第96話:魔王討伐隊の編成
ルビイとアズによって明確な位置が分かったソナの居場所。
エカたちは王様に報告して、ソナ救出と魔王討伐に向かう準備を始めた。
アサギリ島は魔物がはびこる危険地帯なので、慎重に攻略しないといけない。
「いっぱい作ってきたよ!」
エアとローズが大量の菓子を運んでくる。
身体強化の飴玉各種、持続回復のチョコレート、完全回復効果を持つ世界樹の花の砂糖漬けなど。
見ただけだとピクニックでも行くの? という品々だけど、ポーションよりも優秀な支援アイテムだ。
ついでにお弁当と非常食代わりのバナナケーキもくれた。
現地に魔物がいるので肉は確保出来そうだけど、スイーツなんか無いだろうからありがたいね。
「これは状態異常の予防に使ってね」
そう言って渡されたのは、毒や眠りや麻痺などの状態異常を無効化するクッキー。
アズと接触していれば状態異常は回避されるけど、ずっとくっついてるわけにもいかないからね。
貰ったお菓子と薬は討伐隊の主要メンバーで分割して、それぞれの異空間倉庫に保管した。
「こっちは気絶とか睡眠の状態異常の解除に使って」
ソナの状態を聞いたエアは、意識が無い者にも使える液状タイプの薬も作ってくれた。
「これって、完全回復薬みたいに飲ませるの?」
「もちろんそうだよ。ソナちゃんに飲ませてね、エカ」
「ワ、ワカリマシタ」
「……って、なんで片言なの?」
使い方を聞いたエカが、ちょっと照れていたけど。
ソナを助ける為なら口移しでも何でも頑張れる筈。
「アズにも1本渡しておくね。ルルちゃんを気絶させて飲ませたら正気に戻ると思う」
「ありがとう」
対照的にアズは照れた様子は無く、笑顔で答える。
彼なら仲間を助ける為なら1発殴って気絶させる事も、口移しで薬を飲ませる事も躊躇しないだろうね。
問題のルルは、ソナを牢に入れた後は全く姿を見せていない。
もしかしたら憑依が解けて、どこかに監禁されているのかもしれない。
「では出発!」
討伐隊を指揮するのはロコ。
彼女は今回初めて召喚獣を出していて、月光鳥という白いフクロウに似た鳥に乗っている。
詳しい年齢は教えてくれないけど、少なくとも500歳は軽く超えているロコは、過去にも大規模討伐に参加した経験があるそうだよ。
彼女たちの隣を飛ぶのは不死鳥のキイと主人のカイ。
指揮官は爆裂使いの次に魔族に狙われやすいから、蘇生できるコンビが護衛についていた。
「エカは私たちが護るからね」
って微笑むローズとエアは、エカの護衛役。
ローズの防壁とエアの完全回復、うっかり死んだらボクの力で蘇生出来るよ。
先頭を飛ぶのは福音鳥のベノワと主人のアズ。
ユニークスキルの完全回避があるから、真っ先に敵陣へ突っ込んで殲滅する役目を担う。
討伐隊は魔王を倒す爆裂魔法を持つエカ、雑魚殲滅を担うアズとロコとカイ、隠密スキルでソナの救出を担うコッコとケコ姉妹、完全防壁の魔法と愛歌鳥の歌声を使うローズ、完全回復の魔法と聖歌鳥の歌声を使うエアの他、各国から選出されたS級冒険者たちが魔物の殲滅を引き受ける予定だ。
召喚獣を持つ者たちはそれに乗り、持たない者たちは各国の王家が提供する飛行用魔道具【ドナベ】に乗ってアサギリ島を目指した。