにせ奴の額に俺の指が当たった瞬間、まるでぶん殴られたかのようにそいつは仰け反ったと思ったら、そのまま勢いよく後方に吹き飛んだからだ。


 そしてその勢いのまま後頭部から壁にぶつかったところでようやく停止する。


「う、うう……」

「思った以上に威力が強くなり過ぎたか? でもそれでも意識はあるのか。思ったより丈夫みたいだしVIT上昇のスキルでも持ってる感じか?」


 それでもダメージが大きいのか、呻くだけで倒れたまま動けないヤンキー。


 それを見て、


「じ、仁さんになにをするのよ!」


 先ほど暴力を否定してきた深雪という女性が前言撤回するように懐から銃を取り出してこちらに銃口を向けてくる。


 更に後ろで控えていた壮年の男も俺を敵だと判断したのか、明らかに戦闘態勢に入っていた。


 だがそこから感じられる気配は決して強いとは言えない。


 オーキングやゴブリンキングには遠く及ばないし、それどころかオークナイトにも届かないだろう。


「なるほどな。大体分かった」


 先程のヤンキーの様子からして言葉で幾ら説明しても理解できないだろうから、その二人も瞬く間に制圧してみせることで圧倒的な力の差を証明する。


 勿論これから協力してもらうので大きな怪我などはさせずに。


「一応聞いておくけど、あんたもやるか?」

「……遠慮しておきます。どうあっても勝てそうにありませんから」


 最後の監視員が無抵抗で降参したことで、この場における力の序列はあっさりと決定するのだった。

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