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第21話 オークの進化と御霊石

 東京奪還に動いていた自衛隊は当然のことながら銃器などに頼って魔物を掃討しているようだ。


 非力な人間でも引き金一つで魔物を倒せること自体は有用であり、ポイントに依存しない戦い方があることも有用なので助かる。


(だけど魔物を倒すだけ倒して魔石やステータスカードとか放置するケースが多過ぎるな)


 現状だとステータスカードの活用方法は周知されていない。


 一部のネット上ではそういう情報が出ているし、俺もダメ元で掲示板などに利用方法などは投稿しているが、大半は信用されていない。


 その状況では魔石の利用方法も分からないので、サンプルとして幾つか持ち帰る程度で済ませてしまっているのだろう。


 もしくは遠距離から倒した際にはカードとか落ちているのに気づかない場合もあるのかもしれない。


 通常のゴブリンやオークであれば、攻撃の届かない距離から一方的に攻撃ができる銃器の利便性が思わぬデメリットを生じさせた形だろうか。


 一応目についた範囲の魔石は回収した。


 それと同時にステータスカードも拾って、先ほど遭遇した自衛官に渡したが、果たしてちゃんと活用できるだろうか。


(他人のステータスカードは使えないみたいだからな。持ち主に届くことを祈るしかない)


 そんなことを考えながら新宿区での捜索を終えて千代田区にやってくる。


 そしてその時だった。遂にこれまでと違った魔物と遭遇したのは。


(あれはオークナイトか)


 運が良いことに風下で発見できたこともあって、匂いなどで気付かれてはいない。


 建物に隠れながら一方的にその姿を視認できている。奇襲にはもってこいのシチュエーションだった。


 敵の数は五体。


 リーダーと思われる個体は、分厚い鎧と赤黒く汚れた大剣を身に着けたオークナイトで、他は通常のオークのようだ。


(周囲のほかの気配はなしか。魔闘気を使えば勝てるだろうけど……)


 どうやらオークナイトの集団は獲物がいないか周囲の探索をしているみたいだ。

 時折道端の崩れて積み重なった瓦礫などを退かして下を確認するなどしている。


 だが鼻が良い奴らなら、匂いだけでも獲物がいるかどうかくらい分かるはずだ。


 それなのにわざわざこんな形で捜索しているのが腑に落ちず、俺は情報収集のためにしばらく後をつけることに決めた。


 そうしてバレないように追跡することしばらく、奴らの目的は判明した。


 それはある瓦礫の下で、御霊石が見つかったことが切っ掛けだった。


 恐らくは死亡してグールとなった個体が崩れてきた建物などに潰されてしまったのだろう。


 その御霊石をオークナイトが手に取る。


(奴らの目的は御霊石? いったい何のためだ?)


 蘇生スキルに必要だったり、ショップで高額で売れたりする以外にも使い道があるのだろうか。


 それも人間ではなく魔物が必要とするだけの。

 

 その答えはすぐに分かった。


 何故ならその御霊石を観察していたオークナイトがふいに仲間の一体にそれを渡して、


「な!?」


 渡された個体がなんと、その御霊石を丸呑みしたからだ。


 邪神の眷属たる魔物といえども生物なので食事はする。


 異世界ではゴブリンもオークも倒した人間を食すこともあったくらいだ。

 だから何かを食べること自体はそう驚くことではない。


 問題なのは、それを食べたオークの肉体が激しく発光して見えなくなったと思ったら、次の瞬間には分厚い鎧などの装備を身に纏っていたことだ。


 その姿は紛れもないオークナイト。


 単に武器を装備しただけではないのは、その体からはっせられる覇気から明らかだった。


 ただのオークだった個体がこの一瞬で進化したのである。


 通常、魔物の進化は長い時間をかけて力を蓄積することで行われるというのに。


(なんてこった、御霊石は魔物を強化させる効果もあるのかよ)


 あれが一つ目の御霊石だったのか、それとも複数の御霊石を食べていて、俺が進化する丁度のタイミングを目撃したのかまでは不明だ。


 だけど実際問題、御霊石を摂取して進化したこと自体は変えられない。


 だとするとグールという存在の価値と危険性がまたしても跳ね上がる。


(そういえば、グールと他の魔物が一緒に行動していることはこれまで見たことがなかったけど、これはそういうことだったのか)


 生まれたてのアンデッドであるグールは知恵などないため誰かの命令など聞くことはない。


 あくまで魔物としての本能のままに人間を襲うだけだから他の魔物と共闘することも皆無。


 だからこれまで一緒にいなくても違和感など持たなかったのだ。


(東京に思っていた以上にグールの数がいないのも、もしかしたらあいつらが御霊石を目的に狩っているからか)


 自分たちが進化するために。


 どうも魔物はこちらの現実世界では異世界よりも弱体化するようなので、それを補うためにも御霊石は奴らにとっても必要不可欠なアイテムなようだ。


「これ以上、奴らを進化させる訳にはいかないな」


 これがまだオークナイト程度だから良いが、その上のオークキングやオークロードなどの強敵に進化されたら不味い。


 しかも十分な御霊石が揃えば、複数体が進化可能かもしれないのだ。


(こっちは戦力も足並みも揃ってないんだ。そんな状況で敵が戦力増強なんて許したら不味いなんてもんじゃない)


 だとすればそうなる前に阻止しなければ。


 現在の敵の戦力はオークナイトが2とオークが3。


 魔闘気でステータスを高めている間に片付けられれば問題はない。


(逆に言えば、そうじゃないとキツいかもしれないけどな)


 オークナイトから感じる覇気はそう思わせるに十分過ぎるものだった。

 たぶん今の俺の素のステータスは上回っているだろう。


 それでもこのまま逃がす訳にはいかない。


 奇襲が可能で数が少ないこのチャンスに敵の要注意となる戦力は減らさなければ。


(魔闘気、発動)


 スキルを発動して、全身に力が満ちるのを感じる。


 INTは81なので一分半弱までこの状態は維持できる。


 俺は武器である刀を抜くと、ただでさえ短い制限時間を無駄にしないためにすぐさまその場から飛び出した。


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