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第76話:転生した魔族

王様とアズとのやりとりを聞いていたルルは、検査用の魔道具に乗せられても大人しくしている。

魔道具がルルの身体の情報を読み取り始めた時も、オスワリしてじっとしていた。


「いい子だニャ」


王様が優しく微笑みかける。

その手元にあるパネルに、読み取られた情報が表示された。


───変異した雪狼。

黒い果実が生み出した者の生まれ変わり。

元は勇者と戦う為に作られた魔族。

世界樹の民との戦いに敗れて死亡、彷徨う魂が雪狼に宿り、世代を経て誕生した。

転生した際に、前世の記憶は大半が失われている。


前世で世界樹の民の血を浴びた影響で、人化する能力を得た。

能力を解放すると、世界樹の民に似た姿に変わる───


「キュウン」


ルルは文字が読めるのか、パネルを見て耳を伏せて項垂れる。

王様、アズ、エカ、ソナも、表示された内容を見てしばし沈黙した。


「もう抱っこしてあげていいニャン」


王様が言うと、アズがすぐにルルを抱き上げる。

その動作に躊躇いは無い。

ルルは嬉しそうにフサフサシッポを揺らして、アズの胸に頭を寄せた。


「アズは、この情報を見てもルルを護りたい気持ちは変わらないかニャ?」

「変わりません」


王様に問われて、アズは即答する。

その腕の中で、ルルがパッと顔を上げてアズを見つめた。


「ルルは、アズが何者であっても一緒にいたいかニャ?」

「ワンッ」


続いて問われて、ルルも即答した。


「ではアズ、君の正体をルルに明かすニャン」

「はい」

「クゥ?」


王様の指示で、アズはこれまで里以外では解いた事が無い猫人変身を解除した。

全身を覆っていた猫毛は消え、顔立ちも猫からニンゲンに似たものに変わる。

白い肌に青い髪と瞳の少年、着ている道着だけはそのままに。

見慣れぬアズの姿に、ルルが首を傾げた。


「あいつが捕まる前に言いかけていたのは、俺の正体だよ」


ルルを優しく撫でながら、アズが告げる。


「これが俺の本当の姿。世界樹の民だよ」

「ク~ン」


正体を告げられて困惑したのか、ルルは小さな声を漏らした。

記憶は無いから世界樹の民への敵意は無いらしいけど、前世で敵だった種族と知れば多少は戸惑うよね。


「俺はルルが何であっても、可愛い小さな宝物だって思ってるよ」


アズは微笑んで、ルルの額にそっと口付けた。

それは家族の愛情表現だけど、雪狼として育ったルルは知らない。

でもなんとなく、好意は感じ取れたみたいだよ。


「……ア……ズ……」


それは言葉と言うより、声を漏らしただけに近いけど。

ルルは初めて、アズの名を読んだ。


黒い仔犬も姿が変わり始める。

飼育部屋で見た、観察用カメラの映像を逆回しにするような変化だ。

小さな仔犬の身体が、アズよりやや小柄な人型に変わった。

白い肌に肩までの長さの漆黒の髪、可愛らしい顔立ちの子供が、アズの腕の中にいる。


「……タカラモノ……」


人型になったルルはアズの真似をしたかったみたいだけど……


「?!」


……そのキスは恋人がやるやつだ。


アズは思考がストップしちゃって、ルルが唇を離した後もしばらく固まってたよ。


「ふむ、想定内ニャン」

「……俺も前にあったような……」

「うん、あったね」


王様は冷静、エカ苦笑、ソナは微笑んでそれを眺めていた。

ルルはニコッと笑って、アズの胸に頬を寄せて甘えてる。


「ルル……」


やっと思考が戻ったアズが言う。


「……とりあえず、服を着てくれる?」

「?」


キョトンとするルル。


服を着てる猫人から変身したアズと違って、仔犬から変身したルルは服を着てないからね。


「これ着せてあげて」

「ありがとう」


ソナが異空間倉庫(ストレージ)から白いワンピースを出して、アズに渡す。

受け取ったアズがルルを床に降ろして着せて、ようやく全裸じゃなくなった。


「それ、わたしはもう着ないから、ルルにあげる」

「……アリガト……」


ソナが微笑むと、ルルも微笑んで片言でお礼を言った。

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