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25 最終話

公園で泣き崩れて以来、アイリーンは自分の事を少しずつ、アルフレッドに打ち明けるようになっていた。

小さな頃の思い出や、父親に受けた暴力のことも。

聞くにつけ、当時のアイリーンの心情を思うとやりきれない気持ちになる。あらゆる感情を閉じ込めて、毎日を過ごすしか、心を守る方法がなかったのだろう。


公園から泣き顔のアイリーンを連れて帰った時

「お嬢様がこんなに泣かれるなんて、、一体何があったのです。」

と、シャーリーも驚いていた。アイリーンは、父親にどんなに殴られても、ほとんど涙は見せなかったそうだ。

血を流すほどの暴力を受けた時でも、まるで人形のように部屋でじっと座って、シャーリーが手当をする様子を見ていたのだとか。

他の家族の愛情を知っていれば少しは感情が育ったのかもしれないが、抱きしめてくれる母親もいなかったのだ。

辛かった過去について話をしている時は、なるべく肩を抱き寄せたり、膝に座らせるようにしている。

慣れないスキンシップに最初は戸惑っていたようだが、最近は自分からそっと側に寄ってくるようになった。


「アルフレッド様のお母様はどんな方でしたか?」

と、この頃は親について訊ねることもある。自分の育った環境が、かなり特殊であったことに気がついたのだろう。幼い頃の母のことを話してやると、アイリーンはアルフレッドの胸に頭を付けて、真面目な顔でじっと話を聞くのだ。


アルフレッドは思いつく限りアイリーンを甘やかした。

おいしいと言うものを好きなだけ買い与え、行きたいと言うところへ連れて行く。妊娠しているためあまり無理はさせられないが、修道院から連れて帰って1ヶ月。アイリーンは健康的な輝きを取り戻し、医師からも問題ないと、お墨付きをもらっている。


アルフレッドは毎日好きだと言い続けて、アイリーンのために庭の花を全て植え替え、山ほどドレスや宝石を贈ってアイリーンのためだけの温室を公爵邸の横に建てた時、やっとアイリーンの口から

「アルフレッド様、私もしかしたら愛されてます、、、よね?」

という言葉が出たのである。アルフレッドは少し泣いた。


「アルフレッド様、私は誰かを愛したことがないのです。今も、どういう気持ちが愛するということなのか、よくわかりません。

でも、あなたが微笑んでくださると、とても幸せな気持ちになるのです。あなたが泣けば私も悲しいし、笑顔にしたいと思います。こんな気持ちはあなたにだけ感じるようなのです。

私のそういう気持ちで、アルフレッド様は満足してくださいますか?」


まさかアイリーンからこんな情熱的な告白が聞けるとも思わず、アルフレッドはアイリーンをぎゅっと抱きしめて言った。


「十分だ。素敵な愛の言葉をありがとう。アイリーン。必ず幸せにする。結婚しよう。」


アイリーンとアルフレッドは小さな教会で使用人と友人に見守られながら結婚式を挙げた。

二人が出会ってから半年後のスピード婚であり、人々は驚きを隠さなかった。あの氷の公爵を射止めたのが、評判の良くないホーランド伯爵の一人娘であったことにも。

悪意のある噂をする者もいたが、アイリーンがほとんど社交界に出ていなかったため、一目会いたいと好奇心に負ける者の方が圧倒的に多かった。一度アイリーンに会えば、その純粋な心に惹かれない者はおらず、悪い噂は自然と消えた。


アイリーンの花嫁姿は非常に儚げで美しく、通りゆく人々が思わずうっとりと見惚れるほどであった。

横に立つアルフレッドは生涯で最高の瞬間を手に入れた。

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