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第87話:完全回避が及ぶもの

3つ目の魔王の心臓は、雪と氷に閉ざされた国アマギにあった。

コッコが事前調査をして場所を突き止め、アズとロコが雑魚を一掃し、心臓がある場所に着いたらアズの魔道具に呼ばれたエカが転送されて爆裂魔法を使う。


爆破消滅(エクスプロジオン)!」


現れた分身はアズによってあっさり片付けられ、エカの爆裂魔法が黒水晶を粉砕した。


「次、探してくるね」


魔王の心臓はあと3つ、コッコはすぐ次の探索へ向かう。

いつ睡眠や食事をとってるのか心配になるところだけど、隠密科の生徒は異空間に身をひそめる特殊スキルがあるそうで、休憩はそこでとってるらしい。


「俺もアズと一緒に魔族殲滅出来たらいいのに」

「エカがいたら魔族みんな俺を無視してそっちへ行っちゃうよ」

「猫人に変身しとけばバレないんじゃないか?」

「魔法使ったら即バレるよ。魔力が猫人レベルじゃないし」


前線に出たいエカの言葉は、アズの苦笑で返された。

膨れっ面のエカの頭を撫でるアズが、双子の弟というより年上のお兄さんぽく感じるのはなんでだろう?

見た目の年齢変化が遅い世界樹の民だから子供の姿のままだけど、アズは時間の流れが違う修行空間で、どれほどの時を過ごしたんだろうか。

そんなアズに宥められて、エカは渋々アサケ王城へ帰った。


ボクとベノワは念話を繋いだままにして、何かあればすぐ対応出来るように備えてる。

瞬時に移動出来る魔道具を持っていても、起きた事に気付かなかったら何も出来ないからね。



「やっと半分片付いたってところね」

「クゥン」


ロコに相槌を打つように、ルルがアズの懐から顔を出して鳴いた。

世界樹の使徒としてアマギ王家から最大限のもてなしを受けるアズとロコは、コッコが魔王の心臓を見つけるまでアマギ王城の離宮を提供されている。


「ルルはいいわね、世界一安全な場所を確保出来て」

「ワンッ」


なんだか、ロコとルルで会話が成立してるような?

ルルはアズのペットという扱いで、仔犬姿を維持してる。

異世界人の創作の産物と言われるケモミミ姿になってしまうと、説明が面倒だからね。


「ねぇアズ、貴方の完全回避の有効範囲ってどうなってるの?」


ロコはアズにも話を振った。


「着てる服や手に触れてるもので、俺が敵と認識していないものなら効果が及ぶと思います」

「ふぅん」


アズは少し考えて答える。

魔王や魔族など敵対者には無効らしい。

敵対しているものにまで効果が及んだら倒せなくなるものね。

その答えを聞いて何か考える様子のロコ。


「ちょっと試してみていい?」


そう言うと、ロコはお茶のおかわりを淹れてくれている侍女に頼んで、シーツを1枚持って来てもらった。

受け取ったシーツを庭園の植え込みに被せると、ロコは手招きでアズを呼ぶ。

アズが近くへ行くと、ロコはシーツの端を手渡した。


「これ持っててね」

「はい」


アズが素直に従い、シーツの端を持ったまま立っていると、ロコはシーツの上にお茶の入ったカップを投げる。

見ていた侍女がギョッとするが、アズは動じない。


投げられたカップのお茶は空中に放たれるけど、シーツにかかる前に落下が止まり、反転してカップに戻ってゆく。

お茶が戻ったカップもシーツを避けるように反転して、ロコの手に戻っていった。


「ふぅん、こうなるのね」


興味深そうにカップを見つめるロコ。

侍女は理解しきれない現象に呆然としていた。


「このシーツ、しばらく借りてもいいかしら?」

「は、はい。使徒様になら陛下は何枚でも許可される筈です」


ロコに微笑みかけられて、侍女は困惑しつつも答える。


「ありがとう。アズ、これは貴方の異空間倉庫(ストレージ)で保管しておきなさい」

「はい」


ロコにシーツを渡されたアズと、ベノワとボクは、なんとなく意図が分かった。


端を持つだけで完全回避の効果が及ぶ、大きな1枚布。

それはいざという時、仲間を護る防壁代わりになるだろうね。

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