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9 ダリウス・ホーランドの過去2

リーナと僕は内輪だけの小さな結婚式を挙げた。

結婚指輪はルシウスの準備した、あのエメラルドで。

この指輪でなければ嫌だと、リーナが唯一譲らなかったのだ。僕は笑顔でそれも受け止めた。

リーナと結婚できるなら、指輪になど拘らない。優しくして、きっと幸せな家庭を作ろう。リーナもいつかきっと僕を愛してくれる。


そんな甘い考えは、結婚してすぐにぶち壊されたが。

結婚式の夜、リーナの部屋へ行くと、花嫁のリーナは大量に飲んだワインで前後不覚になっていたのだ。

専属のメイドが戸惑っていた。

一応、花嫁らしい支度はされていた。真っ白の夜着を着せられて、髪は艶やかに整えられ、肌も滑らかでシルクのように。

「お風呂から上がって、その後お酒を飲み始められて、、、お止めしたのですけれど。」

どうしましょう、と泣き出しそうなメイドを優しく下がらせる。

二人きりの寝室で、今日は結婚式だ。

リーナも疲れたのだろう、いろいろ言い訳をつけて、僕はソファで眠ろうー そう思いかけた時。


リーナが寝言を呟いた。

「ルシウス、、、愛してるわ、、、、。」

その瞬間。

理性の糸が切れるのがわかった。自分は決して誰にも愛されない。両親にも、結婚相手でさえも。

どす黒いあの感情が、再び目覚めて大きくなっていく。

手に入るもので我慢をすれば良い。


その晩、ダリウスは意識のない花嫁を自分のものにした。明け方まで何度も。

翌朝、目覚めた花嫁は「卑怯者!」とダリウスに叫んで、その後二度と正気に戻らなかった。


リーナはそのたった一晩で妊娠し、産まれた子供には見向きもしなかった。食事も取れなくなり、流感にかかると呆気なく亡くなってしまった。


後に残されたリーナそっくりの赤ん坊を冷めた目で見る。これは何だ?俺の子か?リーナの生まれ代わりか。

「化け物め、、、。」

罪の結晶である我が子を見ていられない。


使用人を全員入れ替えた。子供の世話をする人間が必要だと言われる。領地の近くに緑の目をした女がいると聞いて、連れて来させた。親の借金を払ってやると言うと付いて来たようだ。リーナと同じだな。


妻には好きにさせた。緑の目を見ると落ち着かない気分になる。子供の世話は上手いようだったから、放っておいた。心は死んだように動かない。時々酒を飲んで使用人を部屋に連れ込む。金を払うと言うと、大抵言うことを聞いた。リーナと同じだ。


妻という名の女が出て行った。使用人の男と。

久しぶりに怒りに襲われる。金は払っただろう、なぜ勝手なことをする。リーナの子、、いや俺の子でもあったか?見かけると急に激しい怒りの感情が湧いてくる。

「お前さえ、いなければ! 」

気がつくと階段から放り投げていた。

足を傷めたらしいが、罪悪感は持てなかった。


足を引き摺るリーナにそっくりの子を見ていられず、頻繁に外出をするようになる。夜会に行くと着飾った貴族たちが気取って歩いている。一晩の相手にも事欠かなかった。

ある日、夜会で会った身分の高そうな女を抱いた。腕を掴んで「休憩したい」と言われたらそういうことだろう。抱いたあと「こんなことをするなんて」とか騒ぎ出されたので、持っていた薬を飲ませてやった。

慌てたため薬の量が多かったかもしれない。女のその後は知らない。


気がつくとまた妻が側にいた。金さえ払っていれば、今度の妻は機嫌良く過ごしているようだ。俺のためだと、執事まで連れて来た。

仕事が楽になると、気分も良くなる。そうか。難しい仕事はできるやつにやらせればいいのか。

俺はルシウスじゃない。


気まぐれに、家の中に出入りしていた使用人を寝室に引っ張り込んだ。これは、誰だったか。家庭教師だったか。コトが終わると三番目の妻が部屋で喚いている。出ていくと叫んでいた。好きにしてくれ。


もう結婚は懲りたと思っていたが、やはり女手は必要かと思い、使用人の妹に手を出した。最初は泣いていたが、妻にしてやると言うとおとなしくなった。全く面倒な。


この頃にはダリウスは普通の性行為では満足できなくなっていた。

相手を縛るのは日常で、時に鞭を振るうこともあった。

鞭を打ちつけた時の音がたまらなく快感を呼ぶ。

リーナもこうやって躾ければ良かったかもな、、、そう思った時、視線の先にあの子供が見えた。リーナの子。俺の過ち。

気がつくと子供がぐったりするまで鞭で打ちつけていた。

何とも言えない達成感に包まれる。


俺が子供を殺してしまうと思ったのか、執事のバートンはしばらく子供を部屋から出さないように指示していた。どうでもいいことだ。

別に殺そうと思ったわけじゃない。リーナの、、リーナに似た子供が「ごめんない」と言うのが無性に心地よかっただけだ。


目的もなく生きるのは辛い。

夜会で知り合った口の固い連中と「タバコ」の取り引きを始めると、結構いい収入になった。気を良くして販路を広げる。羽振りが良くなると今まで俺を避けていた貴族から声がかかる。

マルグリットもその一人だった。

どこかの子爵の未亡人だと言っていた。


「そんなに目障りなら、追い出したらいいじゃない。」

マルグリットがリーナの子を追い出せと言う。それも悪くない。いつまでも養うつもりもない。

3ヶ月後に出て行けと言った。何とも思っていないような表情だ。久しぶりにこの子供をまともに見る気がする。

どこまでもリーナに似ている。もうやめてくれ。

早く、早く、消えてくれ。




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